別れのワイン ~Any Old Port in a Storm~ #1

別れのワイン ~Any Old Port in a Storm~ #1

「うちのカミさんがね」

 

これは決して私のカミさんの話ではありません(そもそも、私にはカミさんがいません(笑))。もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、これはドラマ「刑事コロンボ」の中で、ピーター・フォーク演じるコロンボ刑事が、口癖のように言うセリフです。昔は、金曜ロードショーなどで放送されていましたが、最近は民放で放送される事がなくなってしまい、ちょっと寂しく思っています。

 

さて、なぜ今回この「刑事コロンボ」の話題を出したかと言うと、実は事件にワインが関わってくる回があるからなのです。そのタイトルはズバリ「別れのワイン(原題はAny Old Port in a Storm)」。この回、コロンボファンの間でもベスト1に推す声が多い傑作らしいのですが、今回はコロンボファンの方と同じ目線ではなく、私ならではのワイン目線から、独断と偏見で語ってみたいと思います(笑)。

 

まずは、タイトルについてです。邦題は「別れのワイン」と付けられているのですが、原題「Any Old Port in a Storm」には「wine」の文字がどこにも見当たりません。そこで、私なりに原題を訳してみる事にしました。

 

「in a Storm」は文字通り「嵐の中」と訳せますが、問題なのは残りの部分です。みなさんは「Any Old Port」をどう訳しますか?恐らく「嵐の中」と言う意味と関連付けて、「どんなに古い港」のように訳されると思います。しかし、私は「Old Port」を見た時に、港ではなくてあるワインを思い浮かべてしまいました。

 

それは「ポートワイン」です。「ポートワイン」とは、ポルトガルで造られている酒精強化ワイン(発酵中のワインにブランデーを加えてアルコール度数を上げる事で酒質を強くしたワイン。アルコール発酵が途中で止まるのでブドウの糖分が残った甘口になる。)の事で、長期熟成したものは「オールドポート」と呼ばれる事があります。

 

ワインに絡めて考えていた私は、「これしかない!」と思いました。ところが、いざ文章にしてみると「嵐の中のどんなに古いポートワイン」となり、意味がちんぷんかんぷんです(笑)。

 

そこで、迷わずネットで英語を検索(笑)。すると、「any port in a storm」と言う英語の表現がある事がわかりました。これは直訳すると、「嵐の中のどんな港」と言う意味になるのですが、そこから転じて「嵐の時はどんな港でもないよりはましだ」となり、「窮余の策、急場しのぎ、せめてもの頼り」と言った意味になるそうです。

 

そして、この従来の表現の「港と言う意味のport」に「old」を付け足す事で「ワインを意味するport」の意味を持たせ、「ポートワイン」と「急場しのぎ」と言う2つの意味を持つタイトルに仕立てたと推測されます。実際に、犯行は突発的なもので、そこからのアリバイ工作などはまさに「急場しのぎ」的なものでありました。そして、事件解決の鍵を握るのがなんと「ポートワイン」だったのです。つまり、この短い言葉でこの物語を全て表現していると言う、非常に良く出来たタイトルだったのです。

 

そして、この原題を邦題にするのは大変だったと思います。こんな長い説明をタイトルにする訳にはいかないですから(そもそも、この説明が合っているかも定かではありませんが)。ただ、この「別れのワイン」と言うタイトルも、これはこれで秀逸だと思います。その意味がわかるのは、ドラマのラストシーンなのですが、これ以上はネタバレにもなるので、今回は控えておきます(笑)

 

次に私が注目したのは時代背景です。この作品は1973年に放映されたもので、アメリカで制作されました。コロンボはロサンゼルス市警の刑事なので、舞台はカリフォルニア州です。そして、カリフォルニア州でワインの産地と言うと、ナパヴァレーやソノマが有名であり、恐らくはそのあたりにあるワイナリーと言う設定ではないかと推測されます。

 

そして、興味深いのはこの3年後の1976年に、フランスのパリで行われたパリテイスティングと言うテイスティングイベントで、当時まだ世界的に無名であったカリフォルニアワインが、王者のフランスワインに勝ってしまったのです。

 

恐らく当時の制作陣は、カリフォルニアワインの将来的なポテンシャルをすでに理解していて、それを先取りして世界にいち早く紹介する為にドラマに取り入れたのでしょう(ただワインをテーマにしたかっただけだと思います(笑))。

 

いや~、色々書いていたら映画が始まるまでに、すでに長い文章になってしまいました(笑)。まだまだ書きたい事があるのですが、今日はこれぐらいにしたいと思います。

 

「あ、あともうひとつだけ」(笑)。

 

 

 

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