仮想通貨送金の手数料は本当に安いのか?銀行の外国送金と徹底比較
今回は以前noteにて投稿した記事「仮想通貨が送れなくなる日が来る?」およびその続編「外国送金の仕組みと仮想通貨送金の未来(1)」の番外編です。
これらの記事では、銀行の外国送金の仕組みについてご紹介をしましたが、ところでみなさん外国送金の手数料がどれくらいか知っていますか?
外国送金と比べて仮想通貨による送金は手数料が安いと言われますが、本当にそうでしょうか。それが本当なら、どの程度の差があるのでしょうか。こう問われて、スッと答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。
多くの方は外国送金を行う機会がないでしょうし、答えられないのも無理がないことです。というかおそらく銀行員でも分からない人は多いと思います。
もし身近に銀行員の知り合いがいれば、聞いてみてください。おそらくゴニョゴニョっと誤魔化し始めるでしょう笑。
では早速、銀行員も意外と知らない外国送金の手数料となぜ仮想通貨取引所での送金と異なる手数料になるのかを見ていきましょう。
仮想通貨取引所での送金
まずは外国送金と比較するために仮想通貨取引所での送金手数料を見ていきます。こちらは皆さんもご利用されたことがあるでしょうからよくご存じでしょう。
以下が日本の取引所数社のウェブサイトに記載の手数料です。
<bitFlyer>
BitCoin: 0.0004BTC(1BTC=1,000,000円とすると400円)
Ethereum: 0.005ETH(1ETH=25,000円とすると125円)
XRP:無料!
<CoinCheck>
BitCoin: 0.0001BTC(≒100円)
Ethereum: 0.01ETH(≒250円)
XRP: 0.15XRP(1XRP=20円とすると3円)
<TAOTAO>
BitCoin: 無料!
Ethereum: 無料!
XRP: 現物の取り扱いなし
安いですね。
それでは、銀行の外国送金を見ていきましょう。仮想通貨取引所の送金手数料より高いでしょうか、安いでしょうか。もう答えは明らかなような気もしますが。。。
銀行の外国送金手数料
外国送金による手数料は送金金額によって変化するため、「100万円を送金する場合」と「日本円口座から1万ドルを送金する場合」について確認しましょう。
また、今回は三菱UFJ銀行の手数料体系を見ていきますが、他の銀行の手数料もだいたい同じ手数料となるかと思います。
1.100万円を送金する場合
- 外国送金手数料 : 窓口の場合 7,000円 ネットの場合 2,500円
- 円為替取扱手数料 : 2,500円
-
合計 : 窓口の場合 9,500円 ネットの場合5,000円
2.1万ドルを送金する場合
-
外国送金手数料 : 窓口 7,000円 ネット2,500円
ただし円口座から米ドルで送金する場合は、1ドルにつき1円が上乗せされた交換レートで米ドルを購入する必要があります。
そのため、1万ドルの送金をする場合のスプレッド(上乗せ分)の1万×1円=1万円は実質手数料とも考えられます。
まとめると、仮想通貨取引所で100万円分の仮想通貨を送金すると、多くて400円程度しか手数料がかからないのに対し、外国送金は安くても2,500円、高いと9,000円もの手数料がかかるということですね。しかもこれは為替スプレッドを抜きにした計算です。
いやー、外国送金の手数料の高さがよくわかる記事となりました。今回はここまで。
・・・
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・・・
じゃないんだな、これが。
銀行の外国送金にかかる手数料はこれだけではありません。上記は送金受付時の手数料であり、実は送金を受取る時にも手数料がかかります。三菱UFJ銀行のウェブサイトを見ると、
ありました。
外国送金を受け取る際には、被仕向送金手数料が1,500円かかります。
その他にも、円為替取扱手数料(外貨取扱手数料)2,500円もしくは約1万円相当の為替スプレッドがかかってきます。
こちらの手数料も多少の金額の差はあるものの、どの銀行もおおむね同様の料金体系となっているかと思います。
かなり複雑になってきたので、よくあるケースでおさらいしましょう。
<ケーススタディ>
あなたの息子さんはアメリカに留学中です。今回、学費や生活費として1万ドルを息子さんに送金することにしました。そこで、給与受取口座がある三菱UFJ銀行に来店し、給与口座(円口座)から送金の手続きを行いました。さて、手数料はどれくらいかかるでしょうか。
答えを見ていきましょう。
まずは外国送金手数料(窓口の場合)7,000円がかかります。また、米ドルを購入する必要があるため、1万×1円=10,000円の為替スプレッドがかかります。送金時の手数料相当金額は17,000円となります。
次に息子さんが1万ドルを受取る際の手数料を見ていくと、被仕向送金手数料1,500円と外貨取扱手数料2,500円の合計4,000円相当が受取りにかかる手数料です。
つまり、送金時に17,000円、受取時に4,000円の計21,000円が合計の手数料です。
高いですね〜。
更に恐ろしいことをお伝えしましょう。外国送金の手数料は送金金額によって変わってきますが最低金額が決まっています。三菱UFJ銀行の場合、300万円以下の送金は上記の手数料が適用されます。(ただし為替スプレッドは金額に応じて減ります)
つまり、上記のケースで紹介した手数料のうち、為替スプレッドを抜いた11,000円が必ずかかる固定の手数料です。
これは1万円の送金でも50万円での送金でも変わりません。1万円の送金の場合は、送金金額以上の11,000円が手数料としてかかるのです。
また、上記は三菱UFJ銀行から受取銀行に直接送金が行われた場合の手数料です。SWIFTの仕組み上、送金が他の銀行を経由していくケースもあり、その場合は経由銀行で手数料が差し引かれます。
なぜこんなに手数料が高いのか
それでは、なぜこれ程までに外国送金の手数料は高いのでしょうか。銀行がぼったくってボロ儲けしているからでしょうか。
違います。
銀行は外国送金で儲けるつもりなど毛頭ありません。その証拠に多くの銀行が外国送金業務を縮小し始めています。
具体的には、自行に口座を持っていない顧客の外国送金を断ったり、外国送金の受付店舗を減らすなどが挙げられます。もし外国送金が儲かる業務であれば、このようなことは起きないでしょう。
それではなぜ手数料が高いのか。答えを言ってしまうと「SWIFTの仕組み上の問題」と「マネロン対策にかかる費用」が挙げられます。
マネロン対策に膨大な事務コストがかかることは、前回の記事で取引先(コルレス先)の評価にコストがかかっていることを紹介したので、その一部はご理解いただいていると思います。
そのため次回の記事で、実際に外国送金を受付けた際や、顧客の口座に入金をする際にどのようなマネロン対策を行っているのかについて紹介し、なぜ手数料が高いのか見ていくことにしましょう。
また、手数料が高いもうひとつの要因であるSWIFTの仕組みについても次回以降記事にしたいと思います。
最後に
長くなったので今回はこれくらいとしますが、次回の記事に関連して、これだけはぜひお伝えしたい。
仮想通貨による送金も外国送金も自らの資産を移動させる「価値の移転」といわれる行為です。なぜ同じ価値の移転を行っているのに、仮想通貨取引所はマネロン対策をしなくてもいいのでしょうか。
銀行の外国送金手数料が高いと槍玉にあげられますが、仮想通貨取引所程度のマネロン対策でいいのならば、手数料はずっと安くできるでしょう。
銀行のマネロン対策と比較すれば、仮想通貨取引所のマネロン対策など何もしていないに等しいです。
逆に言えば、もし銀行並のマネロン対策が求められれば、数十円や数百円の手数料で送金などできるわけがありません。
つまり、仮想通貨による送金のメリットの一つである「手数料の安さ」は当局の匙加減ですぐにでも消し飛ぶ程度のものなのです。
この点を次回以降の記事で掘り下げていきたいと思います。乞うご期待。
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