MicroStrategy社はなぜビットコインを440億円分買ったのか【インタビュー要点和訳】
ビットコインに関する有名なポッドキャストを主催しているAnthony Pompliano氏が9月16日、自身のポッドキャストにMicroStrategy社のCEOであるMichael Saylor氏を招き、会社の現金の大部分をビットコインに変えるという決断にどのように至ったのかについて質問しました。
このポッドキャストの内容が大変興味深かったので、要点を訳して共有させていただきます。Michael Saylor氏とMicroStrategy社の背景、そこから会社としてビットコインを購入する決断に至った経緯、Saylor氏のビットコイン観など、読んでいただければ新鮮な視点に触れられると思います。
インタビュー抄訳
ー(Anthony Pompliano氏)本日はMicroStrategy社の共同創業者で現CEOのMichael Saylor氏にお越しいただきました。ビットコインコミュニティでは、会社の資産のうち4億ドル以上をビットコインに投じたことが話題になっています。今回はSaylor氏がどのようにMicroStrategy社を創業したか、会社が今年初めに直面した「5億ドル問題」とは何だったのか、そしてなぜ会社の資産4億ドル以上をビットコインに投じたかを聞いていきます。
ーあなたのバックグラウンドについて教えて下さい。
(Michael Saylor氏)空軍の軍人一家に育ち、MITで航空宇宙工学と科学の歴史を学び、在学中に空軍でパイロットの訓練を受けました。卒業後最初に勤めた会社は6ヶ月ほどで倒産し、その後はデュポン社でコンピューターシミュレーションの開発に関わり、2年足らずのときに辞めてMITに舞い戻るつもりをしていました。
関わっていたシミュレーションは石油産業における10億ドル単位の投資判断に使われるもので、まだ24歳だった自分は家具もない家賃7万円のアパートでこれを開発していたのですが、会社の堅苦しさに嫌気が差していたので辞めたいと言ったところ、強く引き止められたため、シミュレーションソフトを納品するまで残ることを条件に25万ドルのボーナスを引き出せました。
「これなら7年はもつ」と思って、誰の元でも働きたくない、失敗したらアカデミアに挑戦すると決め、MicroStrategy社を創業しました。みるみるうちに会社は成長し、株式公開し、今に至ります。
ードットコムバブル序盤の1998年に上場したわけですが、マーケットのサイクルなどに関して得た重要な学びはありますか。
2~3年ごとに会社の存続に対する脅威となる新しい技術や環境の変化が出てきましたが、それを早い段階で取り入れることでMicroStrategy社は成長し続けてきました。
続けていくうちにビジネスインテリジェンス(BI)の分野に進出し、3社の大手の競合がいましたが、3社ともオラクル、SAP、IBMに買収されていきました。そしてiPhoneが登場して洗練されていく中で、モバイルの波に乗るべく研究しました。
ところで、自分は発明家精神、起業家精神が強いのですが、1996年にEメールを使うには独自のドメインが必要でした。そこでmicrostrategy.comを購入したのですが、面倒くさがりの自分は「strategy.comでもいいのでは?」と思い、誰も大してドメインの取得に注目していない頃にstrategy.comを5万ドルで購入し、他にもwisdom.com、hope.com、angel.com、alarm.com、voice.comなど多数のドメインを取得しました。
その理由は、検索エンジンで「Voice」と検索するとGoogleで20億件くらいヒットしますが、Voice.comというドメインがあればその頂点に立つことができるからです。英語を学ぶ人が増えると、簡単な単語のブランド力がドメインの価値を向上すると考えました。ドメインはデジタル上の希少価値です。
ちなみにAlarm.comというサービスを開発し、それは弊社からスピンオフして現在NASDAQに上場した大企業になっています。そのディールで30~40億円くらい儲かりました。Angelという事業も始めました。SIRIみたいなボイスコントロール機能を手がける事業で、それも100~120億円くらいで売却しました。ただ、これらのサービスを運営する上で、新しいものを発明するのは簡単でも、そこから先、商業化する段階が難しいことを学びました。
ー仮想通貨関連企業へのVoice.comドメインの売却について、どのように取引を持ちかけられたのか教えて下さい。
とあるブローカーが最初に連絡してきて15万ドルを提示してきましたが、長期で保有しているドメインで、売り急いでいないのに取るに足らない金額だったので断りました。すると30万ドル、60万ドル、120万ドルと倍々に増額してきたので、少なくとも1000万ドルじゃないと話にならないと伝えました。
結局アートみたいにユニークな資産の売値っていうのは売り主にとっての金額であって、もしMicroStrategyが1000万ドルが必要な会社であれば1000万ドルで売っていたと思います。でも現預金が5億ドルあったので、1000万ドルよりもvoice.comのほうが欲しかったのです。
そうしてオファーが2000万ドルに達した頃、3000万ドルでなら売る、と指値しました。本当はVoiceという単語なら1億ドルの価値があると思います。例えば1億ドルかかる広告キャンペーンを、i.voice.netみたいなイケてないドメインでやるのを想像してみれば、ドメインの価値がわかると思います。でも金額の話をしたかったので、3000万ドルを基準に交渉することにしました。2200万ドルのオファーが返ってきたので、ここで初めて電話での交渉を許可しました。
ちなみに買い主が誰かは知らされていませんでした。例えば現預金すべてをはたいてドメインを買いたいというスタートアップであれば、少しはマケたかもしれませんが、正体不明のクジラ相手の交渉に遠慮は必要ありません。このドメインはセントラルパークの中の1エーカーの土地のようなもので、いつでも買い手は見つかります。死期が近いわけでもないので、3000万ドルの指値で待ちました。
最終的に、買い主の正体不明のまま3000万ドルで売却しました。後日、仮想通貨系の企業が買い主だったと知り、それが仮想通貨の世界とのビジネス上での最初の接点になりました。
ー仮想通貨の世界との最初の接点と言いますが、あなたの2013年頃のツイートでビットコインの将来に悲観的なものが話題になっています。
実は、あのツイートをした記憶はないのです(笑) 単純にツイッターをするのが楽しくて、ニュースなどに関する自分の意見をいろいろつぶやいていた中にあのツイートがあったみたいです。そのうちイメージを懸念して自分の会社と非営利団体に関連するツイートしかしなくなりました。
2.5億ドル相当のビットコインを購入したという発表をした日にあのツイートが発掘されて、自分でも驚きました。でも、自分の行動が歓迎された上でいじられているのはわかるので、それで気分を害してはいません。(笑)
ー2.5億ドル相当のビットコインを購入した1回目の購入は、会社の命運を賭けた勝負ですか?それとももっと保守的な判断ですか?
会社の命運を左右するような判断ではないと思います。取締役会に同意してもらうには、キャッシュフローが今後もずっとポジティブであり続けることを確認する必要がありました。当時5億ドルから6億ドルあったそのキャッシュでもっと自社株を買うのか、他の会社を買収するのか、はたまた必要になる可能性に備えるのか、その判断を下す必要がありました。
自分やスティーブ・ジョブズなど、破産寸前を経験した経営者にならわかると思いますが、キャッシュは大事ですし、キャッシュフローも大事です。ちなみに自分は会社の株が1株333ドルから0.42ドルまで下落した経験もあります。恐らく株価が99.8%下落しても職を追われなかった唯一の上場企業CEOでしょう(笑) それでも会社が潰れなかったのはキャッシュがあったおかげです。
COVID-19の流行によるMicroStrategy社と顧客への影響は何か?と考えたとき、公的機関や銀行、大企業など盤石で政府の支援も受けられる企業が主な顧客だったため、特に大きな影響はないと判断しました。むしろ需要は減っていないのに出張代や展示会の出店料、マーケティング費用が減ったので効率が上がりました。キャッシュフローにはプラスの影響が予想されたのです。
しかし、2億ドルを投資してビジネスを改善する策は思いつきません。自社株買いなどで使うことはできますが、ビジネスへの投資にはなりません。そこに更に政府からの支援金が給付されたのですが、同時期に長期国債の利回りが低下し、レイ・ダリオを始めとする多くのポッドキャスターは"Cash is Trash"と言いだしました。確かに、利回り2%の30年債を買うなんて狂気の沙汰だと思います。
そこで気づいたのです。「有名大学の授業料など、皆が欲しがるものは高いインフレ率を誇っている」と。年収5000万円の弁護士が、預金も5000万円あり毎年500万円ほど貯金しているとして、2人の子供を有名大学に送ろうとすると毎年8%上がる授業料を利息が貰えない資産を切り崩して賄う必要が出てくると。それを1000倍にしたのがMicroStrategy社が直面した問題だと思ってください。
15年前なら会社の5億ドルを預けていても利息でそれなりのキャッシュフローを生み出していました。でも今は利息が貰えないので、みんな資産性のあるものを買い漁っています。確かに、YouTubeやNetflixで動画を見ることや、機械が作ったキャンディ、デリバリーピザの値段は上がっていないかもしれません。でも皆が本当に欲しがるものは激しくインフレしています。アイビーリーグの大学の授業料、マイアミビーチの別荘、ニューヨークのアパート、希少なものなら何でも年率7%もインフレしています。
これに気づいたのは経済が明らかに大打撃を受けている3~4月の株価のV字回復を見たときです。資産のインフレは過去10年は年7%ほどで推移しているといえますが、今年に関しては長期債や株の中身までみて25%~30%だと主張することもできるでしょう。すると、銀行に預けていれば良いと思っていた自分の会社は、利息も貰えないどころか今年はインフレで価値が月に2%目減りしていくのです。1年後に価値が25%も減る環境では、キャッシュを持っていてはいけません。
ーキャッシュでは目減りしてしまう価値の保存に使える手段はいろいろありますが、なぜあえてビットコインなのでしょうか。
恐らくリモートワークや自主隔離で今まで考えもしなかった可能性を検討してみたり、新しい考えに触れたりした人も多いのではないでしょうか。
とりあえず、自分は5億ドルの価値がどんどん目減りするという大問題に直面していました。この問題には、いわゆる「V字回復」を受けて気づいたのです。もう1つの問題は、企業を評価する際に大量の現預金は大したプラス要素にならないということです。例えばMicroStrategyは年間5000万ドルの利益を稼いでいますが、5億ドルの現預金が10%目減りしてしまうと1年分の利益が相殺されてしまうのです。
キャッシュはいらない、何かに投じる必要がある。だが自社株買いをするにしても、流動性を考慮すると数年単位でかかってしまい、その間にも大きく現金の価値が毀損される。それほどの金額を事業に投資する方法も思いつかない。もしあなたが5億ドルをなるべく早く何かに使いたかったら、何に使いますか?
ービットコインでしょうね(笑) 少なくともインフレヘッジとされる事業用不動産、貴金属、ビットコインなどですかね。
5億ドル分の事業用不動産を、フェアな値段で買う方法があれば教えてほしいくらいです。希少価値が高いため、誰もショッピングしていないこの経済状況でも、コロナ以前と変わらない客足の想定に基づくとんでもない売値をふっかけられます。
では株はどうでしょうか?20世紀を代表するような古い株は論外として、アマゾン、フェイスブック、アップル、ツイッターなどはどうでしょう?確かにまだ成長の可能性はありそうですが、下落する可能性や上値の限界を考えると、期待値はそれほど高くない印象を受けます。
こう悩んでいるとき、友人がビットコインを丁寧に説明してくれました。シルバー、ゴールド、ビットコイン、どれにする?と考えたときに、半値になるかもしれないが10倍になる可能性のある資産を選びたいと思っているので、ビットコイン一択になりました。賢い投資家は誰でも常に期待値を考えて投資しているでしょう。
過去10年~15年の間に勝っている投資家の共通パターンとして、何か根本的なものをデジタル化したネットワークの王者、例えばモバイルネットワークはApple、情報ネットワークはGoogle、ビデオはYouTube、ソーシャルはFacebook、言論はTwitter、小売業はAmazon…このような会社は時価総額が1000億ドルのときに買っても、競合と比べて10倍の差がついている、つまり勝負がついているときは破竹の勢いで成長し続けました。
もちろん早く売りすぎないことも大事です。ポートフォリオの調整の名目でも、業界を牽引する会社の株を売るのは悪手です。
外部の人がビットコインを批判する上でよく言うのは「結局ソフトウェアなのだから、より良いものが出てくる」という意見です。仮想通貨業界がアピール下手だなと思うのは、何百ものデジタル通貨があることを必要以上に宣伝する点です。インターネットビジネスの教科書どおりにロングテールを相手にする必要は実はなくて、例えばニューヨークさえ相手にしていればアメリカ市場の半分を相手にできるように、むしろ色んなものをプロモーションするせいで複雑性が高まり理解を妨げていたり、リスクに関する仰々しい書面が一般人にとって壁になっていると思います。
「暗号学とProof of Workによるエネルギーの投資によってネットワークのセキュリティとビットコインの価値を守り、5億ドルを投じてもビットコイナー全員が全力で守ってくれる」と説明されるほうがわかりやすいし、投資する自信が持てます。
ービットコインと他の仮想通貨は別格とお考えのようですが、自分自身で自由に学んだ結果なのか、それとも誰かの影響が大きいのでしょうか?
自分は2020年に入ってから何も知らない状態でAndreas AntonopoulosやAnthony Pompliano、Dan Heldなどの動画を見たり、The Bitcoin StandardやParker Lewisのエッセイを読んだりしたので、いわゆるビットコインマキシマリストの影響を受けています。
「本当のビットコインドミナンス」が仮想通貨全体の92%で2位の通貨が2%といった数字を見ると、ビットコインはMySpaceと同じでいずれ淘汰されるという考えがどれほど間違っているのかわかります。MySpaceはそもそも一度も10億ドル以上の評価がついたことはなくて、今のビットコインの200分の1の評価額でした。10億ドル以上の評価額がついたデジタルネットワークが覇権的な地位に就いてから倒された例はこれまでにありません。ビットコインは既に勝っているのです。
ブロックサイズ論争のときのハードフォークに関しても、その歴史はビットコインにとって大きなアドバンテージです。あのとき、ビットコイナーが必死にネットワークを守ったのを知ったことは、私みたいな人が何億ドル投資しても大丈夫だという確信につながります。「新しいアイデアがある」「手数料が高すぎる」「スマートコントラクトを実装したい」とか言って変更を加えたいという意見なんて一言も聞きたくない。私はネットワークを攻撃する人たちから死守する意見を一番評価したい。
ービットコインを買うことに関して、どうやって会社のステークホルダーを納得させたのか。
まず、彼らに宿題を与えました。Anthony Pomplianoのポッドキャスト、Andreas Antonopoulosの動画、Erik VoorheesとPeter Schiffによる法定通貨とビットコインの価値に関するディベート、マクロ経済やビットコインに関する大量のエッセイ、The Bullish Case for Bitcoinなどを見たり読んだりすることです。取締役、顧問弁護士、CFO、そして私はみんな同時期にビットコインにハマっていきました。
その次に、会社の資金でビットコインを買う場合どういう規則があるのかなど、各々で分野の専門家に質問しに行って、その知見を共有しました。そこからさらに議論して、最終的に計画を実行に移しました。
ー結果的に4.25億ドル分のビットコインを購入されました。有利な値段で約定するために、どういう工夫をしましたか。
まず、2.5億ドル分のビットコインを購入したと同時に、最大で2.5億ドル分の自社株買いをする意向を表明しました。20日間の期間の後、結果的に株主が売りたかった自社株を6000万ドル分購入したにとどまったため、残った資金をほとんどビットコインに投じることになりました。
ビットコインを大量に購入した方法に関して詳細を共有することはできませんが、取引所やカストディアンを比較して、ビジネス上の関係を築き、総額を何万、何十万という注文に分割して日夜購入していくことになります。たまに月曜朝9時などに大きな買い注文が入って値段が数%動いたりしますが、本当に大量のビットコインを購入したい人がそんな不利な買い方をするわけがありません。現に、私達は4.25億ドル分も購入しましたが価格を急騰させることなく買うことができています。
正しいツール、優秀なチームを使い、ある程度時間をかければ数億ドルの売買が問題なくできる、それが今のビットコイン市場の流動性です。
ービットコインを購入したことに関して、他のCEOや他社の反応はどうですか?
まず、大半の会社は今はそれどころではないと思います。なので、多くのCEOがそれほど関心を持っているタイミングではないでしょう。
しかし、私が話した中では全員が、今年は今まで持っていた先入観がことごとく破壊されたと言っています。株式市場の挙動に関する予測、国際的なビジネスのリスクの想定、バランスシートのセオリーなど、去年までは考えられなかったことーオラクルがTikTokを買収するなんて絶対想像できませんでしたよねー妙なことがたくさん起きていますが、今ではどれも違和感なく受け入れられています。むしろ、他の人達がその判断に至った経緯を考えるきっかけになっていると感じます。
ー堰を切ったようにビットコインを買う企業が増えると思いますか?
固定概念を壊すという意味で、「4分間の壁」が初めて破られたときと同じような重要性を持つ瞬間だと思います。後に続く会社は数多く現れると思います。
そもそも、今までのビジネス上の判断と比べて難しいことではありませんでした。起業家ならわかると思いますが、会社を軌道に乗せて、しっかり続けることのほうがビットコインを買うより圧倒的に難しいことです。ビットコインを買うだけなら、ある程度能力がある経営陣がいれば成し遂げられるでしょう。今まで誰もやっていなかった理由は、誰も真剣に検討していなかっただけだと思います。
もし私が個人としてビットコインを買おうと思ったら、お堅い取引所に登録してKYCを完了して入金するというプロセスに長くて6週間程度かかるでしょう。買うことで意見がまとまった非上場企業なら12週間~18週間、フットワークの軽い上場企業でも6ヶ月くらいかかると思います。普通の上場企業なら9~12ヶ月かかるかもしれません。
最強のインフレヘッジとしてのデジタル・ゴールドは本物の金より100倍、下手すると1000倍いいものだと思います。それに気づいた時点から買えるまで最速でも3ヶ月、普通なら6ヶ月といったところだと思います。我々がアナウンスを出した8月から6ヶ月後は来年2月なので、それまでに面白いアナウンスが他社からも出始めるんじゃないでしょうか。
アメリカでは3500社の上場企業が合わせて5兆ドルの現預金を持っています。この5兆ドルは全部インフレによって溶けていく状態です。インフレによってある程度以上その価値が毀損されるとなると、彼らも善管注意義務を意識してその資産価値を守る必要に迫られるでしょう。これまでは慎重に現預金を貯めていても怒られることはありませんでしたが、資産のインフレ率が6%から30%になった今、これは無視できる問題ではないと思います。
CEO・CFOがリーダーシップをとって行動を起こす必要がありますが、私達が前例になってできると証明したので、あとは調べてもらうだけです。他社が行動に移すまで時間はかかると思いますが。
ービットコインのボラティリティの高さがよく懸念されますが、その点についてどうお考えでしょうか。
まず、ビットコインのボラティリティは低下していると感じます。仮想通貨について何か発言するとき、知ったかぶりたい人は「ボラティリティが高いよ」と言いたがります。確かに2017年は個人がスマホから売買していてボラティリティがすごかったかもしれません。でも今回の弊社のような買い方をする機関によってボラティリティは低下させられます。うちのような会社が何社あれば年中ボラティリティが低下するでしょうか?
また、仮想通貨は週に168時間トレードできますが、他の資産は多くて週に35時間です。土曜夜でも問題なくトレードできる取引所を見るたびに、そのシステムの堅牢さに感心します。週末や祝日の夜中でも、1億ドル分のビットコインを3%程度のスリッページを払えば売却できます。でも土曜午後にイスタンブールの道端で金を1億ドル分売ろうと思ったらそうはいきません。
他の資産には何でもマイナスの利息がつきます。ゴールドも私の視点ではマイナスの利息がついています。国債もそうです。7%であれ15%であれ3%であれ資産インフレによって価値が年々毀損されています。ビットコインのボラティリティを受け入れて生き延びるか、「ボラティリティが低い」代わりに春のわずか8週間で30%も価値が下がった法定通貨を持ち続けるか。後者に依存したままでは、10年間生き延びるのも難しいと思います。
昔から仮想通貨に関わっていた人たちはボラティリティの高さを経験していますが、これからの10年は恐らく違うと思います。何億ドルもの資金で売買する機関投資家の参入によってボラティリティは低下し、最終的にはボラティリティは低下しつつ、私みたいな100年ガチホする意気込みの投資家たちによって価格は上がっていくと考えています。
ー時価総額を比較すると、ビットコインと金では40倍以上の開きがあります。ほぼすべての側面において金より優れているビットコインにはそれ以上の伸びしろもあるかもしれません。十分長い期間をかけられるのならとても割の良い投資に思えます。
「デジタル・ゴールド」という形容はストーリーとしてはわかりやすいですが、むしろビットコインの安売りだと思います。実質金利がマイナスの債権市場は200兆ドルで、貴金属はそれと比べてとても小さい市場です。一方で、しっかりしたデフレ資産は見渡す限りビットコインだけです。
ー本日はありがとうございました。逆に、私に何か質問はありますか?
Twitterのジャック・ドーシーのプロフィールは「#Bitcoin」の1語だけです。そして彼が経営するTwitterとSquareは現金・同等物を合わせて100億ドルも保有しています。それなのに、ビットコインを1サトシも保有していない。ジャックにもとりあえず5億ドルくらいビットコインを買うよう説得したほうが良いのでしょうか?彼がビットコインが好きで、できる限りのサポートをしているのはわかりますが、企業の財務体質をビットコインを通して改善する先行事例になることもできるでしょうに。
ー恐らく検討したことはあるが、困難な理由があるんでしょうね。非常に成功している上場企業2つを同時に経営している敏腕経営者なのに、常に批判に晒されていますから。
最後に、ビットコインを購入したというプレスリリースには含まれていませんが、ビットコインコミュニティの精神がこの決断を後押ししたのは間違いありません。深い思考や様々な試みには感心させられ続けていますし、このポッドキャストも決断に至る過程で大きな役割を果たしました。ありがとうございます。
ーーーおわりーーー