Ampleforth(AMPL)の仕組み ~資産増加メカニズム~

Ampleforth(AMPL)の仕組み ~資産増加メカニズム~

仮想通貨Ampleforth(以下「AMPL」)が情報に敏感な海外投資家の間で話題になっています。
7月前半の仮想通貨の世界トレンドランキングでは1位となりました。

AMPLは仮想通貨の中ではかなり異質な存在ですが、(プロダクトに対する個人的評価は別として)社会実験としては非常に面白いプロジェクトだと思います。

今回は、AMPLの仕組みについて解説します。

(補足)
1.本記事の性質上、AMPLの投資的側面の言及がありますが、本記事は投資を推奨・助言するものではありません。
2.また、投資パートについては公開範囲を限定しています。金儲けのカラクリや個人の投資成績、投資戦術を記載しており、いたずらに投機を助長することが不適切と考えるためです。ご関心のある方だけお読みください。(8月31日追記:投資パートを8月31日に公開)
3.既に信玄さんがAMPLの良質な記事を作成されていますので、そちらもご参考ください。


<目次>
1.プロダクトの概要
(1)どんな製品か
(2)チームメンバー
(3)AMPLの価格・供給量の推移
2.AMPLへの投資について
(1)資産増幅メカニズムのカラクリ(なぜ先行者は儲かるのか)
(2)Rebaseで見過ごされがちな事実
(3)Geyserにデポジットするのと単純ホールド、どちらが得か
(4)今後の先行きについての個人的見解
3.AMPLを購入する方法


1.プロダクトの概要
(1)どんな製品か
 ①AMPLの概要
 AMPLが生まれたのは2019年6月です。わずか11秒で、500万ドルをIEO(Initial Exchange Offering)で調達しました。ERC-20トークンです。

 AMPLの特徴を一言で言うと「市場の需給に応じて供給量が調整される」通貨です。

 ビットコインをはじめとする多くの仮想通貨は、供給量が固定されており、市場の需給に対して価格が反応してきました。つまり、人気が出れば価格は上がるし、人気が下がれば価格が下がります。
 一方、AMPLは、需要が高まってあらかじめ設定したターゲット価格を上回った場合、供給量を増やして対応します。AMPLのターゲット価格は約1ドルです。具体的には、市場価格が約1.06ドルよりも高ければ、その時の価格に応じて供給量を増やすことで、通貨1単位当たり実質価値を下落させます。
 逆に、需要が少なくなれば(約0.96ドル未満であれば)供給量を減らして通貨1単位当たりの実質価値を増加させる動作を行います。これらは、Ethereumのスマートコントラクトで自動執行されます。
 なお、価格が0.96~1.06ドルの範囲に収まる場合は、供給量の調整は行われません。

(出典:Ampleforthのホワイトペーパー。左が価格のイメージ図(X軸は時間)、右が供給量のイメージ図(X軸は時間))

 ➁Rebase(リベース)
 供給量が増えていく通貨というのは、AMPL以外にもあります。しかし、AMPLが他の通貨と大きく異なる点は、供給量が増える際、各人の通貨も一緒に増えていくメカニズムを搭載していることです。
 
 つまり、AMPLを購入した後、自分が保有する枚数が毎日変動していきます。これは、他の通貨に見られない斬新な特徴です。
 この調整はRebase(リベース)と呼ばれます。頻度は、毎日1回(日本時間11時)行われます。自分のウオレットに入れていたAMPLの量が、調整時の価格を基に自動で増減します。これは、AMPLをどのウオレットに保有しているかに関わらず起こります。(厳密に言えば、DEX(=ERC20トークンのウォレット)及びAMPLがインテグレートをサポートしている中央集権型取引所(KucoinとBitfinex)のウオレットが調整される。) 

 この結果として、「供給量が増減したとしても、供給量に対して自分が保有するAMPLの割合は変わらない」状況がもたらされます。このリベースの裏に隠された更なるカラクリは追って解説します。

 ➂AMPLの狙い
 AMPLがリベースを行う狙いは、端的に言えば、「ビットコインとの連動からおさらばする」ためです。 

 「BTCの価格が下がると、アルトが暴落する。腹立つ。」という体験をしたことがある人は多いと思います。AMPLは、供給量の増減システムを組み込むことにより、急激な外的な需給変化に影響を受けないようにし、BTCの価格パターンから乖離するエコシステムを作ることを目指します。

 供給量の増減は、結果的に価格安定に寄与するものであることを踏まえると、AMPLはステーブルコインのような印象を受けたかもしれません。しかし、価格をドルにペッグさせているわけではないので、短期的な価格の増減は大いにあり得ます。一方で、全てがスマートコントラクトで調整されるために、ステーブルコインが抱える「常に担保となるドルを保有しなければならない」という課題は回避しています。

 運営は、AMPLについて、「ビットコインとステーブルコインのベストな部分を統合した新たな分散型資産だ」と説明しています。
 

(2)チームメンバー
 チームの中心は2名の共同創設者兼エンジニアです。

①Evan Kuo

  エヴァンはUCバークレー(米国のトップスクールの一つ)でメカニカル・エンジニアリングとコンピューター・サイエンスを専攻し、ロボティクスの研究をしていました。
 前職は、2014年に自ら起業したPythagorasというピザのサービス会社のCEOです。連続起業家です。

➁Brandon Iles
   ブランドンは、5年間、グーグルのサーチランキング関係の仕事をした後、Uberのランキング関係のチームに所属していました。コンピュータアルゴリズム関係の専門家と言えそうです。(米国ライス大学コンピュータ・サイエンスの大学院卒業)

 このほか、次のようなエンジニアが働いています。
Ahmed Naguib Aly・・・元Google勤務のソフトウェア・エンジニア。高校時代に国際情報オリンピックで銅メダルを獲得
Nithin Krishna・・・南カリフォルニア大学修士卒で、大学の研究室でビックデータ等のリサーチエンジニアとして活動。

また、経営アドバイスを行うアドバイザリー・ボードとしては、
Sam Lessin・・・Facebookでプロダクトマネジメント部門の副社長経験あり。
Niall Ferguson・・・スタンフォード大学フェロー。日本では、「劣化国家」や「マネーの進化史」の著者として、知っている方もいるかもしれません。
など、なかなか重量級が揃っています。

(3)AMPLの価格・供給量の推移
 まず、下が価格の変化です。
 6月まではおおむね1ドルで安定して推移していましたが、7月に入って、急激なボラティリティが生まれ、瞬間的に4ドル近く上昇しました。

 下は、供給量の変化です。価格の上昇に伴って、急激な供給増が起こっています。これにより、AMPLの時価総額は、6月21日の200位圏外から、記事執筆時点(2020年7月20日)には41位まで上昇しました。(CoinMarketCap調べ)

(図の出典は、ampleforth.org/dashboard)

 

2.AMPLへの投資について

(1)資産増幅メカニズム(なぜ先行者は儲かるのか)  

 なぜ、AMPLはこれほどまでに海外投資家を惹きつけたのか。それはリベースがもたらす恐るべき(?)資産増幅のメカニズムがあることに関係しています。

 ①Rebaseの計算式  

  そもそもリベースはどのように計算されるのでしょうか。計算式は、(リベース時の価格-ターゲット価格)÷ターゲット価格÷10×100%で計算されます。ターゲット価格は1.009(2019年の1ドルの現在価値)ですので、ほぼ1と考えて差し支えありません。なお、「リベース時の価格」は厳密にはChainlinkのオラクルレート(取引高で加重平均した価格)が採用されるので、例えばCoinMarketCapで表示されるリベース時のAMPL価格とはズレがあります。

  これだと分かりにくいので、ざっくり言えば、調整時の価格が   

 ・1.2ドル・・・約2% 

 ・1.5ドル・・・約5%

 ・2.0ドル・・・約10%

 ・2.5ドル・・・約15%

 これだけの量の保有枚数が毎日増えることになります。感覚的には、0.1ドル上がるごとに次の日の保有枚数が1%増えるイメージです。ただし、例えば価格が3ドルから2ドルに下がったからといって、次の日のリベースで供給量が減少することはありません。

 単純に1ドル以上なら供給量プラス、1ドル未満なら供給量マイナス、という調整が行われるので、価格の下落に関わらず、1ドルを上回る限りは常に翌日の保有枚数が増えていきます。

 ➁リベースされるごとに下がる損益分岐点  

 普通、2ドルで買った仮想通貨は、価格が2ドルを下回ると損をします。この場合、損益分岐点は2ドルになります。しかし、AMPLに限っては、この当たり前の論理が成り立ちません。

  例えば、Aさんが2ドルでAMPL100枚、計200ドル分AMPLを買ったとします。AMPLが10日間、2ドルを保ったとしましょう。リベースの複利効果で、単純計算では10日後には保有AMPLは259枚まで膨れ上がります。

  そうすると、Aさんの損益分岐点は、0.77ドルになります(259✖️0.77=200)。つまり、2ドルで買ったにも関わらず、Aさんは0.77ドルに下落するまで儲けがあることになります(1ドルを下回った時にはリベースで保有枚数が若干減るわけですが、ここでは無視します)つまり、1ドルを超えている限り、日を経るごとに損益分岐点がどんどん下がっていく、という現象が起こります。場合によっては、当初「2ドルで買って高値掴みをしちゃった!」と思っていても、いつの間にか、1ドルで売っても利益が出ている、という可能性もあるわけです。

 あるいは、こんな言い方ができるかもしれません。1ドルを上回っている限りは、たとえ通貨が下落しても、損失を抑えることができる、と。例えば、2ドルの時に100枚買ったとします(資産200ドル)。これが次の日に1.8ドルまで下落したとしましょう。1日で10%減なので、かなりの下落です。通常であれば、資産は180ドルに減少するので、20ドルの損失となります。ところが、AMPLの場合、リベースで保有枚数が増えていることを考慮しなければなりません。1.8ドルであればリベース時に約8%増えますので、100枚が108枚に増えています。そうすると、現在の資産は194.4ドル(108×1.8)ですので、損失は5.6ドル。通常の仮想通貨であれば20ドル損失していたところを、その4分の1近い損失に抑えられていることになります。この損失削減効果は、価格が高い時ほど大きくなります(リベース時の保有枚数増加が大きいため)。場合によっては、価格が下落してもプラスになっている、ということがあり得ます。これは、価格だけを観察していても、絶対に分かりません。

  これらのことは、投資家にとって、「1ドルを超えている限りは、通貨を保有してみようか」という動機を促すと考えられます。「早く購入すればするほど、毎日リベースで資産が増える(損益分岐点が下がっていく)」という言い方もできるかもしれません。同じ価格で入ったAさんとBさんの損益分岐点が違うという不思議な現象が起こります。 これはある種の典型的なネズミ講的メカニズムであり、FOMOを通じた早期購入を促すと考えられます。こうした点が、海外の投資家を惹きつけたことは想像に難くありません。

(2)Rebaseで見過ごされがちな事実

 ①理論上、リベースのマイナスは限定的・プラスは無限大

「1ドルを下回ったら、リベースで保有枚数が減る。この場合、資産が減るのでリスクが大きい」と思う方もいると思います。

  これは一面では事実ですが、1ドル未満と1ドル超では、置かれた環境が異なります。どういうことか?

 当たり前ですが、ある通貨の価値が0を下回ることはありません。AMPLの理論上の最低価格は0ドルです。では、(非現実的ですが)ほぼ0ドルの時のリベースによるマイナスはいくらか?  先ほどの式に当てめると、約-10%です。0.5ドルだと、-5%になります。

 考えると当たり前ですが、実は、リベースでマイナスされる時は、それほど大きな値になりません。一方で、例えば今日の価格は約3ドルですので、リベースによる保有枚数は約20%の増加となります。仮想通貨は1日20%上がれば爆上げだと感じますが、AMPLの場合、一見して価格が動いていなくても、裏でこのレベルの爆上げが頻繁に起こっているわけです。 

 このように、「リベースによる資産増の効果は、資産減の効果よりも、潜在的な幅が大きい」という特徴があります。(もちろん、複利効果により、1ドルを下回る日が何日も続けば、マイナス幅は増幅しますが)

 ②長期的に供給量はどうなるか

 ところで、AMPLのターゲット価格が1ドルで、その前後の価格では、供給量はプラスにもマイナスにもなり得るのならば、市場供給量も長期的には不変なのでは?と思う人もいるかと思います。これは綺麗に1ドル未満と1ドル以上を同じ長さで行ったり来たりしている限り当てはまるかもしれません。

 しかし、本記事の一番上の右図(AMPLが想定する供給量の変化を時系列で示した図)にも表れているとおり、少なくともAMPLの想定するケースでは、長期的にみて、需要の増加による供給量増加の機会の方が、需要の減少による供給量減少のショックの機会より多く、かつ激しい、ということが示唆されます。価格がある時1ドルを超えてしばらく経過した後に再び1ドルに戻ったとしても、それまでの間は供給量は増え続けていますから、以前の1ドルとは違った姿になっている、ということです。(供給量の増加こそが、AMPLの成功を意味するので、ある意味、こうした図を運営が作るのは当然のことかもしれません。)

 供給量が増加するということは、長期ホルダーの視点から見れば、リベースによって保有枚数が増えている、ということですので、仮に現在の価格と未来の価格が同じであっても、個人単位で見た利益は増えている、ということになります。

 以上のように、AMPLは価格だけを見ていては適切な評価ができず、供給量の伸びと併せて見ることによって、プロジェクトの成功・自身の利益を評価することになります。  

(3)Geyserにデポジットするのと単純ホールド、どちらが得か

 AMPLの運営は、6月下旬にGeyserと呼ばれるステーキングプログラムの開始を発表しました。

 これは、DEX(分散型取引所)であるUniswapに流動性を供給(ETHとAMPLを1:1の資産でpoolする)した上で、当該資産をAMPLが作ったGeyserのサイトからデポジットすることで、利息をもらえるというものです。

 本記事の執筆時は、APY(年利換算利息)が308%となっています。銀行の金利(0.01%でしたっけ?笑)を考えると、驚異的です。また、長期でステーキングすることにより、下図のReward Multiplierという数字が最大で3.0まで上がります(つまり利益が3倍になる)。なお、Geyserにデポジットする場合であっても、リベースの恩恵は受けることができます。

 Geyserは残り81日間(9月末まで)の限定サービスですので、少なくともこれが終わるまでの間、一定程度のAMPLがUniswapにプールされ、ホールドされる可能性があります。(少なくともAMPLが7月になって急激に上昇したのは、このプログラムが開始したからだと思われます。)

 

 また、Uniswapに流動性を供給すると、0.3%の手数料も得ることができます。

 以上をまとめると、最大で「AMPL価格増+リベースによる保有枚数増+Geyser利息+Uniswap流動性報酬」の4倍美味しい仕組みになっています。

 なお、通常のステーキングは、参加者が増えるほど自分の利益が少なくなる傾向にあるので、「周りに知られる前にこっそりやる」が原則ですが、私の推測では、このステーキングは、Uniswapにプールされた総量とAMPL価格により決定されるので、どんどんプールされた方が利率も上がりやすいのではないかと思っています。実際、私がGeyserをしていた頃(価格1ドル台)は、利率は200%程度でしたが、執筆時点(価格3ドル弱)では300%となっていることから、必ずしも参加者数の増加が利率の減少につながっていないと推測されます。

 では、Geyserに参加する方が得なのか、というと、必ずしもそうと言い切れないのが、この仕組みの難しいところです。なぜなら、Uniswapの流動性供給は、常にETHとAMPLの量を1:1にするように調整されるため、どちらかの価格が増加した場合、増加した方の通貨から、もう一方の通貨に資産が振り分けられるからです。

 つまり、AMPL価格が仮に増加した場合、UniswapにプールしたAMPLの枚数が減って、ETHの枚数が増えます。AMPLの枚数が減るということは、リベース時にもらえる追加枚数が減ることを意味します。現在のように価格が3ドルの場合、1日20%もの保有枚数増がありますので、この一部がマイナスになることは、投資家の潜在的利益を低くします。

 

(結局、どのくらい儲けられるのか?)

 ほぼ同額のAMPLを①単純ホールドした場合、②Geyserに預けた場合、の二つの戦績を公開している海外投資家のケースでは、①が4030%増加、②が681%増加となっていました。(6月27日から7月21日までの戦績)。

 つまり、単純ホールドしたら資産が40倍になった一方で、Geyserに預けると約7倍にしかならなかったということです。恐らく、この方は、Geyserの利息分については計算していないと思われるので、若干、②を過少推計していますが、それでも、低価格で参入した層にとっては、単純ホールドの方に分がある結果となっています。

 Geyserで年利換算300%超と聞くと、一見してすごい利率に感じますが、日利ベースに直すと1%を下回ります。一方でAMPL価格3ドルの時は1日で20%保有量が増えるわけですから、価格が高い時には、いかにリベース効果が大きいかが分かります。しかも複利で増えるので、価格が維持されている限り、増加割合は非常に大きくなります。

 以上から、自分がAMPLを購入した時から、EHT建てAMPL価格が安定しているならば、Geyserに預けた方が有利、購入時から時価総額が大きく変動していくならば、単純ホールドが有利と言えそうです。いずれの方策が正しいというものではなく、状況によって最適戦略が異なることになります。なお、これの詳細については、別途、この記事で粗々の推計を試みています。

 いずれにせよ、投資成績を見てわかるとおり、AMPLの価格は、投資家の利益を全く反映していません。何も知らない人は、AMPLの価格だけを見て、「1か月で価格が1ドルから3ドルになったのか。でも暴落もすごい。投資するのは危険。」と思うかもしれませんが、投資家の利益は、実際には綺麗な上昇カーブを描きながら40倍になっています。外から見える景色と、実際に投資家にもたらされた利益は異なる、という点に留意が必要です。

(今のタイミングで参入するのは遅いのか)

 価格については、どういう動きをするのか全く予想できませんが、参考まで、執筆時点(7月21日)でどれだけAMPLホルダーがいるかをみると、約9,100人です(etherscan調べ)。時価総額が近いBATは324,000人となっています。7月に入って急速に注目を浴びたので、ホルダー数自体は他のERCトークンと比較する限りにおいて、現時点ではあまり多くないと言えます。

 

(4)今後の先行きについての個人的見解

  AMPLを中央銀行の金融政策になぞらえる人もいますが、私個人としてはこのメカニズムには懐疑的です。投機需要が増える限りは、価格は増加又は維持されて、結果的に先行者の利益が大きくなる可能性があるのは否定しません。しかし、仮に投機が減れば、供給量が増えた以上、それを補う購買需要がなければ価格が下がっていきます。そして1度1ドルを下回れば、今度はリベースで保有枚数自体が減っていきます。保有枚数が減っていく通貨は、経済学的に見れば、1枚当たり単価は増価しますが、果たして、そんな通貨を欲しがる人はいるでしょうか?十分な時価総額を達成できないうちに1ドルを下回ったが最後、均衡価格は1ドルではなく0になる可能性すらあるかもしれません。この点は、さまざまな意見がある点だと思います。

 また、AMPLが担保しているのはあくまで「供給量に占める個人の保有枚数割合が不変であること」であって、「資産そのもの」ではないことに留意が必要です。価格が上がれば含み益がべらぼうに上がるということは、裏を返せば価格が下がれば損失は大きくなるということです。安定を約束された資産にはなっていません。

 仮にAMPLが十分な時価総額を達成できて、価格が安定した場合、このプロジェクトは有望なものになると思われます。仮に本通貨が大変人気となり、1ドルを少し上回るくらいの額で推移を続けることができれば、BTCと肩を並べるくらいになる可能性もゼロではありません。

 しかし、現時点の非常に低い流動性の下では、投機が先行してねずみ講的な戦いになっていることは否めず、今は皆が得をしているけれども、どこかの段階で損をする人が現れる、という構造になっているように見えます。供給量が増える限り、その価格を一定程度維持する(少なくとも毎日のリベースでプラスになる水準を維持する)ためには、誰かが新規参入して買い支える必要があるからです。

 ただ、現状で言えば、毎日、旺盛な投機需要があるため、恐らく既に参入した人はほぼ全員勝っている状況でしょう(しかもつい1週間前の参入ですら、3日で資産2-3倍とかのレベル)。現時点では、Geyserのインセンティブや、寝て起きたら資産が増えることによる売却抑制効果が、新規投資家の参入量と比較して上回っているためです。

 なお、この手の儲け話を目にした人の中には「これは内緒にした方が自分の儲けが増えるのでは?」と思うかもしれません。私の理解では、上述のとおり、今の儲けのメカニズムが維持されるのは、常に新規参入者が増え続けることが前提になります。したがって、自分の儲けは、自分の後にくる新規参入者がどれだけいるかにかかっているということです。私がこのプロジェクトを知った時にネズミ講にそっくりと感じたのは、それが理由です。つまり、投機家の最適戦略は、「このプロジェクト、いいんだよねー」と紹介し続けることになります(今の時点なら本当に資産が増えまくっているので、それは必ずしも間違いではないでしょう笑)。

 今日の2ドルと1ヶ月後の2ドルは、供給量が全く変わってきます。仮に価格が1ヶ月間2ドルを保つことができた場合でも、以前と同じ2ドルを維持するためには、今日とは比べものにならない買い需要が必要になります。ネズミ講の原則のとおり、利益を得るには早い者勝ちということですね笑。先行者は、今の価格がある程度維持される限り、毎日爆上げレベルの資産を増やしているのですから。

 

3.AMPLを購入する方法 

 最後に、AMPLを購入する方法ですが、中央集権取引所では、KuCoinかBitfinex、DEXではUniswap等で購入できます。

 取引高から見ても、Uniswapで買うのが手ごろに思えます。Uniswapならば、USDT,USDC,ETHなど多数の通貨から交換することができます。(なお、Uniswapは、仮にAMPLを買わないとしても、使ってみることをぜひオススメしたいです。Metamaskウオレットと接続することで、本人確認等もなく、非常に簡単に始めることができます。Metamaskウオレットは、Braveブラウザに内蔵された「仮想通貨ウオレット」から簡単に作成することができます。)

 購入に際しての留意点として、リベースがある日本時間11時の直後は急激な価格下落圧力がかかりやすい傾向にあります。これは、Uniswap上のAMPL価格はETHとAMPLのプールの割合によって調整されるため、リベースによってAMPL量が増えることでAMPL価格が自動的に下落するためです。これは、通常の中央集権取引所には当てはまりませんが、取引所間の価格差によりアービトラージの機会を生むため、価格が調整されることになります。裏を返せば、こんなところにも投機家の収益機会は転がっているわけですね。

 したがって、もし購入に興味がある場合でも11時前は避けた方が無難でしょう。

 

 以上、長くなりましたが投資に関する本記事のまとめです。

  • リベースによる資産の増加は、AMPL価格が1ドルを大きく上回る場合は、非常に大きい。(3ドルだと毎日20%増える)
  • リベースで保有枚数が増えるごとに、自己の損益分岐点は小さくなる。このため、プロジェクトや投資の成功は、価格と供給量(保有枚数)の両面から判断する必要がある。
  • 1ドルを下回った場合のリベースのマイナス幅は、最大でも1日-10%にとどまる。
  • Geyserに参加することにより、年利換算300%超の収益機会があるが、単純ホールドと比較して、必ず収益が多くなるわけではない。
  • 6月下旬に参入した投資家は、3週間で約40倍のリターンを得ている。(表面的なAMPL価格は、3倍も上がっていない)
  • 7/21現在のAMPLホルダーは9,100人であり、BAT(324,000人)等と比べると、手垢がついていない。
  • 今の1ドルを大きく上回る状況は、新たに入ってくる投資家と、種々のインセンティブにより売却を抑制している投資家の2種類によって維持されている。今後同じように収益を得られ続けるかは、投機需要がどれだけ大きくなるかに依存する。
  • リベース直後に価格下落圧力があるため、11時の直前は買わない方が無難
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