詐欺とは何であるか

詐欺とは何であるか

もっと良い詐欺の定義を知っているという方はコメントで教えてください

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個人の内面や良心に立ち入らずに詐欺を定義することは非常に難しい。一流の詐欺師は法制度を欺くので、成文法によって定義される詐欺と人類が直感的に詐欺だと考えるシステムが一致するとは限らず、従って信頼できる第三者や法に頼ることはできない。規模が大きく、その被害が拡大するほどさらに乖離は酷くなる。あるシステムAが詐欺じみているということを、Aの信奉者にどうやって忠告したらよいのだろうか。

まず、以下を認めたい。

1. 物質世界において未来を確実に予想することはできない
2. 人間の内面を確実に知ることはできない

ある詐欺が露見するとしても、事前にそれが詐欺であるかどうかを自信を持って断言できないということが1から分かる。2010年に「ビットコインはこれからもっと値段が上がりますぜ」と言って近付いてくる人間を詐欺師とみなさないのは難しいだろう。そして、この場合正しかったのは自分が2010年当時は詐欺師だと思っていた人間だということになる。従って、前もって何かが確実に詐欺であるかどうかを判断するのは諦めることにする。また、2が意味するのは、人間は任意のタイミングで嘘を付くことができるので、詐欺かどうかを発言や文章などから判断してはならないということである。

以上を踏まえて、未来や人間の内面に言及しないような形で、詐欺という現象を以下のように定義する。

「あるシステムAが詐欺であるとは、Aが破綻した結果として直接的な暴力が発生することである。または、Aはより大きな別の詐欺の部分最適化された現象である」

すなわち、詐欺とは後から振り返って暴力の原因であったと同定されるものである。現在進行系で何かが詐欺であると断言することはできない。

直観的な例として、豊田商事の会長が殺害された事件が分かりやすい。だが、大抵の詐欺師は捕まらないし、暴力も受けていない。この事実をどう説明したらよいだろうか。まず第一に、詐欺師だとみなされる人物に対して直接的な暴力で報復が可能であることは豊田商事の例から明らかである。だが、ほとんどの詐欺の被害者は被害が回復され、首謀者が国家によって逮捕され刑罰を受けることを望むだろう。これは、国家というより大きな暴力が被害者からの直接的な報復を抑制しているためである。では国家は巨大な詐欺なのだろうか。答えはイエスである。人間を洗脳し武器と自己決定能力を徹底的に奪うシステムは最終的に破綻して暴力を生み出すその定義から言って詐欺である。
その中に組み込まれた成文法と裁判制度のシステムを上手に悪用することで詐欺師は部分的に被害者からの報復と暴力を一時的に免れているに過ぎない。

以上の議論が適用可能なのは、法や国家といった壮大な話だけではない。給料だけ高い無意味な仕事だとか、不必要な製品を売り込む営業担当者だとか、他人を搾取する構造の中にいる人間で自分のやっていることが詐欺とどう違うのかと悩む生活者にも答えを与える。答えは、暴力が発生するまでは詐欺とは言い切れない、である。自分が騙した人間にいつか殴られやしないかと日夜怯えるくらいなら、そんな仕事はやめた方がいいだろう。
さらに、現在進行形で悪徳商法の被害にあっている人間に対して助言をすることもできる。「武器を準備し、裏切られたときに備えよ。いざという時にはあなたの覚悟によって、何が詐欺であったか人々が知るだろう」と言ってやればよい。

もっとも、注意すべきなのは、ほとんどの暴力は理不尽なものであって、背後に詐欺を組織した人間の悪意があるとは限らないということである。天災によって身体にダメージを受けることはあるが、それは結果としては詐欺によって与えられたダメージと同じであっても、区別しなければならない。また、暴力が発生するとは言ってもそれが分かりやすい形で外部に現れるとは限らないのも注意が必要である。将来の為に貯金していた金を盗まれた人は絶望し、自分にその矛先を向けて自殺してしまうかもしれない。悪徳商法に騙された人は家庭内暴力を起こすかもしれない。しかし、どのような形であっても人間から人間へ向けられる暴力に最終的に辿り着くようなシステムは詐欺的であると、上の定義は言っているのだ。

他にも、例えば「なぜ他人を騙してはいけないか」という問いにも適切に答えることができる。つまり「それは最終的に他人を殴るのと同じ結末をもたらす」というだけである。倫理的な判断はこの結論から各自が導けばよい。

過去記事リスト

暗号通貨ユーザーのためのネットワーク・セキュリティ(1)
https://spotlight.soy/detail?article_id=bj8t69tml

暗号通貨ユーザーのためのネットワーク・セキュリティ(2)
https://spotlight.soy/detail?article_id=xwada9rw4

暗号通貨のプレマインについてもう一度考えてみる (1)
https://spotlight.soy/detail?article_id=f18pngmal

暗号通貨のプレマインについてもう一度考えてみる (2)
https://spotlight.soy/detail?article_id=w19kfuoxb

サイドチェーン完全に理解した(1)
https://spotlight.soy/detail?article_id=fuhmf3v4a

サイドチェーン完全に理解した(2)
https://spotlight.soy/detail?article_id=09td38ogu

ビットコインのサイドチェーンがもたらすメリットとアルトコインへの負の影響 | サイドチェーン完全に理解した(3)
https://spotlight.soy/detail?article_id=xenqycujl

サイドチェーンの問題点を考える | サイドチェーン完全に理解した(4)

https://spotlight.soy/detail?article_id=1lkzboesj

サイドチェーンはこうやって使う | サイドチェーン完全に理解した(5)
https://spotlight.soy/detail?article_id=693eud9j7

ビットコインのサイドチェーンがもたらす不都合な未来 | サイドチェーン完全に理解した(6)
https://spotlight.soy/detail?article_id=cj4sgrxim

Ethereumをもう一度ちゃんと批判する
https://spotlight.soy/detail?article_id=evrs1yn3d

詐欺とは何であるか

https://spotlight.soy/detail?article_id=7rwt4fj9s

[翻訳] レジスタンスの公理

https://spotlight.soy/detail?article_id=8vknao9mr

 

写真: https://en.wikipedia.org/wiki/File:4775_-_Venezia_-_Palazzo_ducale_-_Capitello_12_-_Falsa_fides_in_me_semper_est_-_Foto_Giovanni_Dall%27Orto,_31-Jul-2008.jpg

Palazzo Ducale in Venice: capital # 12 in the porch (counting as # 0 the one at the corner near the Bridge of Sighs): "Allegories of Virtues and Vices" - "Falsa fides in me semper est" (Fraud). Picture by Giovanni Dall'Orto, July 31, 2008.

 

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