
「Resistance Money」感想④
「Resistance Money -A Philosophical Case for Bitcoin-」を読んでの初心者観点での感想を投稿していきます。6章Privacy in Publicが本記事の対象です。前回記事(感想③)は以下参照。
https://spotlight.soy/detail?article_id=i8azx44w1
【目次】
- ビットコインの思想背景をちゃんと知る
- Lightning Networkと社会は両立しうるのか?
- 現金って実はすごい!
- たとえ公開鍵であっても、むやみに開示すべきでない
- リバタリアンな考え方だなぁ
【1. ビットコインの思想背景をちゃんと知る】
本書では、ビットコインのプライバシー性の話に入る前に、そもそもプライバシーとは何か?なぜプライバシーが大事なのか?金融プライバシーがないと何が困るのか?といったそもそも論から詳細に言及していました。
ビットコインを学ぶということは、ビットコイン自体の技術を学ぶということだけでなく、そのバックボーンとしての思想や目指すものが何なのかを把握することが大事だと思いますが、その把握に必要な情報を網羅している良書だなあと思いました。
ちなみに感想③の記事でも中国の規制に言及しましたが、本書の言うプライバシーこそが思想の自由を保障する、という点からしても、中国政府とビットコインの本質的な性質は相容れないですね。逆に言えば中国当局はビットコインの本質をよく分かっているのかもしれないですね。
【2. Lightning Networkと社会は両立しうるのか?】
CoinJoinやLightning Networkの技術が図付きで紹介がされていて、勉強になりました。
初心者の私は、Lightning Networkについてはせいぜい手数料の安くて支払が早い程度の認識しかなかったですが、検閲耐性もあるんですね。そもそもLightning Networkの名前の由来は決済速度の早さに加えて、ジグザグとネットワーク上のノードを雷のように行き交う様から名付けられたそうです。
最近もいわゆるトクリュウの資金洗浄にミキシングが使われたというのでお昼のバラエティでやり玉に挙げられていましたが、Lightning Networkのような秘匿性が高い技術が社会にあまねく普及したら、国税庁はどうやって税を適切に把握・徴収するのでしょうか?一人ひとりの取引一つずつを全て流れを追って徴収するなんて不可能のように思えます。(それができないのがプライバシーの裏返しですが)。個人の善意に依拠しての徴税ですかね汗
社会は財(税)の再配分で成り立つことを考えても、Lightning Networkが本当に今後社会と両立し得るのかなあと思いました。
【3. 現金って実はすごい!】
感想①でも利点を軽く触れましたが、このビットコインの本を読んだ結果、むしろ現金に対する見方が180度変わって良くなりました(笑)
今の日本は国を挙げて脱現金・電子決済への流れで、現金に対してネガティブなイメージが強いかと感じます。でも現金は、ビットコインと比較してすら、以下のような強みがあるんです。
【4. たとえ公開鍵であっても、むやみに開示すべきでない】
上記表のうち④取得前のプライバシーは特にハッとさせられました。
もしあなたが複数のビットコインアドレスを持っていて、そのうちの一つでも(決済等を通じて)相手に知られた場合、各アドレス間でのビットコインのトランザクションの様子から芋づる式に、あなたのビットコインアドレスを類推することが可能になるからです。そしてそのうちの一つでも(KYCした取引所のアカウントなど)自身の個人情報と紐づく性質のアドレスだった場合、あなた個人を特定することも不可能ではないと思います。
たとえ公開鍵であっても、ネット上で公開したりするのは、プライバシーの観点上は結構危険なんじゃないかなと思いました。
【5. リバタリアンな考え方だなぁ】
本書ではプライバシーの保証は脱税やマネロンと表裏一体だというビットコインの課題を否定しませんでした。結局金融プライバシーが欲しいのは犯罪者だけでなく個人もであり、その欠点を上回る利益をもたらすので、このようなプライバシー性は許容され大事にされ続けていくべきだ、という結論付けは、内容云々以前にリバタリアンな考え方だなあと思いました。
個人の自由を重んじる、欧米らしいというか、日本社会だとまず出てこない結論付けでしょうね。本題と逸れますが、こういうビットコインを許容する思想的土壌が国家国民に(おそらく)無い時点で、日本がビットコインの中心になることは無いでしょうね。。。