それはいかにして始まったのか?(クリプト本レビュー③)
実話を題材にした本を読むと、その取材の緻密さに圧倒されることがあります。
「一体、何百人に取材したんだ・・・?」と、半ば呆気にとられつつ、それでもページをめくる手がとまらない。そういう本が、当たりですね。
今回ご紹介する『デジタル・ゴールド』も、そんな本です。
ビットコインはいかにして生まれ、どのように広まっていったのか。どのような人々が、それに関わったのかーー。ビットコイン誕生をめぐる、2009年1月から2014年3月までのほぼ5年間の物語です。
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帯にはこうあります。
「世界を変える一大発明」か「まがいもの」か。
ビットコイン揺籃期の狂騒を、鮮やかに描く!
この本の特徴は、なんといっても、「おもしろい」ことです。
読み物として、すごくいいんです。まるで物語を読んでいるようです。
登場人物はみな実在の人ですが、みんな生き生きとしています。
ビットコインが稼動を開始するくだりでは、サトシ・ナカモトが登場します。
「登場する」と言っても、サトシが投稿した文章やメールの文面を引用しているだけなのですが、まるでその息づかいまで感じさせてくれるようなリアルな描写です。ここは、筆者の技量でしょうね。
最後の謝辞のページで、ウェンセス・カサレス、チャーリー・シュレム、マルッティ・マルミ、ウィンクルボス兄弟などなど、そうそうたるメンバーの名前が挙がっていますが、要するにこうした人たちに直接取材して、書き上げた本なのでしょう。
そして、この本は読みやすい。500ページ弱の大著ですが、スラスラ読めます。
原文がいいんでしょうけど、翻訳もいい。
たとえば、ITにうとい私には、アルファベットが少なめにしてあるのが有難かった。「マウントゴックス」とか「ペイパル」みたいなのを、カタカナで表記してます。
さすがにアルファベットでしか書けない言葉(POWとかSHA256みたいな)ものまで、無闇にカタカナにしてはいませんが、「VAIO(バイオ)」みたいな表記は、読者に優しいなあ、と思います。
ユーザーフレンドリーならぬ、リーダーフレンドリーですね。
ですので、ビットコインや仮想通貨に初心者の方にもオススメです。
最後に、私の感想を。
この本から感じるのは、なんといっても、熱意です。
ビットコインの開発に加わったり、世に広めたりしてきた人たちの、熱い想いが、読み手に迫ってくるのです。
「意志の力」って重要だな、と思います。
エジソンの有名な言葉に、「天才とは、1%のインスピレーションと、99%のパースピレーションである」なんてのがあります。
このパースピレーションは、「汗」とか「努力」と訳されます。
つまり、エジソンは、諦めないことや、繰り返し挑戦することこそが、創造の源だと言いたかったのでしょう。
金融や経済の専門家の方々が、ビットコインの欠点や不完全な部分をあげつらって、全否定しようとすることは、珍しくもなんともありません。
でもネックはそこじゃないんですよね。
何かが成功するかどうかは、「不屈の意志」や「情熱」があるかどうかなんじゃないか?
そして、仮想通貨の可能性を言下に否定する人たちは、そうした「熱意」を軽視しすぎているのではないか・・・?
私はそう感じます。
皆さんはどう思われるでしょうか?
読んでくださってありがとうございました。
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