欠陥も時として魅力になりうる?!
みなさんは沢庵はお好きですか?
唐突な質問から始まりましたが、私は一番オーソドックス?な黄色の沢庵が大好きです。お弁当なんかで見かけると何故かほっとしますし、お茶漬けとかにして食べても美味しい、なかなか気が利く奴です(笑)。
そこで今回は、沢庵について・・・
ではなくて(笑)、ここから日本酒の話へと持っていこうと思っています!一体どんな話になるのか、ぜひ最後までお付き合い下さい!
少し前に、日本酒好きな人達が集う日本酒会に参加させて頂いた事がありました。どんな会かと言うと、参加者はそれぞれ1本ずつ日本酒を持ち込んで、それをみんなで飲みながら食事を楽しむ、と言う割とカジュアルな雰囲気の集まりでした。
色々な日本酒が勢揃いして、順番に味見をしながら「これいいね」、「それもいいよね」と和気あいあいとした雰囲気で会が進行していく中、あるお酒が登場しました。
それは、山形の蔵元が造った日本酒でした。皆さん試飲のペースが早いので、私は少し遅れ気味になっていたのですが、先にそのお酒を試飲した方々が次々にこうコメントしたのです。
「これは沢庵の香りがする!」
私は、そのコメントを聞いた時に内心「大丈夫かな?」と思いました。何故なら、沢庵の香りは日本酒にみられる老香(ひねか)と呼ばれる劣化臭の1つだからでした。
ちなみに老香とは、貯蔵中や瓶詰後の日本酒に出てくる香りで、高温で保存されていると顕著に出やすいと言われています(飲んでも大丈夫ですが、本来意図した造り手の味わいではありません)。
私も急いでグラスを空けて、その山形のお酒を注いでもらいました。そして、香りを嗅ぐと確かに沢庵の香りが!いぶりがっこ程のスモークの香りは感じませんでしたが、少し香ばしさを感じるまさに沢庵の香りがします。
元々こういう特徴のある日本酒なのかもと思い、ネットで調べてみましたが、どのサイトにも沢庵の特徴は書かれておらず、グレープフルーツの香りに少し若草のニュアンス、と言うようなコメントしか見つからないので、恐らくこれは老香である事は間違いなさそうでした。
私はこの事を指摘するべきか悩みつつ、しばらく会の様子を見守っていました。何故なら、初めて参加した会だったので知っている参加者がいなかった事、指摘をすればこの日本酒を持って来てくれた人を少なからず不快な気持ちにさせてしまう事、そして、和気あいあいとした楽しい雰囲気を壊したくなかったからでした。
私がどうしようかと考えていると、ある参加者がこうコメントしたのです。
「この日本酒はクセがあって面白い、美味しいね!」
すると、他の参加者たちも、「なんかクセになる味わいだね、俺は好きだな~」とか、「まさに沢庵やいぶりがっこと合いそう!」「クリームチーズやポテトサラダなんかも良さそう!」と好意的な評価をしたのです。
これは一体どういう事なのでしょうか?
恐らく、参加者はこの老香の事を知っていて、忖度してわざと好意的な評価をしたのではなく、純粋にこの沢庵の香りのする日本酒を気に入った感じでした。つまり、欠陥の部分がむしろ好意的に受け取られたのです。ここが今回の一番興味深いところです!
我々は、完璧にまとまり過ぎている物に対しては、時として物足りなさや飽きを感じる事があります。例えば、音楽でもきれいにまとまり過ぎているよりも、途中にわざと不協和音(テンション)を入れる事でそれがアクセントになって、より人々を惹きつける作品になる事があります(度々音楽ネタ挟みます(笑))。
今回の場合は、造り手が意図的にいれた香りではありませんでしたが、結果的にそれが良いアクセントになり、参加者を惹きつける事になりました(造り手としたら、本来意図した味わいが届いていないので高評価をもらっても複雑な心境だとは思いますが・・・)。
いかがでしたか?こういう出来事を体験すると、やはり一番大事なのは周りの評価ではなくて、自分がそれを好きか嫌いか、と言う部分なんだと改めて気付かせてくれます。実際、沢庵好きの私もこの日本酒に関しては、沢庵食べながら飲んでみたいって思いました!今回は、そんな沢庵にまつわる日本酒のお話でした。めでたし、めでたし(笑)
※今回は、たまたま老香が好意的に評価されたので良かったのですが、本来は老香が出ると言う事は望ましくない事です。日本酒を購入する時は、ちゃんと冷蔵管理している酒屋さんで買う事をオススメします。また、ご自宅でも冷蔵管理をされると、健全な状態で日本酒を保存する事が出来ます。