外国送金の仕組みと仮想通貨送金の未来(1)

外国送金の仕組みと仮想通貨送金の未来(1)

今回は以前noteにて投稿した記事「仮想通貨が送れなくなる日が来る?」の続編です。

noteの記事を読んでいない、読んだけどもう忘れたという方向けに内容を要約すると、今後仮想通貨取引所間での送金に対して銀行の外国送金並みの規制がかかり、その影響でマネロン対策の甘い取引所へは送金ができなくなるのではないかいうことが主旨となります。

今回は、私がなぜこの結論に至ったのかをさらに理解していただくため、銀行の外国送金において、どのようなマネロン対策が講じられているのかを紹介したいと思います。

今後、仮想通貨取引所間での送金に対し、銀行の外国送金並みの規制がかかるのならば、銀行の外国送金の仕組みやマネロン対策を理解することで、仮想通貨送金の未来を紐解くことができるかと思います。

といってもやっていることが多すぎるので、今回は外国送金のマネロン対策というよりは、取引相手の銀行についてもいろいろ調査していますよ、という話で終わってしまうかと思います。

それでは早速、外国送金の仕組みのおさらいから始めましょう。

SWIFT


noteの記事でもご紹介しましたが、銀行による外国送金ではSWIFTというシステム(と同時に組織名)を利用しています。SWIFTによる外国送金を簡単に言ってしまえば、電文により顧客の送金情報や資金移動情報を伝えることとなるかと思います。

具体的に説明すると、世界中の銀行はそれぞれBIC(SWIFTコード)という8桁もしくは11桁の英数字のコードを保有しており、このBIC宛に電文を送ることで、電文を送りたい銀行に送金情報を伝えることが可能となります。いわば銀行の住所にあたるものですね。

例をあげると、三菱UFJ銀行の東京はBOTKJPJT、JPモルガンチェースのニューヨークはCHASUS33という固有のコードを持っています。

 

コルレス


SWIFTによる送金では、相手銀行に電文を送信することにより送金情報を伝えることは先ほど説明した通りですが、この電文はどの銀行にも送れるわけではありません。お互いにコルレス(RMAともいう)を締結した銀行間でのみ送受信が可能となるのです。

お互いにコルレスを締結した銀行のことを単に「コルレス」と呼んだり、「コルレス銀行」、「コルレス先」、「RMA(Relationship Management Application)先」などと呼びます。

それでは何故わざわざコルレスを締結する必要があるのでしょうか。例えば三菱UFJ銀行に送金電文を飛ばしたい場合、住所であるBIC、BOTKJPJTはわかっているわけで、コルレス締結などというまどろっこしいことをしなくても、BOTKJPJT宛に電文を飛ばせばよさそうなものです。

このような仕組みになっている大きな要因が、相手銀行がマネロン対策をしっかり行っているか確認する必要があるためです。ようやく本題に入れました。

 

コルレス先のマネロン対策評価


SWIFTに参加している金融機関は世界で数千に上ります(正確な数は忘れました)。その中には当然マネロン対策が十分に取られていない金融機関も存在しているでしょうし、マネロン関連の規制は刻々と変化していることから、コルレスを締結する際には相手のマネロン対策や本人確認態勢が十分なものかを精査する必要があります。

また、定期的(多くの金融機関はおそらく年次)にコルレス先が最新のマネロン規制を遵守しているかを確認する必要もあります。

その際に行う作業は多岐にわたりますが、そのひとつとしてマネロン対策に関する質問票の回答提出を依頼し、その内容を確認するといった方法が挙げられます。

参考までに現在金融機関で世界的に利用されている質問票をご紹介しましょう。

Wolfsberg CBDDQ

それが上記リンクのWolfsberg Correspondent Banking Due Diligence Questionnaire(CBDDQ)となります。

 

上記スクリーンショットはフォームの1ページ目です。全20ページに上り、質問数は100を優に超えています。

話は若干反れますが、質問票の中にこのような箇所があります。

質問70. 以下のリストのうち、どの種類の顧客または業界が厳格な顧客管理措置(EDD)の対象または、金融犯罪コンプライアンス(FCC)プログラムにより取引が制限・禁止されていますか

70q. Virtual Currencies(仮想通貨)

この質問の回答を見ることで、その銀行の仮想通貨に対するスタンスがわかるわけです。一部の銀行はWolfsberg CBDDQをインターネット上で公表しているため、公表している銀行の回答をいくつか見てみましょう。

まずはサンタンデール銀行

70q. Virtual Currencies  Prohibited(取引禁止)

はい、取引禁止です。注目すべきは70o.Red light industries(いわゆる風俗)と70r.Marijuana(マリファナ)ですね。いずれもEDD & Restricted on a risk based approachとなっています。

これは通常の顧客と比べて厳しく審査を行い、取引に制限はかかるけれども、取引禁止ではないことを意味します。

つまり仮想通貨業は風俗業やマリファナ業よりマネロン上リスクが高いと考えられているわけです。

次はイタリアのウニクレディト銀行

 

こちらもサンタンデール銀行と同様仮想通貨業との取引は禁止です。

私の知る限り、大半の銀行がこれらの銀行と同様の回答を行っています。銀行が仮想通貨業界をどのような目で見ているのかが端的に表されていると言えるでしょう。

このことに関連して、以前このようなニュースがありました。

米金融大手JPモルガン、仮想通貨取引所に銀行サービス提供か=WSJ報道(Coin Post)

米国のJPモルガンチェース銀行がCoinbaseとGeminiに銀行口座の開設を提供する可能性があるという内容です。

サンタンデールやウニクレディトの質問票回答を見ると、このニュースがいかに重要なニュースかお分かりになられるのではないでしょうか。

それでは、銀行のコルレス先評価に話を戻しましょう。

銀行はコルレス先のWolfsberg CBDDQの回答をおおよそ年次で確認しています(もちろん、それ以外にも確認することはたくさんありますが、今回は割愛します)。

コルレス先の数は当然銀行により異なりますが、それなりの規模の金融機関であれば数百は下らないでしょう。それだけの数のコルレス先の評価を毎年おこなうわけですから、これは途方もない事務負担です。

しかし、コルレス先のマネロン対策が甘いと自らとの取引にマネロン懸念のある取引が紛れ込むリスクが高まるため、この業務は避けて通ることはできません。

最近では、事務負担の重さとマネロンリスクの回避のため、取引が少ないコルレス先とのコルレスを解消する動きが世界的に広がっています。

仮想通貨取引所間での送金

上記の通り、外国送金にかかるマネロン対策は、個別の外国送金以前に取引銀行(コルレス先)の評価を行うことからスタートしています。

それでは仮想通貨取引所間での送金はどうでしょうか。

noteの記事でも紹介しましたが、FATFの勧告では、「仮想通貨取引所間の送金では送金依頼人(originator)と送金受取人(beneficiary)の顧客情報を交換する」ことが求められています

正確な顧客情報を交換するためには、相手の交換所が本人確認を厳格に行っていることを確認することが必要となります。

つまり、FATF勧告を遵守しようとすると、銀行のコルレス先評価と同様、まずは取引相手のマネロン防止態勢を確認する必要が出てくるのです。

そうなれば、マネロン防止態勢が整っていない取引所とは取引(送金)を行わないという選択肢を取らざるを得ません

しかしながら、各取引所が世界中の取引所の評価を個々に行うのは非常に難しいでしょう。前述の通り事務負担が非常に重く、銀行と同様の方法を行おうとすれば、多大な人的コストが発生します。銀行と同様の人的コストを負担できる仮想通貨取引所は現状ほとんど存在しないのではないでしょうか。

この問題に対する合理的で簡単な解決方法は、マネロン防止態勢等で一定の基準を満たした取引所が属するグループを作り、そのグループ内の取引所間で送金を可能とするような仕組みです。

そしてグループ内で共通の基準を作成したり、マネロン態勢を審査する組織やシステムを構築することが考えられるでしょう。

つまり近い将来銀行のSWIFTにあたるような組織が誕生し、そこへ加盟できない取引所へは送金ができなくなっていくのではないでしょうか。

以上、今回は前回のnoteの内容を少し深掘りしてご紹介しました。

 

最後に、英語の記事となりますが、関連ニュースを紹介します。大手カストディのBitGoがこの問題に向けて動き出しているという内容です。

BitGo Looks to Rally Exchange Clients Around FATF Travel Rule Product (CoinDesk)

今後こういったニュースは増えていくでしょう。また、最新の状況等を皆さんにシェアできればと思います。

今回は、ここまで。

次回はSWIFTによる送金の仕組みを紹介し、銀行の外国送金はなぜ時間がかかるうえに手数料が高いのか、外国送金と比較した仮想通貨送金のメリットなどについて記事にしたいと思います。あくまで予定ですが。

 

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