夜の畑
この間の満月の日に初めて、夜の畑に行ってみました。
街灯がちらほら光る丘を車で登っていたとき、青緑に光りながらゆっくりと地上へ降りていく不思議なものを見ました。
(多分隕石かなんかだとおもわれます)
車を降りて畑へ向かう途中の道のようで道でないような道は、まだ草刈りが済んでいないので暗くてよく見えないところをがさがさと音を立てて進んでいきます。
開拓途中の私たちの小さな畑ではこの間植え替えてきたイチゴたちや、勝手に生えてきたスギナなどの葉の先にたくさん雫がついていて、脚が濡れてしまうほどでした。
田んぼに住むさまざまな種類のカエルたちのなきごえと、お隣の畑の人が設置した電気柵から聞こえるかすかな電気の音、ときたま生き物が畑じゅうに撒かれた枯れ草の上を動く音、そしてところどころ雲の合間に星たちがちりちりと輝いているのが見えました。
畑に暮らす小さな茶色いバッタたちは、昼間よりたくさん姿をあらわして(いた気がしただけなのかもしれないけれど)、トマトの苗やサツマイモのつるの近くでぴょんぴょこしたり、かれくさの間で休んだりしていました。
あまりにも昼間と違う畑の様子にわたしは、想像以上に楽しくなってしまったのでした。
毎日来ているのに、夜には脚が濡れて、昼間には聞こえてこない音がして、灯りがなくてもかすかに足下のかれくさが見えること、バッタたちがこんなにも楽しそうにしていることを知らなかったのです。
わたしは毎日ここへ来て草を刈ってみたり畝を作ってみたりして、
なんだかなんでもこの場所のことを知っているような気でいたけれど
この場所にほんの一瞬、来させてもらっているだけなのだと感じたのでした。
この間、この畑で元気に育っていたじゃがいもたちを夜の間にイノシシに掘られてしまってけっこう落ち込んだのだけれど、うっすらとだけ視界が利くこの環境のなかでイノシシたちが地面を掘る鼻の音や息づかい、足音を聞くことができたのなら、それはきっと、とてつもなく野生味と迫力のあるものであったに違いありません。
いつか、寝袋を手に入れたらここで寝てみたいなと思ってみましたが、この間草を刈っていたときにムカデを見かけたのを思い出しました。(しかも一度ではない)
きっとこの夢は、叶うことはありません。。