なぜ「マスタリング・ビットコイン」の表紙絵はアリなのか?
技術的な側面からビットコインに興味を持った方には、教科書的書籍と言えるアンドレアス・M・アントノプロス著「マスタリング・ビットコイン」
IT関連の技術書の世界的権威、オライリー社から出ていますが、オライリー社の本と言えば、表紙には必ず本の内容となにがしかの関連がある特徴を有した動物の絵が描かれていることでも有名です。
初期の1冊であるsedとawkの本に描かれたスレンダー・ロリスのイラスト。出典:O’Reilly
それではなぜ「マスタリング・ビットコイン」の表紙絵は、動物ではなくアリ🐜なのでしょうか?
ビットコインのマスコット的動物と言えば、ハニーバッジャーがコミュニティでは有名です。世界一怖いもの知らずの動物と呼ばれ、コブラだろうがジャッカルだろうがライオンだろうが、お腹が空いてると相手が何であれおかまいなしに、食っちまおうとまっすぐに突っ込んでいくその“don't give a shit"(知るかボケ!)精神、毒ヘビの猛毒にやられてもすぐに回復し活動を再開するその生命力などが、ビットコインの本質をよく表しているとしてビットコインのシンボル的動物としてビットコイン・コミュニティ内でも大人気。認知度も高く第一候補と言えなくもありません。
それなのに、よりによって動物ですらないなぜにアリ🐜?
その疑問に、アンドレアスさん本人が答えているインタビューがありますのでご紹介します。
なぜ表紙に虫がいるのか?
多くの人々は、なぜ Mastering Bitcoin の表紙にアリがいるのか理解していません。一部の人々はハニーバッジャーを選ぶべきだったと言いました。それは面白い内輪ネタになるでしょうが、ほとんどの人はその意図することがわからないでしょう。また、その目的には少し生意気すぎる動物とも言えます。
代わりに、私は意図的に葉切りアリを選びました。なぜなら、葉切りアリは地球上で最大の社会構造とコミュニティを作り出す生き物であり、それは人間に次いで2番目の規模です。アリは社会性のある生物ですが、彼らの面白いところは、スーパーオーガニズムを形成する点です。アリのコロニーはスーパーオーガニズムです。葉切りアリは、個々の部分の単なる合計を大幅に超えた振る舞いの出現を示す、スーパーオーガニズムの完璧な例です。個々の部分、小さな動物、小さな昆虫、アリにはあまり知能がありません。彼らの行動は小さな回路でシミュレートできます。彼らは数千のニューロンしか持っていません。彼らはフェロモンによって駆動される非常に単純な行動しか示しません。しかし、数十万匹のアリをコロニーに集めると、彼らは知的なスーパーオーガニズムになります。
葉切りアリが葉を切り刻むのは、それを食べるためではありません。実際には葉を噛み砕いて酵素で発酵させ、ペーストを作ります。ビールやウイスキーの原料として使われるようなペーストです。それをアブに与えます。そして、アブから出る蜜を幼虫に与えます。葉切りアリは他の昆虫種を家畜化し、牛のように飼育します。これは驚くべき働きで、人間以外で他の種を家畜化して飼育する種は、この葉切りアリでしか知られていないからです。このような行動をDNAに持つアリは一匹もいないのです。その行動は、ネットワークの各メンバーが単純なルールに従って作り出したネットワークから出現するのです。しかも、そこから生み出される行動は非常に複雑なものです。
私にとっては、これこそがビットコインを表現しています。アリの話ばかりで皆さんを退屈させていないと良いのですが。しかし、私にとってビットコインが素晴らしいのは、その本質が超スマートなシステムでも、超スマートなネットワークでもないからなのです。その本質は、葉切りアリのコロニーのようです。ビットコインネットワークの各ノードが従う非常に単純な数学的ルールから、この複雑性と超知能ネットワークが生み出され、それが信じられないほどのことを成し遂げています。だからこそ、表紙に葉切りアリがいるのです。
この本は、オープンソースでの入手が可能です。
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Source: The Salon Talks