🐇21のレッスン - ビットコイン・ラビットホールに落ちて学んだコト🕳️Lesson 17
🐇Lesson 17🕳️
時間を伝えるには仕事がいる
“「どうしよう! どうしよう! ちこくしちゃうぞ!」”
引用元:不思議の国のアリス
ビットコインが採掘されるのは、何千ものコンピュータが非常に複雑な数学的な問題を解くためだとよく言われている。ある解かれるべき問題があり、正しい解を計算できたなら、ビットコインを“生産”できる。ビットコイン・マイニングへのこの単純化された見方は、人に伝えやすいかもしれないが、少々的外れだ。ビットコインは生産も生成もされなければ、その試練のすべては実際には特定の数学的問題を解くことではない。また、その数学もとりわけ複雑なわけでもない。複雑なのは、分散システムにおいて時間を伝えることである。
ホワイト・ペーパーで概説されているように、プルーフ・オブ・ワークシステム(マイニング)は、分散型タイムスタンプ・サーバーを実装する方法である。
ビットコインの仕組みを最初に学んだ時、私もまたプルーフ・オブ・ワークは非効率で無駄だと思った。しばらくして、私はビットコインのエネルギー消費に関する考えを変え始めた。プルーフ・オブ・ワークは、AB10年(After Bitcoin)の今なお広く誤解されているようだ。
プルーフ・オブ・ワークで解かれる問題はでたらめなものなので、多くの人々がこれを役に立たない作業だと信じているようだ。もし焦点が純粋に計算だけなら、これは理解できる結論だ。だが、ビットコインは計算処理に関するものではない。ビットコインは、物事の順序についての独立した合意に関するものだ。
プルーフ・オブ・ワークは、誰しもが何が起こったか、そしてどのような順序でそれが起こったのかを検証できるシステムである。この個別の検証が、コンセンサス、つまりは誰が何を保有しているかの、複数の当事者による独立した合意に繋がるものである。
徹底的に分散化された環境では、絶対時間のような贅沢なものはない。どんな時計でも信頼されるサード・パーティーを導入することになるし、それはシステム上の中心点となり依存され、攻撃されるポイントとなってしまう。グリーシャ・トゥルビツコイが指摘したように“時間を計ることが根本的な問題”なのである。そして、サトシはプルーフ・オブ・ワーク・ブロックチェーンを利用した分散クロックを実装することで、この問題を見事に解決した。最も蓄積されたワークのチェーンが、真実の源であることに、誰もが事前に合意している。それは定義通り実際に起こったことだ。この合意は今ではナカモト・コンセンサスとして知られている。
“ネットワークは、監視される一連のイベントの証拠として機能する継続的なチェーンに、トランザクションをハッシュすることで、タイムスタンプを実行する。”
サトシ・ナカモト
時間を知る一貫した方法がなくては、前後を知るための一貫した方法はない。信頼できる順序付けは不可能となる。上で述べたように、ナカモト・コンセンサスはビットコインの一貫して時間を知る方法である。システムのインセンティブ構造は、競合する参加者達の貪欲さと自己利益の両方を利用することにより、確率的で分散的な時計を作り出す。イベントの順序が最終的には明白であり、誰でも検証することができるので、この時計が不正確であるという事実は関係がない。
プルーフ・オブ・ワークのおかげで、ワークとワークの検証が徹底的に分散化された。誰でも好きなように参加したり離れることができ、そしてあらゆる人がいつでもすべてを検証できる。それだけでなく、誰もが検証のために他の誰かに頼ることなく、システムの状態を個別に検証できるのである。
プルーフ・オブ・ワークの理解には時間がかかる。ルールは単純だが、しばしば直観に反するし、非常に複雑な現象へと繋がる。私にとって、マイニングについての観点を変えたことが助けとなった。役には立たないが有用。計算ではなく検証。ブロックではなく時間。
ビットコインは私に、時間を伝えるのはとりわけそれが分散されている場合、一筋縄ではいかないことを教えてくれた。