【全訳】アンドレアス・M・アントノプロス動画“デジタルコミュニティをおかしなままにしておこう!”
前回のアンドレアス・M・アントノプロス講演動画“次なるビットコインは何か?”にたくさんの反響を頂き大変ありがとうございました。
アンドレアスさんの講演内容にビットコイナー、イーサリアンの垣根を超えて好評価を頂き、いちアンドレアスファンとして嬉しい限りです。
今回も大変長い文章ですが、アンドレアスさんがビットコインコミュニティを通してコミュニティ論、真のクリエイティヴィティが生まれる場について語る
Keepin Digital Communities Weird
“デジタルコミュニティをおかしなままにしておこう!”
の全訳を公開いたします。
この文章、元々は2年前に日本初のブロックチェーンSNS“ALIS”β版公開時に、これからのALISコミュニティの形成・発展を願いエールを込めて投稿したものでしたが、その後残念ながら、国の暗号通貨への規制強化、市場の低迷など外部的要因や運営や開発遅延への失望など様々な理由が相まって、そのユーザーのほとんどが今では離脱しており、現在のALISにはコミュニティと呼べるような活発な活動・文化を形成できずにおります。ただのいちユーザーながら改めて魅力的なコミュニティ形成の難しさを感じています。
※完全に蛇足ですが、今読み返すと結構泣けるので、編集後記に当時のあとがきを追記しています。
それはさておき今回のアンドレアスさんのお話は、クリプトコミュニティに限らず、広くクリエイターやあらゆるコミュニティに関わる人々にとっても、刺激的で学ぶことが多い内容に思いますのでぜひお時間がある時にでもお読みください。
それでは、どうぞ。
お招き頂きありがとうございます。とても光栄です。
ポーランドには初めて来ました。ヨーロッパ中、旅行したんですがどういうわけかポーランドには来たことがありませんでした。ワルシャワでの滞在をとても楽しんでいますし、とりわけこのイベントのために来れてとてもワクワクしています。このイベントを企画して私のワルシャワ滞在を実現して頂いた事、そしてご参加くださった皆さんに大変感謝します。
私のプレゼンテーションのタイトルは“プログラム可能なお金の未来”ですが、実はこれがタイトルではありません。全部のプレゼン用のタイトルをこれにしてるんです。なぜなら、プレゼンのだいたい2時間くらい前まで、これから話す事を決めていないからです。なので皆さんと同じくらい、私自身がちょうど今日これから話すことが判明してびっくりする事になるんです。
では、聴衆の皆さんから少し情報をもらう所から始めたいと思います。残念ながら(ポーランド語だったので)私の前にフィリップが話していた事が理解できなかったので。
ここにいらっしゃる方で、暗号通貨を保有している、もしくは人生のどこかで少なくとも1回は取引した事があるという方は何人いるでしょうか?
全員ですね(笑)わかりました。いいですね。私にとってやりやすいです。暗号通貨とは一体全体何なんだみたいな事は説明しなくて良いようです。飛ばして本題に入れます。
今日はコミュニティについて話したいと思います。
オンラインとオフラインその両方で、どのようにして面白くてエキサイティングなコミュニティを作るか。
私は人生でたくさん旅をしてきました。たくさんの異なった場所で暮らしてきました。
そして私はいつもある決まったタイプの界隈に惹きつけられている事に気づきました。たくさんのアーティストやミュージシャンがいる場所に住むのが好きなようなのです。風変わりな小さなコーヒーショップや、人々がライブ・パフォーマンスを行う何だか変なバーがある地域に暮らすのが好きなのです。そこではバンドやミュージシャンやアーティストに会えます。壁にグラフティ(落書き)がある場所に暮らすのも好きです。
たぶんそういった場所、少なくとも私が住んでいた場所は、そんなに安全ではありません。分かりますよね。少し危険ですらあります。
実際の所、しばしばその界隈では、私がこの地域で暮らす唯一の白人である事に気づくことも多かったです。もしくは、私だけが地元民ではないかです。
でも、こうした界隈は長続きしません。アーティストやミュージシャン、貧乏な学生たち、こうした地域に暮らしていた人々は、そういったエリアが大好きです。なぜって賃料が安いから。なぜって地域開発がまだ起こっていないから。なぜって、表現の機会があるからです。
おかしくて風変わりな事や、あまり安全でない環境その全てがあった事で、たくさんのちょっと変わっててクリエイティブな人たちがやって来たのです。
必然的に、そんな界隈に十分長い事暮らしていると、他の人達も気づきだします。そしてそこは“クール”な場所になり始めます。そしてその場所が“クール”になり始めると、そうする余裕のある人々が、その界隈めがけて引っ越し始めます。そしてますますリッチな人々がこうした界隈に引っ越しだすのです。
1年か2年後には、町の角にはスターバックスが登場します。風変わりで奇妙なミュージシャン達みんながいたバーは、ギャラリーやブティックに取って代わられます。以前よりちょっとだけもっと高所得者層向けの、もっと高価な衣服を売るんです。
そして賃料が値上がりし始めます。不動産価値が上がり始めます。ほどなくして自分たちが引っ越してきた理由だったアーティストやミュージシャン、面白い人たちはみんな、そこではもう家賃が払えなくって暮らせなくなります。そして引っ越していきます。そしてその界隈は最終的に、若いプロフェッショナル達でいっぱいに…スーツを着て、毎朝会社に出勤し、9時から5時まで働くんです。スターバックスコーヒーを片手にね。彼らはとっても忙しくて常に電話しています。
そしてそんな地域は今や、クソみたいなもんです。
あなたはまた引っ越して、また“クール”な場所を探すんです。このサイクルの繰り返し。
“Gentrification”(高級化)、アメリカではこの現象を表現するのにこの言葉を使います。
その界隈を面白くしていたあらゆる事は、そんなに長くはそこに住んでいなかった、全ての風変わりでおかしな人たちのおかげだったと分かったわけです。
そしてもし、あなたがクリエイティビティと表現活動でいっぱいの環境で暮らしたいとして、そうした環境に起こりうる最悪の事は、商品化、企業化、マーケティングです。
なぜなら、そうしたクールな何かがあったとして、そのクールで本物の何かを手に入れ、そしてそれをコカ・コーラやナイキのためのマーケティング・キャンペーンに変えてしまったのなら、それはもうクールではないからです。
その時まで彼らが“クール”だと思っていたものは、もはや“クール”ではありません。
それは真正さを台無しにします。金が注ぎ込まれ、真正さの全ては失われます。
私が初めてインターネットのデジタル・コミュニティに参加したのは1980年代の中頃でした。そうしたデジタル・コミュニティに参加するには、モデムを買わなければなりませんでした。そして掲示板システムにダイヤルしなければなりませんでした。この掲示板システムは、ベースメントに住んでる誰かのホビーとして運営されていました。150人くらいの参加者がいて、彼らはちょうど私と同じくらい全員おかしなやつらでした。
他の人々には理解されない、モデムを持ってるおかしな15歳。
オンラインでの会話はとても楽しかったです。
そして90年代の終わりに向かって、掲示板システムは人気になり始めました。大きな企業が、小規模の運営者を買収し始め、広告を打ち、会員費用を請求し始めました。そしてコンテンツに“磨き”をかけ始め、“改善”し出します。もうちょっとだけ、主流の人々のお口に合うようにしようとし始めます。
「言葉づかいに気を付けて。」「悪い言葉を使わないで。」「大人向けです。」「家族向けにしましょう。」
そもそも掲示板システムを面白くしていた、興味深くておかしな人々はみんな、会話ができる他の場所を探し始めます。なぜってもう彼らはそこで歓迎されていないから。いくつかのケースでは、金銭的に参加できる余裕がないからです。
私たちがそもそもその場へ参加した理由、クリエイティブな会話の全ては今や失われてしまったのです。
実際、その当時のこうした掲示板システムのおかしな事のひとつに、参加者は全員男ばっかりでした。その頃の、1985年のオンライン掲示板システムの参加者に女性はいなかったんです。でも、企業はこうした掲示板システムを、出会い系サイトにしようと努力しました。そのために、より多くの顧客を引き付けようと、男に女性のふりをさせたのです。
そこで見るのはハンドルネームが“ヘレン”という他の男と、男が会話してる状態です。掲示板システムへのより多くの会費を得るためにです。そうマーケティング!
面白いのは、その当時も何人かは女性参加者がいました。その女性たちは男性の名前を使っていました。その方がもっと快適だったし、変態にびくびくする事も少なくてすんだからです。そして企業は偽ヘレンをその偽男性名の人達に話しかけさせ、さらなる会費を支払わせようと必死で口説かせていたのです。
その時には、私はすでにUsenetに移動していました。Usenetとはグループ・ディスカッションの場で、その当時、1980年代の終わりにかけてインターネット中で使われていました。テキストベースのコミュニティで、インターネット上にいる世界中の誰とでもメッセージの交換ができました。当時、おそらく50万人くらいの人が使っていました。
Usenetはとても奇妙、ものすごーくおかしな所でした。実際、Usenetには“alt”(代替)グループと呼ばれる特別なコーナーがあり、そのオルタナ・グループ全てにはアクセスできませんでした。でもアクセスできた場所はとても特別な場所でした。
そこにはダンジョン&ドラゴンのファンの全員がおり、全てのコミック・ブックファン、全てのおかしなSFファン、そしてたくさんの性的なコンテンツ、変な趣味。一般的に言って、うまく他のグループにフィットしない人たちが“alt”グループにいたのです。
そして企業がやって来ました。
彼らはUsenetを購読サービスとして運用し始めます。一番最初に切り離したのが“alt”グループでした。
今やお金を払えば、クリーンバージョンのUsenetが手に入りますが、“alt”グループはもう手に入れる事はできません。なぜって、“alt”グループは当時、あまり礼儀正しくなかったからです。彼らはあまり協力的でもなかったし、あまりクリーンでもなかったからです。
なので彼らはUsenetをそうした変なモノ全部、奇妙なモノ全部と共に持ち去って、スーツで身なりを整えさせ、髪を切り、そうやってUsenetはつまらなくなったんです。面白い人たちは全員去っていきました。
そしてWebが始まります。Webによってクリエイティビティと表現の爆発が起こります。始めの頃、ウェブサイトは全部おかしなものでした。多すぎる配色、点滅するタグやフォント、見た目はひどいものでした。デザインのセンス何てありもしない。
でも、そこでの会話、そこで出会えるクリエイティビティや変わった人々は素晴らしいものがありました。
そして企業が参入してきます。彼らは全部を“磨き”あげ、“キレイ”にしていきます。
「このサイトでは悪い言葉は使わないでください!」
「これは承認制コンテンツです。」
そしてCompuServeとAOLがやって来て、あらゆる汚い言葉やおかしな人々から保護され、キュレートされた(※たくさんの情報源から収集、整理、要約して必要な情報を公開すること)環境を作り上げます。
Gentrification(高級化)は波のようにインターネット中に広まり、私たちのデジタルな領土は、あの界隈のように高級化されていきます。そして全てのGentrificationのサイクルの結果はみな同じです。
その場所に行って、そこを面白いものにしていた人々は、もはや歓迎されません。金銭的に参加する余裕もなく、発言する事も許されません。そして彼らは去っていきます。
そこに参加した理由の全ては、もうそこにはありません。
そうしたキュレートされた場所を後にした多くの人々は、Webの他の場所に行きました。そして自分のウェブサイトと独立したコミュニティを立ち上げ始めました。
そしてWeb 2.0が起こります。Web 2.0が起こった時、MySpaceやそしてFacebook、そしてその他のソーシャルメディアサイトが始まりました。彼らは非常に注意深くコンテンツをキュレーションしています。
ナチスに関するメッセージをFacebook上に投稿しても、しばらくの間はやり過ごせるでしょう。でも、おっぱい見せてくれたら神様が助けてくれるかも(※翻訳者注:何言うてるんやこのおっさん。)ちょっと待って!そんなのあり得ない。ここは家庭向けの環境です!悪い言葉を使わないで。注意深くキュレートされ、たくさんのマーケティング、存分な上品化。
そして面白い人々は全員去っていきます。
今や、もしあなたがまだFacebookアカウントを持っているなら、きっとそこでは、お孫さんの写真を楽しめますね!実際、子供たちはもうFacebookを使いたくありません。その理由は、今では彼らの親までそこにいるからです。そして子供たちも去っていきます。彼らはReeditや4chanに行きます。ここでもGentrification…
ビットコインはおかしくて変なものでした。そして私は、ビットコインがおかしくて変だった時がだいだい大好きだったんです。
でも何人かの人たちにとって、ビットコインは異様すぎました。おそらく難しすぎて理解できなかった。しかもビットコインでドラッグを買える小さな可能性があった。ただし、“良い”ドラッグではなくて。ファイザーの作った高額なドラッグではなくて、アデロール(ADHD治療合剤・市販薬)でもなくて、これはつまり覚醒剤なんですけど。フェンタニル(鎮痛剤・市販薬)でもなくて。まあこれはヘロインなんですけど。
処方された“良い”薬ではなくて、“悪い”薬です。マリワナみたいなね。(あら怖い)
人々がドラッグを買えてしまう。ビットコインは企業イメージにあまり好ましくない他の事もできてしまう。
では、どうやって貨幣をGentrification“高級化”したら良いでしょうか?
どうやっておかしなモノを取ってきて、スーツで正装させ、散髪させ、役員達にプレゼンさせれば良いでしょうか?
最初の何年か、私が会社に出向いてのプレゼンテーションを依頼された頃を思い出します。会社の人達は私にこう言いました。「我々の重役達にプレゼンを依頼したいのですが、彼らに話す際には“ビットコイン”とは言わずに、“ブロックチェーン”を使って話して頂けませんか?なぜって“ビットコイン”は何か変で気味が悪いんですが、“ブロックチェーン”には未来があるからです。」
私は言いました。「いやです。“ブロックチェーン”とは言いません。“ビットコイン”と言います。なぜって“ビットコイン”が未来であり“ブロックチェーン”などクソくだらないからです。そしてあんたらの重役にも言ってやりますよ、お前らクソくだらねぇなって。なぜってあなたたちが私にお金を払ってここに呼んで、本当の事を私が見たように話してくれと頼んだからです。私は、単に気分を害さないようにと、きれいに包装された何かを売りつけようとしているのではないからです。私が興味があるのは真実を伝える事です。
暗号通貨が興味深いものである理由は、ビットコインが面白い理由は、それが誰にもコントロールされないものだからです。検閲できないものだからだし、オープンなものだからです。そして関わっているたくさんの人々がめちゃくちゃ“変でおかしな”人達だからです。おかしなコンピューター・オタク、プライバシーと自由について、おかしなアイデアを持ったおかしな暗号研究者。これらのおかしな人々が、私がビットコインに関わっている理由です。なぜって私もおかしな人間だからで、それで全然いいんです。
それら全部を取り去ったら、残されるのは - ブロックチェーン - 無味乾燥な何の面白味もないものです。無表情で革新性のない環境。面白いもの全部が消毒され、残りの空っぽの外観で覆われた企業のおもちゃです。基本的にはただの遅いデータベースです。
あなたのもとに誰かがやってきてこう尋ねたとします。
「私のビジネスにブロックチェーンは必要でしょうか?」
彼らに尋ねてください。
「あなたのビジネスに、オープンで、中立的で、ボーダレスで、誰もコントロールする人がいなくて、検閲に抵抗する何かが必要ですか?」
もし答えが「はい」なら、ビットコインが必要です。もしくはイーサリアム。Monero。Zcash。
そうした機能を持ったオープンでパブリックなブロックチェーン暗号通貨システムのどれかを使えばよい。
でももし、オープンで、ボーダレスで、中立的で、対検閲性があり、誰にもコントロールされない何かが必要ないなら、あなたが本当に必要としているのは、データベースです。なのでデータベースをインストールしてください。ブロックチェーンは必要ありません。
もしおかしな人々を取り出して、イノベーションもみんな、面白い開発なんかも全部、彼らと共に行ってしまわせて、いつも通りのビジネスをほんの今だけブロックチェーンでやりたいだけなら、もしこのテクノロジーを、例えばあなたの銀行に導入する全ての目的が、これまでのやり方を何一つ変えないようにする事なら、(あなたにはブロックチェーンなど必要ないんです。)
またはもし政府が「我々は貨幣をデジタル化します。オープンで、分散化された、ボーダレスで、対検閲性と中立性があるブロックチェーンを利用したデジタル貨幣があると聞いたもので。」
「我々もちょっとやってみます。ただしオープンで、分散化されて、対検閲性と中立性がありボーダレスである以外の形で。ぜひ必要ですね。でも国境内でコントロールできて、アクセス権を持つ人によってコントロールする機能、完全な検閲機能も必要ですね。最終的には我々が誰がこのシステムの支配力を有するかを決定します。」
これらもまたデータベースとして知られてますね。
もちろん作れるでしょう。でもつまらないものになる。
この革新性の全て、興奮の全て、私がこのテクノロジーに興味がある理由の全ては、もしかしたら皆さんの何人かもそうかもしれませんが、まさにこれらのテクノロジーが変わっていて少しおかしいからです。まさしくこれらは他と違っていて、オープンだからです。皆に革新性を与え、私たちが予測しなかった方法で創造的に自己表現ができるからです。
完全に予測不可能な方法で、そしていくつかの方法は誰かにとって攻撃的ですが、それでいいんです。
私は、悪い言葉も言えないようなカラフルなキュレートされた広告、マーケティングにフォーカスしたテスト済みのフレーズ、パステルカラーの世界には住みたくはありません。
私は、様々なカラー、クリエイティビティ、バラエティに富み、多様性とアイデアと共にある世界に住みたいです。
自分が理解できないアイデアや、私の周りのおかしな人々は自由に自分自身を表現して、時に私を攻撃したり怖がらせたりします。
でもそれこそがクリエイティビティのやってくる源なんです。
これは単にビットコインだけではありません。私たちは何度も何度も同じことを目にするでしょう。もうこの局面は経験済です。
人々は言います。「えぇ、ブロックチェーンには興味がありますよ。ビットコインじゃなくね。」
もし誰かがあなたに「ビットコインじゃなくてブロックチェーンに興味があります。」と言うならそれは「私は何も理解していない」という意味です。
または誰か他の人がそういうのを聞いて、自分でもそう言うのがなんだかかっこいいなと思ったかです。
それはちょうど誰かが「MySpaceなんて超古いよ。今は断然Facebookだよね。」と言ってたのと同じです。
ビットコインにもそれが起こりましたし、これからも起こり続けるでしょう。思い切って何か面白い事をしようとしている全ての暗号通貨に同じことが起こり続けます。
まさに今、メガバンクや政府は、イーサリアムに恋しています。彼らはイーサリアムがこうした機能を全部持っていながら、ビットコインよりだいぶ奇妙ではなさそうという事実が大好きなんです。
でも彼らは気づいてないんです。まだおかしな所は全部そこに残ってるんですけどね。
私はイーサリアムの変な所も好きですよ。なぜってだいぶ正直に言って、イーサリアムの本質は、電源オフにできない止まらないコード、アプリケーションを作る事だからです。電源をオフにできない理由は、それらは分散型アプリ、DAppsだからです。
なんでDAppを作るのか?
誰かが電源を切りたくなるような、でもあなたはずっと動き続けてほしいDAppを作りたい場合以外で(そんなものは作ろうと思わないでしょ(・∀・)ニヤニヤ )
検閲できないアプリケーションの本質は、誰かにとって攻撃的なアプリケーションをプログラムする事なんです。
なので人々がイーサリアムのアプリケーションを作る時、それらは攻撃的になります。おそらく、この部屋にいる皆さんに対して攻撃的になります。ちょっとだけかもしれないし、すごく攻撃的かもしれません。
ドラッグ・マーケットはシャットダウンできないでしょう。セックスマーケットもシャットダウンできません。
実際の所、コード上、分散化され中立的で止める事ができない環境で使用できる面白いアプリケーションは全部、他の誰かにとってはまさにストップしたいアプリケーションなのです。
そしてそれらは、そういったものを止めたい権力の座にいる人々がいる国々において、よりパワフルなんです。
もし私がロシアにいるなら、イーサリアム上に何かを置きたいですね。プッシー・ライオット・アプリケーションでも作りましょう。プーチンをイラつかせますからね。止められないし。
※プッシー・ライオット(ロシアのフェミニスト・ロック・バンド。過去にプーチン政権への過激な抗議行動で逮捕されている。)
韓国では、大学でのセクハラが問題になっています。大学機関は被害者を黙らせようとしている。なら何があったかをイーサリアム・ブロックチェーン上に書き込みましょう。そうすればそれらは検閲できない。
オスカー・ワイルドは言いました。
“話す価値のあるスピーチはどれも、誰かを傷つける。”
誰かが公開してほしくない真実を話すのがジャーナリズムです。それ以外の全部はマーケティングです。
これから数年間のどこかで、誰かがイーサリアム上に奇妙なアプリケーションを作成するでしょう。そして今、イーサリアムに完全に夢中になっているメガバンクや企業は全部、イーサリアム財団やイーサリアム企業連合に走って行って、彼らはこう言うでしょう。
「ちょっと、これ止めてもらえませんか?」
イーサリアム財団はおそらくこう言います。
「いいえ、私たちは止められません。」
いやいっそこう言うでしょう。「私たちにはできません。」
「イーサリアム改善提案書をご提出ください。コミュニティの意見を聞いてみましょう。」
「ねぇ、コミュニティ。このアプリケーションを止めたいですか?JPモルガンチェースが気に入らないみたいなんです。だめですか?おっとと。」
もしくは、止める決定をするかもしれません。そしてまた別のハードフォークです。
そうして3つ目のイーサリアムが登場します。
イーサリアム。イーサリアム・クラシックそしてイーサリアム・アンセンサード。
なぜならこれらは止める事はできないからです。
クソくだらない企業バージョンとしてフォークして離れ去るしかないのです。でも、もう一方は動き続けます。
そして何を手にしたでしょうか。
その瞬間、私たちは突然気が付くのです。これが私たちが初めて手に入れたGentrificationされないデジタル・コミュニティだと。
街の角にスターバックスは置けても、変な奴らを追い出すことはできない。
もし追い出そうとするなら、我々はフォークして、その界隈と共に居続ける。
おかしなやつらが、史上初めて、自分たちの居場所を手に入れたのです。そしてもう追い出されることはないのです。
これは本当に素晴らしい事です。これはまさにそういうことなのです。
私たちは、乗っ取られ、磨かれ、消毒され、無菌化される事のない、史上初めてのデジタル・コミュニティを手に入れたのです。
あらゆる値打ちのあるアイデアが、ディズニーやマクドナルドやコカコーラ、JPモルガンチェースのおもちゃに変えられ、クリエイティビティにクソをまき散らし、無価値なものに変えられ、空っぽのマーケティング・スローガンになってしまう事がない場所です。
初めて、私たちはGentrificationされる事のないデジタル・コミュニティを手に入れました。
人々が私に「なぜそんなに暗号通貨に興奮しているのですか?暗号通貨ってなんか変じゃありません?」と尋ねる時、私は答えます。
「そうです。変ですよ。美しいまでに変です。だからこそ、私は興味があるのです。」
私の誓い、そして何か変だからこそ暗号通貨に参加している他の全ての皆さんとの誓約は、暗号通貨を、そしてそのコミュニティを、このままずっとおかしなままにしておく事です。
ありがとうございました。
翻訳者注:
ジェントリフィケーション(英語: Gentrification)とは、都市において比較的貧困な層が多く住む中下層地域(インナーシティなど都心付近の住宅地区)に、再開発や新産業の発展などの理由で比較的豊かな人々が流入し、地域の経済・社会・住民の構成が変化する都市再編現象である
引用はWikepediaより。
GoogleやFacebookがやってきてサンフランシスコで起こった事例が一番有名ですね。日本では数年前に山田孝之氏が赤羽のGentrificationを試みて失敗に終わっています。(あれはそういうんじゃないって)
気の合う仲間たちが、自然と気楽に集まって、緩いルールの中わいわい面白がってやってた事が、マスに見つかって一気につまらなくなってしまうのは、ネット上に限らず様々なコンテンツで良く見られる事です。
ある有名なクリエイターはこれをもっと端的に過激な言葉で
「バカに見つかる」
と表現していました。アントノプロスさんのお話でも、インターネットが一番面白かった黎明期のコミュニティがバカに見つかり途端に無味乾燥な面白味のないものに変容していく様子が、実体験を元に語られていました。
翻訳者後記:
※この翻訳者後記は、2年前にALISコミュニティ発展へのエールを込めて書かれたものです。完全に蛇足ですが、今読み返すと結構泣けるので少々修正して転載します。
いかがでしたでしょうか。僕にとってはビットコインへの見方を大変革してくれた鳥肌もののスピーチです。
そして、今まで誰も見たことがないテクノロジーを生みだし、それを育てるのは世の中の大多数から見たら“どこか変わってて・おかしくて・奇妙で・気味が悪い”(つまりはWeirdな)人達が集まるコミュニティであり、彼らを単に自分には理解しがたいからと言って排除せず、キープし続ける事こそが、世界に本当のイノベーションを起こすカギだというメッセージにとても感動しました。
はた目から見ても、とびきり変な(この文脈では言わずもがな、褒め言葉ですよ)人たちが多いALISのコミュニティーを考える上でも、とても得るものが大きい内容と思います。
~省略~
長きにわたって最後までお付き合いくださった方々、ありがとうございました。この連載で少しでもアントノプロスさんの魅力が伝わったなら本望です。最近、ALISでは長文はあまり好まれない傾向にある事を記事で検証してくださった方がいらっしゃいましたが、そんな中でこの場までたどり着いて最後まで読んでくださった方は、ALISコミュニティ内でもだいぶ変わり者と思われます。
※ALIS最盛期の当時でも、この記事へのいいね数は3票とかだった。
アントノプロスさんの言うように、どうかそのままで。面白さの源泉、真のクリエイティヴィティはあなた達のような人々と共にあると僕は考えるからです。
今後ALISコミュニティがどのように発展していくのか、まだ誰にもわかりませんが、できれば淡い色や少しくすんだ色たちも、単にきれいでわかりやすい色たちに塗りつぶされることなく、そのままALISの彩りの一部となる事を期待しています。それがALISの目指す“信頼の可視化”ならば、自分も喜んで一緒にその場を楽しみたいと思います。
それでは北野ブルーではありませんが、最後にビートたけしの物真似で首をカクカクしながらこの台詞で締めたいと思います。
ビットコインもイーサリアムもALISもそしてそのコミュニティも
このままずっと アンストッパボー!
ご清聴ありがとうございました。
s/Usnet/Usenet/g …?