SBI VCがどうやって儲けているか全然分からないので2019年度の決算公告を見る
言い訳しておくと自分は会計畑の人間ではないですし、この記事は調べた数字と「どうやったらこの数字が出てくるのか?」という疑問について書きなぐったメモです。もしこの記事が有識者の目に止まって有益な情報が得られたらな…という期待で書いています。
1)疑問に思った経緯
自分はbitFlyer社の加納さんのツイートから疑問に思ったので調べ始めました。
顧客の預かり資産以上に営業収益が出るのは、どういうことでしょう? https://t.co/xtkeg6Q8qr
— 加納裕三 (Yuzo Kano) (@YuzoKano) August 8, 2020
こちらは、たなかたかゆき(パピコ)さん(@papico_chupa)がまとめられた国内の仮想通貨交換業者の2019年度決算について言及されたものです。
ここで確認したいのはSBI VCトレード社以外の業者は「預かり資産」>「営業収益」となっていることです。
取引所の収益源と言うと、顧客の売買等の手数料で稼ぐのが基本的だと思われます。例えば売買手数料1%だとして(クソ高いですがw)顧客から100万円を預かり、顧客が100万円分の売買を指示した時に取引所が1万円の収入を得ます。仮に顧客が全力で100回取引を繰り返したとしても取引所の取り分は約63.4万円です(顧客の手元には100万円 × 0.99^100 ≒ 36.6万円残る)。永遠に預かり資産を上回る収益は得られません。
入出金・レバレッジ取引・ポジション維持手数料、追証、呑み…等の要素も絡んでは来ますが、手数料ビジネスだけでは顧客の「預かり資産」を「営業収益」が上回ることは基本的にありえないと思います。あるとすれば、手数料とは全く別の収益源が必要になります。
ここで業界に鳴り物入りで参画してきたディーカレット社の数字を比較対象として見てみましょう。
預り資産すなわち顧客から預かっている現金、仮想通貨、受入保証金(多分レバレッジ取引用の証拠金)の合計が8.79億円、それに対して営業収益はわずか0.48億円です。営業収益よりも圧倒的に預かり資産が多いです。
預かり資産に対して5.46%の営業収益があった計算になります。
営業収益の内訳は明示されていませんが、少なくとも取引所の手数料ビジネスでは全然儲かっていない事がわかります(大赤字の業者なので比較としてはアレかもですが…)。
では肝心のSBI VCトレード社の数字はどうか。
2)SBI VCトレードの第4期の決算公告
こちらは預かり資産が72.3億円に対して、営業収益は80.22億円と8億円近く上回っています。丁寧に営業収益の内訳を記載してくれているので見てみましょう。
- 仮想通貨取引損益:79.6億円
- 受取手数料:0.62億円(預かり資産の0.86%に相当)
営業収益の99%以上を仮想通貨取引損益が占めています。つまり、
取引所としての手数料ビジネスでは全然儲かっていないけど仮想通貨トレードでメチャ儲けたンゴwwww
と言っているわけですね。いやー、スッキリしました。疑問解決!以上!
・・・は?
いやいや…専業のトレーダーの人が法人設立して「いやー勝ちすぎて税金つらいわー、色々経費計上しないとなー」とか言いながら作った確定申告書類に儲けの99%が仮想通貨トレードでしたと書かれているなら分かるけど取引所の儲けが99%仮想通貨取引? どこでどう取引して儲けたの? そのお金どこから来てるの?
… 決算公告は何も言ってはくれない……教えてくれ、五飛!
五飛(´・ω・)つ 「Ⅷ 関連当事者との取引に関する注記」
なーるほど! 265億円分を兄弟会社のSBIアルファ・トレーディングさんを通して売った訳ですね! 兄弟会社同士でちゃんと市場価格を勘案して価格交渉もして! それなら80億円近い仮想通貨取引益が出てもおかしくないね! そのうち21.3億円が営業未収入金だけど!(2020/8/10訂正:213億円→21.3億円)
未収金(みしゅうきん)は、勘定科目の一つ。流動資産に区分される。
営業取引以外の取引により資産を売却した際に生じる債権を未収金として計上する。「未収入金」、医療では「治療未収金」、「治療未収入金」と呼ばれることもある。営業取引により生じる債権を扱う売掛金や、営業取引以外の継続的な取引を扱う未収収益と区別される。
付記)実質上、営業未収入金は売掛金と同じ性質のものでよいそうです。
・・・で、その売り飛ばした265億円分の仮想通貨はどこの誰から累計いくらで仕入れたの? 「仮想通貨売付(その他)」と対になる「仮想通貨買付(その他)」の項目はどこ? ここに記載がないということは兄弟会社等からではない? 1つ前の第3期では期末日時点で204万8千円しか自己分の仮想通貨を保有していなかったですよね?
…やはり決算公告は何も言ってはくれない
ちなみに本記事の内容は既におまるさんが140字以内できっちり解説してくれている内容の焼き直しです。
SBI VCトレードは預かり資産約72億に対して、受取手数料が約62百万。営業収益約80億のほとんどが仮想通貨取引益となっている。そしてSBIアルファ・トレーディング(SBI VC Trade主要カバー先)との間で265億円(仮想通貨売付)も何を取引しているのか?https://t.co/xzBCpMqD3r (PDF) https://t.co/hUo5Jz3fal
— ㊙️おまるまん (@bit_weapon) August 9, 2020
3)SBIアルファ・トレーディング社について補足
SBI VCトレード社の利用規約を見るとカバー取引先にSBI アルファ・トレーディング株式会社があります。
先程のSBIアルファ・トレーディング社との取引の内容は
- 仮想通貨売付(VCトレード):13.2億円
- 仮想通貨買付(VCトレード):27.1億円
- 仮想通貨売付(その他):265億円
となっています。SBI VCトレード社がポジションリスクをとらない形で運営していると記載している=自社で仮想通貨をほぼ保有しないようなので、このアルファ・トレーディング社への「(VCトレード)」の売付/買付すなわち27.1億円分の仮想通貨の買付と13.2億円の売付に顧客がSBI VCトレード上で売買した注文のカバー取引が含まれていると考えられます。(カバー先にそのまま注文が流れているのなら)。
受取手数料の6200万円はこの辺りからですかね。仮に顧客の売買が合計の40億円だと仮定すると手数料6200万円=片道1.5%くらいでしょうか。
ユーザーが40億円?相当の売買を行っている間にどこからか仕入れた仮想通貨を265億円売付していた、と。
繰り返しになりますが、SBI VCトレード社は仮想通貨の値下がりリスクを勘案して、自前で仮想通貨を保有しない方針らしく期末時点でたった93.9万円、XRPに至っては624XRPしか保有していません。これは前期もほぼ同様。BCHに至っては今期から記載すらないです。なおBSVは影も形もない。
・・・例えば4月1日に185億円で仮想通貨を仕入れて期末3月31日の前日の3月30日に265億円で全部売ったら仮想通貨損益が80億円になったりするんでしょうか。
会計に詳しい方が居たら是非教えて欲しいです…
以上です。なおこの下には短い愚痴しか書いていません。