L2のデザインパターン
Bitcoinコントリビュータとしてビットコイン開発を推進してきたうちの1人であるPeter Todd氏による現状のL2概要についての記事が素晴らしかったので、簡単に紹介します。 https://petertodd.org/2024/covenant-dependent-layer-2-review --- L2のデザインパターンには大きく分けて2種類ある
Web3はなぜ日本で普及しないか
Web3にはまだキラーアプリがないから起業家が創ればいいとか、技術をもっと発展させてコストを安くすればいいとか、単に老人が技術についていけていないだけだからそのうち普及する、とかいうのが定番の答えだろう。 しかし私はそうではないと思う。単純にWeb3はあまりにEvilすぎる。それは構造的性質でありどんなキラーアプリが出てこようが現代の日本で普及することはない。そんな中でどれだけ投資機会に飢えているJTCが火中の栗を拾いに乗り込んできても、そのたびに大事故が起きて一部の人間だけが利確して逃げ切り、何も生み出さないだろう。 こういうと、Web3界隈は「そもそもWebは1.0の時代からEvilであったし、今でもEvilだし、資本主義そのものもEvilであるし、人間もEvilだけど、クリプトを使えばコードレベルでEvilさを軽減することができるんだ」というお決まりの議論を持ち出してくる。 しかし、どう考えてもそれは観測事実に反する。明らかに、Web3は既存のどの経済システムよりもEvilである。収奪的で、寡占的で、非民主的で、不便で、知識のない人間や不注意な人間は無限のリスクを負い、コミュニティへの貢献はアテンションを稼いで自己利益に変換するためにしか行われてない。 これはキラーアプリがないということを意味しない。むしろ本質的に非中央集権制が必要な、興味深いアプリは出てきている。そもそも最初のアプリであるBTCは国家にも実物にも依存しないStore of Valueという確かな価値を提供しているし、Polymarketの情報は原理的に党派に依存しえない勝率予測器としておおいに参照されている。 だがそれらの価値は、Evilさと表裏一体だ。BTCは犯罪組織の不正送金や蓄財に使われているが、これはまさに国家の管理から逃れる最大のメリットの一つだ。Polymarketは未登録かつ未規制のバイナリオプション業者として米国を追われながら、明らかに米国内から違法に接続された売買者から情報を得ている。だからこそ歪みも党派性もない賭けの結果として未来予測を織り込むことができるし、閲覧者はそう信じることができる。 もしこれらが、一部のプロジェクトのように、中央集権組織の規制を受け入れたり、それ等の管理下に入ると、本質的な価値はおおいに棄損される。それらは単に中央集権組織が、Web3の支配におびえてそれらを完全に飼いならそうという不毛な努力をしているに過ぎない。だが飼いならされたクリプトは単なる不便なゴミで、ポンジにしか使えない。Evilさこそがブロックチェーンの価値の本質なのだ。 日本でまだ技術もコンテンツも資本も潤沢にある数少ない組織のソニーがつい
Greenlightをセルフホストしてリモート署名をする⚡
GreenlightはBlockstream社が開発しているLNノードとその秘密鍵を分離して、リモート署名を可能にするサービスです。言い換えると、秘密鍵は自己管理して、LNノードをマネージドサービスとして利用することができます。LNノードと秘密鍵を分離することのメリットは以下が上げられます。 ノードの保守管理が不要となる 秘密鍵を自己管理できる(ハッキングによる資金流出リスクを低減) ウォレット開発コストが低減する Lappsの連携が容易になる 既存のモバイル用LNウォレットはLNノード自体が搭載されているものや、LDKのようなライブラリを組み合わせてLNノードをモバイル向けに実装するものが主流ですが、これはウォレットのパフォーマンスが低下したり、開発コストが高くなります。これはペイメントチャネル特有の状態管理やオニオンルーティングの経路選択など様々な処理をしなければならないからです。一方、オンチェーン専用のビットコインウォレットやメタマスク等はこの状態管理は不要で、主に送金時の署名をするだけでよいので、LNウォレットと比べると開発コストはそこまで高くありません。 Greenlightでは、ノード(ペイメントチャネルの状態管理)と秘密鍵(署名)を分離することで、開発者は署名に関する箇所だけを実装すればよく、LNノード自体を気にする必要がありません。また、ユーザーとしても秘密鍵のみ管理すればよく、LNノードの保守管理は不要になります。 基本的に秘密鍵さえ管理していれば、あとはマネージドサービスを利用するだけで、LNノードでの送受信ができますが、今回はGreenlightをマネージドからセルフホストする方法について試したことを以下に記載します。 --- 1.セットアップ Greenlightのレポジトリからソースコードをクローンして、ビルドします。ビルドにはDockerが必要です。詳細はこちらのチュートリアルを参照ください。 $ git clone git@github.com:Blockstream/greenlight.git gl-testing-tutorial $ cd gl-testing-tutorial $ make docker-image $ make build-self 一度、チュートリアルのサ
なぜCLNの送金は不安定なのか
LNDの経路探索(pathfinding)の肝はMission Controlである。これによりLNDの送金は比較的安定しており、個人的にも満足している。Mission Controlには主に2つの探索手法がある。 Apriori estimator:これは過去の送金データを元に成功確率の高い経路を探索する。未試行なホップの成功率を60%として、これをアプリオリな値としている Bimodal estimator:大半のチャネルは流量性が偏っているという前提で、成功率はチャネルサイズに比例(大きなチャネルほど成功率が高い)する 一方、CLNの送金は不安定であり、送金時間も比較的長いという感覚がある。なぜCLNの送金は不安定なのか。CLNはチャネルサイズを元に経路を探索する(LNDでいうBimodal estimator)。それに加えて、経路のランダム化や金額を小さく分割して送金するMPPなどを活用して、プライバシー重視な経路探索をする。 CLNがLNDと比べて送金が不安定な要因は、過去の送金データを保存していなことである。過去に送金が失敗した経路を区別することができないため、再度同じ経路で送金をしてしまったり、成功した経路も記録されていないため、同じ経路で送金しようとすらしない。 このため、CLNはLNDなどと比べて送金が不安定であったり、送金時間がかかったりする。しかし、現在、CLNはChannel Hintsを使った過去データからの経路探索の実装が進んでいるので、次期リリースが待ち遠しい。 https://github.com/ElementsProject/lightning/pull/7487