サイドチェーン完全に理解した(2)

サイドチェーン完全に理解した(2)

以下の記事の続編です。

サイドチェーン完全に理解した(1) https://spotlight.soy/detail?article_id=fuhmf3v4a

前回はサイドチェーンを実装する上で必要な条件を検討しました。今回は、サイドチェーンの中でも特に有力視されているDrivechainという仕組みを見ていきます。

DrivechainはPaul Sztorc氏によって提案されたビットコインのスケーリング手法です。その潜在的な影響力とは裏腹に、注目しているプレイヤーはかなり少なく、重要性と影響範囲を考えておくことで投資でも有利になるでしょう。

ハッシュレートエスクロー

 

では、Drivechainは具体的にどのように「ブロックサイズを拡大しないトラストレス双方向ペグ」を実現しようとしているのでしょうか。それがこのハッシュレートエスクローと呼ばれる仕組みです。これは簡単に言えばマイナーによる投票です。サイドチェーンからビットコインのメインチェーンに資金を移動するとき、その資金が本当に正当に移動されているものなのかどうかをハッシュレートによる投票で決めようという仕組みです。

この仕組みは、極端な話ブロックチェーンを使う必要すらありません。例えば取引所のDBコインであってもハッシュレートエスクローの形式にすることが可能です。ユーザーが取引所に入金するときにはある特殊なウォレットに入金し、その取引所の特殊なウォレットからメインチェーンに戻すときにはマイナーが投票する必要がある、という状態を実現できます。

重要なのは、マイナーは判断を間違うことがあるにせよ、常に正しくサイドチェーンの情報を反映するインセンティブがあるということです。もしも不正な送金がサイドチェーンで起きてしまえば、そのサイドチェーンのユーザーの多くが影響を受けます。これによってビットコインの価値は下落するでしょう。サイドチェーンの状態が正しく保たれているのであれば、ビットコインの使いみちが広がり、扱えるデータ量も大きくなります。これによってビットコインの価値は上昇するでしょう。

マイナーは自らビットコインの価値を毀損させることはしません。長期的な事業を考えているマイナーはASICの償却費、電気の長期契約に縛られているため最大のチェーンであるビットコインを攻撃することなど最初からできないのです。

そして、念には念を入れて、ハッシュレートエスクローによる投票では、マイナーの単純な多数派が勝つわけではなく、全ての資金移動に懐疑的なマイナーが有利になるように設計されています。また、通常では10分で承認される送金時間に該当する投票期間は6ヶ月と非常に長くなっています。6ヶ月間かけてマジョリティーの悪意のあるマイナーが協力して資金を盗もうと考えるのであれば、そもそもマイナーは二重支払いや空ブロック採掘など他の方法で攻撃ができるのであり、すでにDrivechainができる前からそのような攻撃は可能であるという理屈です。

このように、「自分が検証したわけではなくても、最短で6ヶ月間もインセンティブを持つ保守的なマイナーによって審査された資金移動であれば、おそらくは安全だと考えられる」というのがハッシュレートエスクローにおける基本的な考え方です。

また、重要なのが

1. どのサイドチェーンを利用するのかはユーザーが決定できる
2. Drivechainの利用はオプションである

ということです。
腕の悪いプログラマーが設計したサイドチェーンの中には勝手に分裂したり、預金額面が増減したりするものもありえます。マイナーはそのようなチェーンを完全に無視し、一切の引き出しを許可しないかもしれません。そのようなサイドチェーンに入金したユーザーは資金を全て失うかもしれません。しかし、そのようなサイドチェーンは最初から使わなければ良いのです。あるいは、自分が安全だと思う金額だけ入金すればいいのです。
また、もしもあなたが「自分が検証したわけではなくても、最短で6ヶ月間もインセンティブを持つ保守的なマイナーによって審査された資金移動であれば、おそらくは安全だと考えられる」とは思わなくても、あなたはDrivechainによるサイドチェーンを一切使わず、これまで通りメインチェーンだけでビットコインを使えば良いのです。

ブラインドマージマイニング

 

ブラインドマージマイニングはプルーフオブワーク(PoW)をサイドチェーンで行う方法です。Drivechainではハッシュレートエスクローが必須ですが、ブラインドマージマイニングは必ずしも必要ではありません。ただ、公平にサイドチェーンを決定する手法として同時に提案されているものです。このトピックに関してはBTCNの記事( https://btcnews.jp/22o0bcbf11834/ )の方が詳しいでしょう。

簡単に解説すると、サイドチェーンでどのチェーンが正当かを決定する際に、メインチェーンのマイナーに支払った金額によって決定する手法です。メインチェーンに金をたくさん積んだ方が正当なマイナーとして認められます。

例えば、サイドチェーンのマイナーである(A,B,C)さんが(1,2,1)BTCを消費して3ブロックを作成し、同様に(D,E,F)さんが(3,1,2)BTCを支払って3ブロックを作成した場合、1+2+1=5 < 6=3+1+2 から(D,E,F)さんが掘ったチェーンが正当と認められることになります。

理論上はハッシュレートエスクローでメインチェーンに返ってくるBTCはどれでもいいので(A,B,C)さんのブロックが最終的に認められ、(D,E,F)さんはブロック手数料の払い損になる可能性もあるはずです。しかし普通は、ブラインドマージマイニングを正しく維持することがメインチェーンのマイナーの利益になるというのがマイナー全員の総意なので、ハッシュレートエスクローで投票されるのはブラインドマージマイニングを正しく行っているチェーンになるでしょう。

サイドチェーンの決定プロセスで直接元締めのメインチェーンのマイナーに金を払うという手法に疑問を感じる方もいるかもしれません。しかし、ビットコインのPoWはそもそも一番たくさん金を支払った(=エネルギーを使った)チェーンを正とする仕組みです。これはNiceHashのような「金を払って、チェーンを決定する」ような合理化された市場の仕組みを見れば明らかです。ブラインドマージマイニングはそれをもっと露骨な形で表現しているに過ぎません。

このようにブラインドマージマイニングはPoWの形式化であり、これを利用したサイドチェーンではメインチェーンと同様にドライブチェーンをつなげることができるようになります。したがって、ブラインドマージマイニングによるサイドチェーンのブラインドマージマイニングによるサイドチェーンのブラインドマージマイニングによるサイドチェーンの・・・サイドチェーンなどを実装することも理論上は可能です。

(続く)

過去記事リスト

暗号通貨ユーザーのためのネットワーク・セキュリティ(1)
https://spotlight.soy/detail?article_id=bj8t69tml

暗号通貨ユーザーのためのネットワーク・セキュリティ(2)
https://spotlight.soy/detail?article_id=xwada9rw4

暗号通貨のプレマインについてもう一度考えてみる (1)
https://spotlight.soy/detail?article_id=f18pngmal

暗号通貨のプレマインについてもう一度考えてみる (2)
https://spotlight.soy/detail?article_id=w19kfuoxb

サイドチェーン完全に理解した(1)
https://spotlight.soy/detail?article_id=fuhmf3v4a

サイドチェーン完全に理解した(2)
https://spotlight.soy/detail?article_id=09td38ogu

ビットコインのサイドチェーンがもたらすメリットとアルトコインへの負の影響 | サイドチェーン完全に理解した(3)
https://spotlight.soy/detail?article_id=xenqycujl

サイドチェーンの問題点を考える | サイドチェーン完全に理解した(4)

https://spotlight.soy/detail?article_id=1lkzboesj

サイドチェーンはこうやって使う | サイドチェーン完全に理解した(5)
https://spotlight.soy/detail?article_id=693eud9j7

ビットコインのサイドチェーンがもたらす不都合な未来 | サイドチェーン完全に理解した(6)
https://spotlight.soy/detail?article_id=cj4sgrxim

Ethereumをもう一度ちゃんと批判する
https://spotlight.soy/detail?article_id=evrs1yn3d

詐欺とは何であるか

https://spotlight.soy/detail?article_id=7rwt4fj9s 

[翻訳] レジスタンスの公理

https://spotlight.soy/detail?article_id=8vknao9mr

 

 

写真: https://en.wikipedia.org/wiki/File:Broad_chain_closeup.jpg を編集

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