三権分立の脆弱性を修正する(Part II):三権分立は2レイヤー構造である

三権分立の脆弱性を修正する(Part II):三権分立は2レイヤー構造である

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1.国民と政府の関係から捉え直すと三権分立は二層構造である

国家の権力を分立する方法として、日本やアメリカ、欧州各国などで用いられている三権分立の構成は、行政、司法、立法の「三権」の他に、それら国家機構の行動を制御する評価の主体、つまり主権者としての「国民」を含んでいる。

ここで、実質はどうあれ、建前上の主権はあくまで国民にある。つまり、国民まで含めて描いた三権分立の形式は、図の右側のように、政府(ここでは、行政、立法、司法の三権をまとめたもの)の上位に国民が配置される、一方向的な「二層(2レイヤー)構造」であると言える。

(左) 形式的・法的な権力分立 / (右) 実質的な二層構造

2.二層(2レイヤー)構造の問題点

ただし、先に描いた図はあくまで理念上の構造で、実質上の権力構造においては黒矢印が反転し、政府や既得権益層に属する一部国民によりその他の国民が支配されているという状況に陥っていることも多い。

実は、国民と政府の権力関係(黒矢印の方向)は、どちらを向いていたとしても、それが一方的であることには問題がある。政府が国民を一方的に支配することは、自由や人権といった価値観の否定につながるし、逆に国民が政府を一方的に支配すること(直接民主制)もまた、ポピュリズムによる社会の暴走を引き起こす懸念がある。レイヤーが2層のままでは、国民が王か、政府が王か、どちらかになる。黒矢印の方向は反転(どちらか一方向)しかあり得ないので、この問題は解決されない。

もちろん、丁度よい双方向の制御関係を保てれば理想的だが、先に権力分立の条件(2)(3)として、「図式の外側にその丁度よさを判定するさらなる中立的なレイヤーはない」としているので、この二層構造では、極端な方向性が出現しても、それが是正されるには、ただ期待するしかない。

この記事の続き

原案:西川アサキ
草稿執筆:古谷利裕
同時編集:VECTION
作図:掬矢吉水

画像:Christ Blessing, Surrounded by a Donor Family
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/437466

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