「Resistance Money」感想⓪

「Resistance Money」感想⓪

去年の6月に日本でも発売されていた「Resistance Money -A Philosophical Case for Bitcoin-」、仕事に育児と忙殺され読了後半年ほどがかかってしまいましたが、ビットコイン初心者なりに内容の感想を今後毎月ごと位(ペースは変わるかもです)に感想記事を書いていこうと思います。

今回は全体の概要と、なぜ本書をなぜ読んだのか、自分の備忘録も兼ねて記載しようと思います。

目次

  1. どんな本か?
  2. なぜ本書を読もうと思ったのか?
  3. 全体のざっくりとした構成と感想

1. どんな本か?

ビットコインについて世の中で多くの賛否意見があるのは、当記事を読む方ならよくご存じだと思います。本書は「ビットコインのある世界とない世界どちらが良いか?」をテーマに、極力中立的立場に立った上で、このテーマを巡るビットコインの特徴や争点を議論した300頁弱の英文の書籍です。

本書はAndrew M. Baily、Bradley Rettler、Craig Warmkeの共著で、それぞれシンガポールと米国の大学准教授です。なお邦訳はまだ無いので全文英語です。ただ使われる英語は極めて平易で、高校や学部1年生のテキストレベルかと言ってよいかと思います。(書籍内では言及されていないですが、大学のテキストとしての使用も念頭に置いて本書を書いたのかなぁとか思ったほど)

2. なぜ本書を読もうと思ったのか?

①これまで読んできた本がどれも微妙だったから

ビットコイン、もしくは仮想通貨についてちょっと気になってきた人が最初に躓くのが、おそらくブロックチェーン技術領域の内容の難しさだと思います。

私も仮想通貨をかじるにあたり、数冊程度ですが本は読んできてはいます。これまで触ってきた本の中には「非技術者にもおすすめする初心者向けの本」というAmazonレビューの謳い文句にもかかわらず中身は「スクリプト」だの「API」だの「デプロイ」だのと、ノンプログラマーには意味不明な単語が注釈無しで私に襲いかかってきました。

内容は大変ためになりましたが、意味に引っかかる度にgoogle検索、、と読み進めるのに英文図書以上の苦労を要しました。良書とされる書籍の邦訳版も訳が微妙で内容が全然頭に入ってこなかったりします。もっと合理的にビットコインの概要を掴む道があったと今になって振り返ると思います。

②本の主題がまさに非技術論的でビットコイン初心者向きな内容だと思ったから

「ビットコインとは何か?」という問いに対して、私がこれまで見てきた書籍では基本的には技術的観点から定義付けたものが多かったように思います。しかし、初心者がまず知りたいのは、ビットコインが「トランザクションをブロックチェーン上に記録してそれをP2PネットワークにおけるPoWによって維持するシステムで~」ということではおそらくないんじゃないかなと思います。特に非技術者は。

むしろ初心者が(少なくとも私が)知りたいのは、ビットコインがどんな社会的な意義を持って生まれてきて、ビットコインで今までできなかったどんなことができるようになるのか、ではないでしょうか?どんな技術で成り立っているのかももちろん知りたいですが、あくまで私が過去読んできたような技術の詳細は、ビットコインの貨幣論的な性質やその社会的な存在意義をまず知った後でもよかったと今振り返ると私としては感じます。

一方仮想通貨の存在意義について言及した書籍も過去読んだこともありましたが、正直ググった方がましなくらい内容も薄く、仮想通貨のもたらす未来に妄信的で正直うさん臭いなと感じてしまう内容でした。。

今回手に取った当書籍はそうではなく、概念や理念という切り口からビットコインに対するとっかかりを提供している点で、特に「ビットコインって何だろう」と思っている人、特にでビットコイン初心者である自分向きな内容だと思ったからです。読みやすいとはいえ発行から日が浅いため手に入るのが英文のみなのが惜しく、邦訳化が待たれます。

 

    ③Bitcoin Tokyo 2024に出(れ)なかった一方でビットコインについて何か学びたいと思ったから

    9月に開催されていましたBitcoin Tokyo 2024、めちゃ面白そうだなぁと思いつつも、育休中につき半日はともかく終日2日開けるのは不可能。でも半日でチケット代税込3万円弱(早割で2万円弱)は絶対値として私の経済的に許容不可。そして何より、自分はまだまだ本当に何も知らない初心者の状態で3万円弱の参加費分を吸収しきれないなと思い、カンファレンスへの参加は2024年は断念しました。

    (本旨から逸れますが、業界人か、時間と金銭の相当をビットコインにコミットしているビットコイナーでないと、約3万円というチケット代は絶対値としてどうしても高額だなあと感じてしまいました)

    一方で、日本で初めてのビットコインにフォーカスしたイベントをただXなどで傍観しているだけでは寂しく、何か自分もビットコインについて収穫を得たいと思っていたところ、カンファレンスの公式Xアカウントが当書籍を紹介しており、概要を読んだところ②だなぁと感じたため、購読するに至りました。

    3. 全体のざっくりとした構成と感想

    ①大まかな構成

    全部で12章構成で、本書のテーマである「ビットコインのある世界とない世界どちらが良いか」という問いに対して、1~4章は前置き、5~11章でこの問いに関連するテーマごとの分析、最後の12章でまとめが述べられています。

    1~4章では前置きとして、ビットコインに至るまでの歴史(1章)、ビットコインの技術的な仕組み(2章)、貨幣論(3章)、そして5章以降の分析に入る前提条件としての分析アプローチ(4章)について述べています。

    5~11章では、このテーマを検討するために、発行・運用の仕組み(5章)、金融プライバシー(6章)、金融検閲(7章)、金融包摂(8章)、エネルギー消費(9,10章)、その他のビットコインへの反論に対する反論(11章)に議題を分割して、複数の学問分野から本書のテーマへのアプローチを試みています。

    まとめて1記事で感想化しようと思いましたが、内容や思うところが多すぎて1記事ではとても収まらなくなったため、複数記事に分けて(時間ができれば)今後感想を投稿していきます。

    ②全体を通しての感想

    2.で触れた期待に見合う良書でした。特に第1章や3章でふれられている、どのような歴史や思想を背景に生まれてきたのか、現金やデジタルキャッシュとどのように異なるのか、の解説はよく整理されて説明されており、この章を読めただけでもこの本を買うに値したなと思いました。

    ビットコインというのは本質的に支配や検閲に対する解放と抵抗のツールであり、本書のタイトルがなぜResistance Moneyという英題であるか、社会運動でよく用いられる握り拳のセンセーショナルなロゴをなぜ表紙選んだのかも、本書を読めば理解できると思います。人に「ビットコインって何?」と聞かれた時の答え方も、本書を読む前後で変わってくるのではないでしょうか?今の私のビットコインに対する見方を形作った本となりましたし、特にビットコインをこれから初めて学びたいと思う人に強くおすすめできる本だと思います。

    なお本書のテーマである、「ビットコインのある世界と無い世界のどちらかが良いか」、については結論としてはご想像の通り基本的にはある世界の方が良いのですが、各トピックを検討するにあたって、いわゆる無知のヴェール(本書ではbehind the veilと表現。詳細は4章参照)の下で、常に中立的な立場から議論を進めようと試みていたのも好印象でした。三者ともビットコインないし仮想通貨の研究者ですが、決してビットコインに対して無批判に礼賛的ではなく、マネーロンダリングやエネルギーといった問題に対しても真っ向から議論検討している話の進め方に説得力を感じました。

    また副題に「Philosophical Case」とあり、英文でしかも哲学かぁと最初は少し身構えましたが、実際には内容は平易で分かりやすい英文で、難しい用語や観念もほぼありませんでした。用語が出てきたとしてもネイティブの中学生でもわかるようなレベルでの分かりやすい説明つきでした。分かりやすい一方で、前の章でも説明したような内容を繰り返し説明していたので、人によっては少しくどいと感じることもあるかもしれません。

    そして些末ですが、ビットコインに関連する社会問題について本書で情報や統計に触れることができ、一般教養的な内容もわずかながら知ることができたので読んでいてためになりました。

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