別れのワイン ~Any Old Port in a Storm~ Final
みなさんこんにちは。今回は、私ならではのワイン目線で「刑事コロンボ」の「別れのワイン」と言う作品についてあれこれと語るシリーズのついに最終回となります。途中何度か挫折しかかりましたが、やり遂げると言う自己満足のためにここまで頑張りました(笑)。それではファイナル行ってみましょう(第一弾、第二弾、第三弾はこちらです)。
まずは、コロンボ刑事がセラー内で年代物のワインを手に取るシーンです。古いワインは物にもよりますが、澱が瓶内に溜まっているので、ボトルを持ち上げるだけでも澱が舞ってしまいます。また、振動自体もワインにはあまり良い影響を与えないので、特別な理由がない限りは、極力ボトルには触らないようにします。仮に触る必要があったとしても、振動を少なくし、澱が舞わないように静かに触ります。
しかし、コロンボ刑事は堂々とボトルを持ち上げています(笑)。しかも、軽く振るような仕草まで見せています(笑)。さすがにカッシーニ氏もこれには注意するかと思いきや、特に嫌な顔もせずにそのワインについて普通に答えています(笑)。カッシーニ氏の懐の深さ?が窺える場面でした(笑)。
続いては、コロンボ刑事とカッシーニ氏がレストランで食事をするシーンです。コロンボ刑事がソムリエを呼ぶのですが、その時にソムリエとは言わずに何か別の言葉を言ったように聞こえました。そこで調べてみると、ソムリエ以外にも英語では「wine steward」と表現するそうです(「steward」は執事や給仕を意味するそうです)。
そして、その後にレストランのマネージャーが「白ワイン担当で?それとも赤ワイン担当?」と聞き返すのですが、まさか白ワインと赤ワインそれぞれに専属のソムリエがいるとは驚きでした(笑)。
その後食事のシーンでは、コロンボ刑事が料理に合わせて選んだワインについての話になるのですが、まず最初に出てくるのは「牡蠣にモーゼル」です。モーゼルとはドイツのワイン銘醸地の事であり、恐らくはこの地方の代表品種であるリースリング種の事だと思われます。この会話の中では牡蠣の調理方法について触れられていないのでなんとも言えないのですが、この組み合わせは斬新だと思います(気になる方は実際にやってみて下さい(笑))。実際に、カッシーニ氏も「牡蠣にモーゼルとは思いもよらない」と言っています(良い意味だと思われますが)。
次に合わせたのが「肉とジンファンデル」です。ジンファンデルは、前回のシノニムの話の中にも出て来たカリフォルニアを代表する品種です。ここでも肉料理の内容については言及されていませんが、よくバーベキューなんかと合わせたりするのでこのペアリングはありだと思います。
まあ、仮に牛肉料理であるなら、カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンと言う王道のチョイスもあるのですが、ここは敢えてジンファンデルと言う変化球を選んだところが渋いですね(笑)。そしてこのチョイスは、カリフォルニアを代表するジンファンデルと、カッシーニ氏の故郷であるイタリアのプリミティーヴォが実は同じ品種であった事を予言しているかのようにも見えます(さすがにそれはない(笑))。
そして遂に、この物語の核心であり作品のタイトルにもなっている「ポートワイン」が出て来ます。ここからはネタバレになりますが、このポートワイン、実はコロンボ刑事がカッシーニ氏のワインセラーから勝手に持ち出した物なのです(これは窃盗ですね(笑))。カッシーニ氏は殺人の為にワインセラーの空調を止めたのですが、この時カリフォルニアは40度を超える気温になったため、ワインが熱によるダメージを受けていました。
コロンボ刑事は、この熱によりワインが劣化する事を知り、それを証明する為にあえてカッシーニ氏のセラーにあったポートワインを持ち出したのです(とは言ってもやはりこれは窃盗です(笑))。そして、味に敏感なカッシーニ氏自らがこのポートワインの劣化を指摘してしまった事で、結果的に自らの罪を認める事になったのです。
とは言え、高温化に置かれたのは数日だけで、劣化はごくわずかだと思われます。実際に、カッシーニ氏以外の人は誰もこのポートワインの劣化に気付いていませんでした。カッシーニ氏のこの鋭すぎる味覚は、職業的には優れた能力かもしれませんが、普通に生活する上ではいろんな物が気になってしまい逆に苦労するかもしれませんね(笑)。
この後、カッシーニ氏は自分のワインセラーにあったワインを味見する事なく全て捨ててしまいます。その中には、シャトー・ディケムの38年物もありました。このシャトー・ディケムと言うワインは、世界最高峰の貴腐ワイン(甘口のデザートワイン)としても知られている代物です。そんな高貴なワインを味見する事なく捨ててしまうとは・・・、私だったら取り敢えず味見ぐらいはしてみますね(笑)。そして恐らく、私の味覚だったらワインの劣化そのものにも気付かないと思うので、十分に楽しめるはずです(笑)。
さて、いよいよ最後のシーンになりました。カッシーニ氏とコロンボ刑事が車の中でまさに別れのワインを飲むシーンです。この時、コロンボ刑事が用意したワインを見てカッシーニ氏は 「モンテフィアスコーネ、極上のデザート・ワインだ」と言います。このモンテフィアスコ―ネと言うのはイタリアの都市の名前なのですが、恐らくこの地域で造られている「エスト!エスト!!エスト!!!ディ・モンテフィアスコーネ」と言うワインの事だと思われます。
しかし、実はこのワイン、通常はほとんどが辛口なのです(笑)。中甘口も造られてはいるのですが、極上のデザートワインとは言えません(笑)。それこそ、先ほど捨てたシャトー・ディケムの方がよっぽどふさわしい訳です(笑)。まあ、このあと「この場にふさわしい、最後の宴に」と言っているので、今の自分にはこのワインの方が似合っていると言う事なのかもしれません。
いかがでしたか?かなり時間は掛かりましたが、ようやく最後までたどり着く事が出来ました。最後までお付き合い頂いた方、本当にありがとうございました!これまでワインにのみ注目していろいろと書いてきましたが、この「別れのワイン」と言う作品は、コロンボシリーズの中でも最高傑作であるとの呼び声が高いので、みなさんもご興味がありましたらぜひチェックしてみて下さい。