【抄訳】アンドレアス・M・アントノプロス講演動画 “ビットコインは銀行を破壊するのか?”
Bitcoinの躍進が語られる際に、たびたび議題にされるトピックです。
今回もアンドレアス・M・アントノプロスさんの講演動画から、彼の考えを聞いてみましょう。
アントノプロスさんは、まず銀行には2種類あるとしています。
“そんなにアカンくない”銀行
小切手や貯蓄、支払い処理などに対応する主に一般顧客相手の地方銀行
”アカン”銀行
一般顧客を持たず、主に投資や巨大な富の集中、株式市場、そして彼らが圧倒的なアドバンテージを有する国際市場でのマネーゲームに集中する銀行
彼らが何をやってるかって?彼らは一般顧客やローンになどには資金を提供しない。なぜって儲けにならないからね。一般人のためのサービス拡大など知ったこっちゃない。彼らは石油会社に資金提供し、熱帯雨林を破壊する。戦争屋どもに金を出して独裁体制を生み出す。そして他の大企業に金を流してアドバンテージを得る。
そして前者の普通の人々相手に開発途上国などでサービスを拡大しようとしている銀行にとっては、ビットコインは何の脅威にもならず、むしろ自分たちのサービスを拡大するための好機になると考えています。
ビットコインが問題になるのは後者の“あかん”方の銀行。そしてアントノプロスさんは彼らがまさに今、経験しこれから経ていく段階を、アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した、人間が自身の死を受容する際の5段階モデルになぞらえて
嘆きの5段階 (The five stages of grief)
と呼んでいます。
第1段階「否認」
ビットコイン?へっ。ちゃちなハッカーどもで勝手に遊んでろ。(しかし彼らは消え去らなかった。)
第2段階「怒り」
ビットコインだ?この犯罪者、ロリコン、テロリストどもめ。もし一般の人々に自身のお金をコントロールさせたら、世界は終わりだ!
第3段階「取引」
やぁ、我々はビットコインは嫌いだけども、ブロックチェーンってのは別だよ。キミらが作ったのはオープンで分散化されたボーダレスのピアツーピアで誰でもアクセス可能な開かれたイノベーションか、そうか、じゃあ我々はオープンじゃなくて分散型でもボーダレスでもなく、開かれたイノベーションでもなければ、誰でもアクセス可能ってわけじゃない、我々が完全にコントロールできるブロックチェーンを作るよ!
第4段階「抑鬱」
取引の後には、抑鬱がやってくる。これは経済的な抑鬱になるだろう。なぜなら世界の50%以上は、巨大銀行が呼ぶ所の“ブラック・マーケット”であり、40億人以上が(既存の金融マーケットからは)切り離されているからだ。では、どちらの経済に“ネットワーク中心の貨幣”を用いてサービスを提供したいだろうか。巨大な方?それとも、壊れてて腐敗してて死にゆく小さな方?それが、この「抑鬱」段階の最後の局面であり、願わくばこの後、第5段階「受容」に続くと良いのだが。
第5段階「受容」
いくつかの会社は、この“ネットワーク中心の貨幣”を利用するゲームをとてもうまくやっている。アクセスやボーダーを拡大し、国際的な取引を可能にし、人々をエンパワーメントしている、そんな彼らがこれからの大多数になっていく。既存の銀行システムは“恐竜”だ。彼らは70年代のシステムで運用され、その恐竜たちは大きな侮りと軽視を、彼らの足元を走り回る、小さな毛の生えた哺乳類に対して抱いている。彼らはこれらの取るに足らない小さな哺乳類をぺちゃんこに押し潰そうとするが、大空に彗星が現れ、いったん塵が落ち着いてみると、哺乳動物=ここにいる我々が勝利している。これが対立しているシステムに関しての話だ。でも、それは我々が誰かと対立しているのではなく、他の誰かが目にしたくない機会を創造しているからなのだ。広く行われている嘘の真実を、一気に明らかにするとき、その行いは革命となる。そして革命とは、あなたが語る言葉にではなく、あなたがその嘘に立ち向かう事実、そのものにある。ビットコインはそれを現在、世界規模で行っている。そしてその他多くのテクノロジーもそれと共に歩んでいる。私は対立を期待していない。私が期待するのはインスピレーションであり、我々がコミュニティとして作り出しているポジティブなエネルギーであり、銀行は実際の所、この会話においては、まったく無関係なのだ。
ふぅ。今回はさくっとまとめるつもりが、アンドレアスさんの言葉にアドレナリンを注入され、ハイテンションのまま結局ほとんど訳してしまいました。
精神科医の死にゆく人の受容プロセスの話や、絶滅した恐竜と小さな哺乳類のたとえが、何ともシニカルで面白いですね。講演前半の“インターネットを軽視した大きな電話会社が、あっと言う間にネットを利用した電話サービスに取って代わられていく話”も非常に具体的で示唆に富んでいて面白かったです。
2018年に行われた講演ですが、その後、世の中の有力者達がコロコロとビットコインに対する意見を変え、手のひら返しをしてくる様をあちらこちらで目にし、アンドレアスさんのこの予言、段階通りに進んで行く世界を眺めては、ますます彼への畏怖を強めながら、世界がビットコインを受容していくそのスピードの速さに少しばかりの危惧を抱いたりもしています。
世間からはその価格にばかり注目が集まりがちではありますが、冷静に背後にあるテクノロジーに目を向けてみると、チャートの狂騒とはまた別の世界が開けてくるかもしれません。
では、また別のアンドレアス講演でお会いしましょう。