「外国人技能実習制度」という現代の奴隷制度について知ってほしい

「外国人技能実習制度」という現代の奴隷制度について知ってほしい

みなさん、「外国人技能実習制度(以下、同制度)」をご存じでしょうか。外国人技能実習生(以下、実習生)として来日する外国人は年々増加しており、勤務先が実習生を受け入れているなど同制度が身近なものになりつつあるかと思います。

私は東南アジアに駐在する中で、数多くの外国人技能実習生や彼らに関わる人たちを目にしました。また、現在銀行で外為業務を行う中でも実習生にある程度関わっていることから、同制度について思うところを記事にしたいと思います。

 

目次

  1. 制度の主旨
  2. 制度の仕組み
  3. 制度の問題点
  4. 私見

 

1.制度の主旨

まずは外国人技能実習制度をご紹介したいと思います。

厚生労働省のウェブサイトによれば、同制度は、”我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的"とした制度です。

これを分かりやすく言うと、「いわゆる発展途上国の人々を日本に呼び、日本の高度な技術や知識を経験してもらい、帰国後にその経験を自国の経済発展に活かしてもらう」ための制度ということになります。

ポイントは、これは日本の労働力不足を補うためではなく、あくまで技術・知識の移転が目的であるということです。この主旨を額面通りに受け取れば、インターンシップがイメージに近いのではないでしょうか。

そのため、技能実習生の日本在留期間は有限であり、数年後には母国に帰国することになります。

さあ、ここまで読んでどのような印象をお持ちでしょうか。素晴らしい制度だと思いませんか?しかし実態は異なります。この美しいタテマエの影で多くの実習生が涙し、日本という国を恨み帰国していくのです。

なぜそのようなことが起きるのでしょうか。それを理解するためには、同制度の仕組みを理解する必要があります。

2.制度の仕組み

同制度の仕組みを簡単に説明すると下図の通りになります。同制度には「企業単独型」と「団体監理型」の2種類がありますが、団体監理型が9割超を占めているため、今回は団体監理型のみをご紹介します。

ざっくりとした流れは、

  1. 海外の実習生希望者が送出し機関に応募する
  2. 送出し機関が実習生に日本語等の教育を行う
  3. 送出し機関が実習生受入れ希望の日本企業からの求人に対し、実習生を紹介する
  4. 求人とマッチすれば訪日。監理団体が各種講習を実施する
  5. 受入れ企業へ派遣。受入れ企業と実習生の間で雇用契約を結ぶ

となります。

「送出し機関」と「監理団体」について補足をすると、送出し機関は海外現地で実習生の募集・教育を行うとともに、受入れ希望企業に実習生を紹介することが主な役割です。受入れ企業の中には中小企業も多く、そういった企業が独力で海外人材の採用を行うことは困難であることから、そのサポートを行っています。

また、監理団体は訪日後の講習を行うほか、受入れ企業が技能実習生を適切に扱っているかをチェックするなど実習生や受入れ企業をサポートするっことが主な役割となっています。

3.制度の問題点

同制度の大筋が理解できたところで、実際にどのような問題があるのかをご紹介します。

まず挙げられる問題が、受入れ企業が実習生を使い捨ての労働力ととらえていることです。

劣悪な労働環境の中働かされる実習生は数多くおり、同制度開始以来そういったニュースは後を絶ちません。皆さんもご覧になられたことがあるのではないでしょうか。

ご覧になったことがないという方は参考までに以下の報道をご覧ください。ネット上で探せばこのようなニュースはいくらでも見つかります。

  • 技能実習生を時給610円で働かせる 縫製業を送検 残業は時給500円 葛城労基署(労働新聞社)

https://www.rodo.co.jp/column/86938/

  • 岐阜の縫製業が技能実習生に賃金不払い 4人に185万円支払わず倒産 大垣労基署(労働新聞社)

https://www.rodo.co.jp/column/64923/

 

また「送出し機関が法外な料金を実習生に要求する」ことも問題です。

通常、送出し機関は実習生が日本へ渡航するまでの期間、一定の研修を実施し、その対価として研修費用や寮費等を請求します。

しかし中には法律で禁じられた「保証金」を要求するケースやその他法外な手数料等を要求するケースも後を絶ちません

保証金とは、日本で実習生が逃亡しないように、実習生から預る人質のようなものです。自らが派遣した実習生の逃亡率が高ければ、日本の企業はその送出し機関の利用を避けるでしょう。それを防止するため、実習生から保証金を徴求し、逃亡を防ぐのです。

よく技能実習生が劣悪な環境で働かされているというニュースに対する反応として「だったら母国に帰ればいいじゃないか」という声が挙がることがありますが、多くの実習生が訪日前に借金をしており、中には保証金を預かられていることから、彼らにその選択肢はありません。

その金額は数十万円に上り、百万円を超えるにケースもあります。日本人の我々にとっても大きな金額であり、当然発展途上国の人々からすれば途方もない金額でしょう。

例えばミャンマーの最低賃金は月約1万円です。つまり、年収をはるかに上回る金額の借金をして日本に来ているのです。

それだけの金額の借金を背負った彼らが、それでも実習生となるのは、日本で働けば借金をすぐに返済できるうえ、母国の家族を十分養えるだけの収入を得られるという希望を抱いているからに他なりません。

確かに月15~20万円程度の収入があれば、数十万円の借金はすぐに返済できるでしょう。

しかし現実として、劣悪な労働環境におかれ賃金もまともに払われないといった事態が頻発しているわけです。その時の実習生の絶望はいかほどのものでしょうか。そういった研修生が逃亡し、目先の金目当てに犯罪を犯していくのです。

4.私見

このような悲しい事態が頻発する原因として、非常に多くのことが挙げらますが、今回は私は2点に焦点を絞り説明していきたいと思います。

まず一つは日本人が「潜在的に実習生を見下している」ということです。

私は過去東南アジアに駐在していました。その際、多くの日本人が現地の人を露骨に見下す態度をとっていたことは忘れられません。

またSNS等でも外国人を貶めたり揶揄するような意見を目にすることが多くあります。はっきりと言うと、この記事をお読みいただいている方にもそのような方はいらっしゃると思います。そういった方に問いたい。

たまたま日本人として生まれたことが、そんなに偉いことなのでしょうか。

例えばコンビニの外国人従業員に対して偉そうな態度をとる人。コンビニの外国人従業員は、母国語に加え日本語を話すことができます。中には、英語を話せる人もいるでしょう。また、母国を離れて家族を養うために単身昼夜を厭わず働いている。

あなたはそのような方々に対して、偉そうな態度をとれるような立派な人間ですか?

もし仮にそこまで立派は人であれば、そのような態度をとることはしないでしょう。

また、2つ目の問題点として「実習生を使い捨てにしうる制度上の問題」が挙げられます。

最初に説明した通り、実習生の在留期限は数年です。数年経てば母国に帰っていきます。だからこそ、劣悪な労働環境で働かせる企業が跡を絶たないのです。

日本人に対し同じ扱いをすれば、家族や友人等を通して企業の悪評が広まりますが、多くが単身で訪日し数年後には母国に帰る実習生であれば、その心配もありません。心置きなく搾取できます。

このような制度上の問題が「潜在的に実習生を見下す態度」とあわさり、悲劇を生んでいるのです。

また、そもそもこのような制度設計になっているのは、日本人の事なかれ主義が原因となっていると私は考えています。

人口減に起因した労働力不足を補うため、海外から労働者を受け入れる必要があることは多くの人が認めるところでしょう。

一方で日本では移民に対する拒否反応も強いため、移民を受け入れることができない。そのような葛藤の解決策として「海外への技術移転」を建前にした同制度が生まれたのではないでしょうか。

移民を正面から議論することを避け、安易な道に逃げたのです。

このことは日本社会の抱える矛盾、問題点を外国人実習生に押し付けているに他ならず、決して許されることではないと思います。

なぜ海外の未来ある若者が、日本社会の矛盾の犠牲にならなければならないのでしょうか。

今こそ日本社会は、移民を受け入れるのか、移民を受け入れず衰退していく道のどちらを選ぶのかについて、正面から向き合うべきなのではないでしょうか。

同制度の問題は、直接的には政治の責任かもしれませんが、このような制度の存在を許す国民一人ひとりの責任でもあります。

どうすればこの問題を解決できるのか、ぜひ皆さんにも考えていただきたいと思います。

長くなりましたが、本記事は以上となりますが最後に一点強調したいことがあります。

それは、多くの受入れ企業、送出し機関、監理団体は同制度を適切に利用しているということです。問題を起こしている企業や送出し機関はほんの一部です。しかし、その一部が大きな問題を起こしている以上、制度の見直しは避けられないというのが私の意見です。

以上、皆さんの技能実習制度に対する理解の一助となれば幸いです。

 

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外為業務に携わる銀行員。主に仮想通貨についてtwitterで(ごくまれに)呟きます。

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