法律が窮屈ならプロトコルを変えちゃばいいじゃない

アセットを使ってなにかショッピングサイトを作りたい場合、エスクローが欲しくなります。単純な送金では、売り主の裏切りを防止できません。そして、特に物販の場合、契約の履行がブロックチェーンで確認できません。オフチェーンで誰かが監視や調停をする必要が、どうしても発生します。

しかし現行の日本の法律では、エスクローは、いわゆるカストディ規制に引っかかりがちな機能です。実際、Amazon のほしいものリストを使った仮想通貨ショッピングサービスを展開していた Avacus は、みなし事業者の登録を済ませることで、事業継続の道を模索しているようです。普通に Bitcoin などの暗号資産を使う限り、顧客の暗号資産の預かりを行わずにサービス提供できませんから。

(ところでモナッピーって、どうやって法的な問題を解決したのだろう…)

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ところで、モナパーティでも、お買い物はしたいところです。シフォン主義の昔から、買い物ができるコインで有り続けた系譜の上にあるので。

しかし、前述のとおり、法律が立ちはだかります。乗り越えるためには億円単位の投資が必要です。そして、そんなカネはどこにも無いわけです。1MONA が1万円を超えたら話は違ってくるかもしれませんが。

正攻法では無理。金融資産がないのなら、知識資産で合法と主張できる手段を探すしかありません。

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まず、外堀から。

個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものではありますが、事業者が専ら自己の権利利益の保全のために担保として暗号資産の預託を受けるなど、他人のために暗号資産の管理を行っているとはいえない場合には、基本的には、資金決済法第2条第7項第4号に規定する「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないと考えられます。

https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200403/01.pdf がソースです。証拠金等で預かる場合にはカストディ業務にならない、という旨のコメントとなります。が、ほしいものリスト購入代行のようなサービスでは、このケースに当てはまるかどうか、若干リスキーな気がします。よって、却下。

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そもそもカストディ業務に対する政府の判断基準は何か、というところまで立ち返ってみます。

法第2条第7項第4号に規定する「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当するか否かについては、個別事例ごとに実態に即して実質的に判断するべきであるが、利用者の関与なく、単独又は関係事業者と共同して、利用者の暗号資産を移転でき得るだけの秘密鍵を保有する場合など、事業者が主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態にある場合には、同号に規定する暗号資産の管理に該当する。

https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/16.pdf がソースです。

まず、モナパーティは、利用者の秘密鍵を一切管理しません。そもそも事業者も居ませんが。ここでは、エスクローの仲介者がカストディ事業者と認定されるリスクを考えています。

鍵は「事業者が主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態」かどうかのようです。

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ならば、対案は簡単です。

依頼人 Alice、受託人 Bob、仲介者 Carol の 3 人のうち 2 人の同意でエスクローが成立するようにしておき、加えて Carol にはキャンセルの権限を与えます。

キャンセル時にはアセットの送金が発生しません。Carol にこの機能を与えるのは、カストディ規制を考える上では、ノーリスクです。

問題なく取引が行われた場合、Alice と Bob の同意でエスクローは成立し送金は完了します。こじれた場合、Alice と Bob の言い分を聞いた Carol が、エスクローを成立させるかキャンセルさせるかを決めます。

Alice と Bob のどちらかが実は Carol でもあった場合、カストディ事業者としての要件を満たすことになります。しかし、それを行うと Carol が法的に不利になるので、却って不正の抑止力になるかもしれません。

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というわけで、コントラクト・プロトコルを追加すれば、法的なリスクを回避したまま、お買物用のエスクローサービスは提供できそうです。

XMP をはじめとするモナパーティのアセット群は、暗号資産ではないはずなのですが。万が一にでも認定された場合のリスクヘッジとして、合法性を主張できることは重要です。

以前、bet メッセージを応用したエスクローの思考実験を記しましたが、bet には賭博法という別の頭痛の種があります。新しいプロトコルを作ったほうが安全でしょう。

そして、このような複雑な状態遷移を持つコントラクトを制御するための、現在 XMPIP-0015 が draft 入りしています。

また、エスクローと、追加でオークションも、近日中に XMPIP として公開されるはずです。

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なおこれらの機能は、ユーザ作成のアセットではなく、XMP アセットのみを使う前提となります。新機能に興味のあるかたは、小遣い程度の XMP を所有しておいても良いかもしれません。XMP アセットは対 MONA (MONANA) で割と変動しているようなので、お値ごろを見計らいつつ。

(本稿執筆時点。今だと dispenser を使って MONA で買ったほうが安そう)

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