三権分立の脆弱性を修正する(Part III, 2/2):レイヤー間の制御と矢印の向き

三権分立の脆弱性を修正する(Part III, 2/2):レイヤー間の制御と矢印の向き

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3レイヤーサイクルで、レイヤー間制御方向と階層構造について考えてみよう。下の例では、民主主義は国民主権であるから、政府は(本来ならば)国民に制御されている(はずである)。

よって、制御を表す矢印の方向として「国民」→「政府」となる。だが、これだけでは三権分立の実質的な二層構造と同じである。

現在の実質的な二層構造

「世界」は、上述の三層構造においては最上層(メタレイヤー)として二層の上に乗っている。国際情勢の悪化による貿易制限や戦争、災害や資源枯渇による生活への影響などという形で、「世界」は私たち国民の生活を制限し、影響力を行使する。だから通常の場合、矢印の方向(制御シグナルを伝える矢印の方向)は「世界」→「国民」となる。

一方、「政府」は三層構造では最下層(オブジェクトレイヤー)である。しかし、「政府」は、個人や民間では持ち得ない、集約された大きな力と大きな予算を行使できる。つまり、外交や軍事力によって国際情勢に介入したり、ダムや防波堤を作ったり排出ガス規制を行ったりすることで、最上層である「世界」に介入できる。よって矢印の方向は「政府」→「世界」となる。

これにより、下の図のように、「世界」「国民」「政府(立法・行政・司法)」の3つのレイヤーが循環的にお互いを制御する3レイヤーサイクルが成立する。

制御と被制御、メタレベルとオブジェクトレベルが、無限階段のように重なり合うこの構造により、「外部」も「メタのメタ」もない状態での相互制御構造を、(この状態が理想なのかという議論とは別に)とりあえずシンプルに表現することができる。

新しい項=「世界」を導入して、2レイヤー(アサイクル)を3レイヤーサイクルに拡張

各レイヤーの展開。「世界」は自然や国際社会などの外部性や環境に相当する政府&国民以外のアクター

3レイヤーサイクルによって、王様もなく、外部もなく、メタのメタもない状態が表現可能となる。その理由は、「局所的にはメタとオブジェクトの上下関係が決まるが、全体としては決まらない」という、上下関係(制御と被制御の関係)が循環する構造をもっているからだ。ただし、このような構造は、制御チャネルの方向(矢印の向き)が一貫している時にだけ成り立つ。

たとえば、緊急時には、例外的にこの表現で描いた制御チャネルを表す矢印の方向が逆になる場合も考えられる。2020年からのコロナ禍のように、外出禁止やマスク着用など政府が国民の行動を制約する必要がある場合もあり得る。

例外的に矢印の方向が逆転する場合

この表現では、そのとき「国民」に対して、「政府」と「世界」の二者が矢印を向けることになる。この場合、国民が「一方的な弱者」=制御されるだけのレイヤーとなるため、3レイヤーサイクルの制御の循環構造は崩れてしまう。

この場合、「政府」は誰にも制約されない「王」になってしまう。国民と世界を一つの存在とみなすと、「政府」が一方的に「政府」→「国民、世界」という支配関係を持つことになる。実質的な二層構造が出現する。一方、「国民」に注目すると、「政府・世界」をあわせた存在から、「国民」は支配されているとも解釈できる。この見方でも、「政府・世界」→「国民」という二層構造になる。どちらにせよ循環による相互制約は破綻する。

緊急時・例外時の二層構造化(「政府」➡「国民・世界」)

緊急時・例外時の二層構造化(「政府・世界」➡「国民」)

歴史的にみて、こうした権力分立の一時的であるはずの不均衡は、永続する傾向があり、様々な権力の腐敗につながってきた。この問題については次回扱う。

この記事の続き

Credits:
原案:西川アサキ
草稿執筆:古谷利裕
同時編集:VECTION
作図:掬矢吉水

冒頭画像
Two Beasts and a Human Mask within a Circle 1727 Gaetano  Piccini Italian

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