日本語版が出ていないが、ビットコインを考える上で役に立つ書籍の紹介をしていきたい。

日本語版が出ていないが、ビットコインを考える上で役に立つ書籍の紹介をしていきたい。

ここ数カ月、YouTubeのいくつかのチャンネルでビットコインについて語らせてもらったり、軽く議論させてもらったりした。ビットコイン研究所のYouTubeチャンネルも始動し、YouTubeに良質な日本語のビットコインコンテンツを増やしているつもりである。

動画自体と同じくらいコメント欄もいいコンテンツなので記事に埋め込んだが、できればYouTubeに遷移してコメント欄とともに楽しんでいただけると嬉しい。

コメント欄に反応する動画も撮りたいなと思い、とくにゆるコンピューター科学ラジオの動画のコメント欄がよかったので、無理を言ってビットコイン研究所チャンネルの守屋さんと動画を撮影した。

こんな感じで、YouTuberや一般の視聴者のビットコインに対する反応や、関心を持っているポイント・否定的な意見とその理由にいろいろ触れてきたことで、自分の中では日本でのビットコイン普及に向けた課題の解像度が少し上がった。

ビットコインに否定的な意見は主に数種類しかない

昔であればビットコインは詐欺だ、怪しいといったコメントが多かったが、それはかなり減ってきていて、もはやビットコインは所与の存在になれている。これはかなり助かる変化で、少なくとも「存在自体の否定」から「成功する可能性の否定」へとステージが移ったといえる。(サイレントマジョリティーはまだ「知らないからわからない」だと思うので、知ってもらうことも引き続き頑張りたい)

むしろ、今回たくさん目についたのは次のいくつかの意見だった:

ビットコイン=デフレ=悪、うまくいかない

これはかなり日本独特の意見なのかなと思った。

オフィシャルな文脈でいうと、日本はバブル崩壊後に長いデフレの時代を体験した。ちょうどこれは中国が世界経済に急速に組み込まれていった時期とも重なり、その影響で工業生産が中国に流れ、労働力がだぶつくなどデフレの原因は通貨政策だけの問題ではなかったが、デフレによって雇用や給与に悪影響があったと多くの日本人は体感していたみたいだ。

しかし同時に、ビットコインはインフレ耐性を世界中で評価されて好まれている。世界にはインフレで給与面の改善以上に支出が重くのしかかって苦しんでいる人が今も何十億人といる。もしかすると、隣の芝は青いだけで、単純に時代に適応していかないと苦しく感じるものなのかもしれない。(よく「今は治安が悪いから」と言われるが、統計的にはどう考えても昔のほうが治安が悪かった。このように、過去のことを自分の都合のよいように脚色してしまう癖が人間にはある)

とりあえず、ビットコインはデフレ通貨だからだめ、という意見が日本には多い。それならインフレする世界で稼いで、財産はデフレ通貨で持ってたら最高じゃない?という観点でアプローチしたほうがよいのかもしれないなと思った。少なくとも世界的に見ると、決済手段としてのビットコインは発展途上だが、価値保存手段としてはゴールドに次ぐ信頼を得ているとみてもよい。

金本位制は失敗したからビットコイン本位制も失敗する

自分はあまりビットコイン本位制のような極端な主張はしないほうなので、特にビットコイン本位制を提案しているわけでもないが、金本位制が失敗したことを理由にビットコインも失敗する、という風に考えている人もそこそこいるようだ。

金本位制の失敗については、「金融政策が制限されるから失敗した」というよりは「それなのに金融政策をやりすぎて失敗した」に近いので、金融政策ありきの結論(そりゃ実体のない不換紙幣のほうが金融政策は自由にできるだろう)だと思うが、みんなが重きを置く金融政策は日本のデフレ脱却すら実現するのに30年かかった(公式発表)のだが?というあたりに認知的不協和を感じる。

そもそも金融政策というもの自体が過大評価されているのではないかという感覚もある。例えばエルサルバドルのように自国通貨を持たず、金融政策を推し進めることができない国もあるが、(米ドルのインフレで米国に一方的に搾取されることはさておき)その犠牲はどれほど大きいのかいまいち実感できない。急速に経済成長する側面なら、銀行が貸し出しを増やしにくいと困ることもあるかもしれない。だが、今の先進国はもはやあまり経済成長していない。

金本位制と法定通貨体制の両方を振り返って、どう反論したら説得力がある議論が組み立てられるのかわからないので、ここはもっと考えていきたい。だがそもそも私はビットコイン本位制にしようと言っているわけではない。

税金/会計の問題で使いにくい・既存の支払い手段でいい

これは制度自体の問題であるとともに、納税者・事業者自身がどれくらいしっかりやるのかという選択の問題でもあるので反論しにくいが、どうやって扱えばいいのかのマニュアルを公開したり、ビットコイン決済を会社で進めていくうちに世論を味方につけて、政治にも働きかけていけたらベストだと思っている。表現規制から日本のクリエイターを守れる技術が実際に活躍していれば、それを使いやすくするように制度を変更するよう要請できるかもしれない。

個人の視点では、2028年から日本国内の取引所でのビットコイン売却は税率約20%の分離課税となる見込みだが、店舗決済などでの利用は引き続き雑所得扱いとなる模様である。これにはメリットもあって、雑所得で得た利益(決済した金額ではない)が年間20万円以下なら確定申告は不要なので、ほとんどの場合利用者には金銭的にも実務的にも負担はないだろう。事務コストの面では税務署側も少額決済に起因する確定申告は負担にしかならないので、長期的には少額決済非課税が設けられるとより良いなと考えている。

会計については会計ソフトがネイティブにビットコイン決済を扱えると一番助かるのだが、その分野を総取りするチャンスだと思ってどこか大手がやってくれるとありがたい…。

AI・量子コンピューターに淘汰される

ここは技術的な側面でいえば対策可能なものだと考えているので、すでに反論している内容ではあるし、追加の論点はない。

これはあまり広く語られていないが、AIについて追加するなら、もし人類の生産性がめちゃくちゃブーストされる結果になると、多くの製品の価格が下落するデフレになるかもしれない。(AIによって生産性があまり上がらない資源や商品は、むしろダブついた法定通貨の影響で大きくインフレして帳尻が合うかも。そもそもその余剰は各国政府が医療・社会福祉・戦争・失業対策などのために召し上げるかもしれないので、労働者の生活が楽になるとは限らないが。そもそも国債の返済が実質的価値で莫大になってしまうので、政府の債務が膨れ上がった現状で激しいデフレはもはや政府に許容されない気がするが。)

ビットコインの価値はインフレ耐性だけではないが、本当にそうなればアダプションが遅くなる可能性はあるかもしれない。

正解はない、あるのは見識の広さだけ

別に上記の反論も、私の意見にすぎない。経済的ポジションを取っての意見のぶつけあいが自由市場で、ビットコインは自由市場で値付けされているし、もちろん自分もビットコインの保有やニチビでの活動を通してポジションを取っている。

ビットコインという、今までになかったものについてポジションを取るにあたってできる限りいろんな情報を収集して、自分で考えて判断するのがよいのは言うまでもない。そしてそのための知識は、本や記事を読んだり、自分でビットコインを触ったり使ったりしてみて手に入れるものだと私は考える。その結果、ビットコインの魅力が伝わる人もいれば、それでも合わないと感じる人もいるだろう。

あらゆる手段を駆使していろんな知識を身に着けていくお手伝いができたら日本にもビットコインの味方を増やせるのではないかと思う。そこで本の紹介をしたい。

今の時代、手軽な動画ではなくあえて時間のかかる本を読んでくれる方は、それだけで既にビットコインに並々ならぬ興味を持っているということだと思う。残念ながら、ビットコインにつながる書籍は必ずしも日本語で出版されていない。

上の動画内で紹介しているもの、していないものが混在するが、特に日本語版の存在しない書籍についてこれからSpotlightでその概要を紹介していこうと思う。

紹介したい本リスト

選び方としては、ビットコインの説明をする本というよりは、背景知識としてこれも参考にしてほしいなと思う本をリストアップする。

ここにタイトルと概要だけ並べる。(今後拡充予定)

デフレマキシマリストの意見

The Price of Tomorrow: Why Deflation is the Key to an Abundant Future
Jeff Booth著

現代で主流のケインズ経済学でデフレは悪循環を引き起こす「悪いもの」と捉えられるが、それと同時にデフレは技術革新によって生産性が向上することで自然ともたらされるものである。2020年1月に発売された本著は、AIなどによる生産性向上が加速度的にデフレをもたらすと、インフレによる債務返済に依存した現在のシステムはより一層非効率になっていく(インフレ目的で不要な支出を増やしていく)ことを問題視し、むしろデフレ前提のシステムに変えていくべきだと主張する。

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記事を書いた人

ビットコインが好きです。ビットコイン研究所に寄稿したり、日本ビットコイン産業株式会社で日本のビットコイン普及にむけて頑張っています。

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