代替通貨の採用と超統制社会/伝統的社会への再回帰|共通の経済的価値の適用範囲の限定化や貨幣のない世界に関する考察

代替通貨の採用と超統制社会/伝統的社会への再回帰|共通の経済的価値の適用範囲の限定化や貨幣のない世界に関する考察

不換貨幣制度は「いき過ぎた資本主義」「超格差社会」など、広義に金融領域におけるモラルハザードを1つの要因として、2008年のリーマンショック以後はその制度自体を懐疑的に捉える声も少なくなく、ある一定の役割を終えたとも想定されます。

1700年代のフランスで初めて不換貨幣制度が採用されてから「貨幣刷りすぎ→信用創造しすぎ→インフレ→制度破綻」問題は制度的欠陥として確認されており、あくまで1970年代から米国を中心に行われた経済成長第一優先的な社会デザインを志向する場合において今後も採用されていけばよいとも言えます。

ジョンロック的な「貨幣 = モノ」とする貨幣自然思想は、金兌換制度の採用の拡大とともにより現代的な特性を帯びてくる(?)ようなイメージですが、さまざまな通貨が多層的に人々の生活で活用されることで、「柔軟性(経済成長/不平等の拡大への対応)」を補完し合うような通貨制度の実現を希望的観測ではあるものの実現することが期待されます。

2019年の話ですが、フェリックス・マーティンは下記のように述べており、「柔軟性(経済成長/不平等の拡大への対応)」に着目して、暗号資産の決済手段としての可能性も代替通貨の範囲で調査していければと思われます。

古典的な金本位制がいい例です。そこでは円でもポンドでも通貨の発行量は中央銀行金庫にある金(ゴールド)の量に依存するべしと、そこに『柔軟性は不要だ』とロックは主張したのです」

蓄財を保証するモノ=貨幣?

フェリックス「実は仮想通貨も同じです。ビットコインのような最も人気のある仮想通貨で特徴的なのはとても厳しい貨幣基準があることです。醗酵されるコインの数に厳格な上限が定められているのです。」

発行量の上限=2,100万BTC

ロックの呪い?

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第9章・第10章 書き起こし

https://kamomelog.exblog.jp/30041853/

本稿では「代替通貨の採用と超統制社会/伝統的社会への再回帰|共通の経済的価値の適用範囲の限定化や貨幣のない世界に関する考察」について各ユースケースを確認していきます。

代替通貨の採用と超統制社会/伝統的社会への再回帰

BRICSによる金兌換制度を採用した新しい通貨制度の構築など、基軸通貨である米ドル以外を通貨を採用し、その社会デザインをより適正なものにしようとする取り組みが確認されています。

BRICSは金を裏付けとする通貨の導入を検討

https://minkabu.jp/news/3649405

1800年代において基軸通貨だった英国ポンドは金兌換制度であるがゆえに金の獲得に南アフリカやロシアとの戦争を行い、それによって経済的な成長が遅れたことで米ドルが台頭するといった通貨の歴史が存在しています。

金兌換の制度的課題をある一定程度解決する方法として不換貨幣制度が1970年代より採用され、米ドルの国際的な普及を実現してきましたが、近年においてはペトコダラーとしての側面も薄れつつあり、近年の全世界的なインフレーションなどを要因に代替通貨に関する議論/実践も盛んに行われています。

✅代替通貨 一覧

・クレディト(アルゼンチン)

アルゼンチンでは2001年のデフォルト時に基軸通貨/国家通貨/債券通貨/地域通貨が相互補完し合う通貨システムを構築。地域通貨「クレディト」は通貨交換ネットワーク「RGT」によって発行されていました。

http://cc.fm.senshu-u.ac.jp/system/files/second2_1.pdf

・ブリクストンボンド(ロンドン)

https://brixtonpound.org/

・イサカアワーズ(ニューヨーク)

http://www7.plala.or.jp/YAYOI/sub9-6.html

・WIR(スイス)

https://gentosha-go.com/articles/-/8204

・Lightning Network

https://www.instagram.com/p/ChMwKJzOf9J/?igshid=YTgzYjQ4ZTY%3D

最近だと金紙幣とか米国の州ごとの貨幣制度なども議論になってたような。

本稿では、従来の基軸通貨制度の中に、Brticsによる金兌換通貨制度や代替通貨が採用される領域が存在するようになり、さまざまな通貨が多層的に人々の生活で活用される社会などを想定します。

あとは、そもそも論として「超統制社会/伝統的社会への再回帰と貨幣のない世界」についても今回は調査を行いました。

個人的には、ここ400年くらいでもいろんな通貨体制が採用され、50-100年周期で基軸通貨も不安定化し、入れ替わっていることを考えると、相互補完し合うデジタルな通貨システムに関しても割とありふれた議論にとどまるのかなと考えています。

どちらかというと新興の国家/宗教をどう作るか的な共同幻想に着目し、「伝統的社会(超統制社会)のデジタルな再構築と貨幣のない世界」的なところでnetwork stateらへんの議論を新興宗教のノウハウを参照してみていくほうが割と現実的かなとも想定しています。

✅「超統制社会/伝統的社会への再回帰と貨幣のない世界」に関する事例/言論

・古代ギリシャ ミダス王の神話:貨幣による過剰な競争を懸念する寓話

・スパルタ:リュクルゴス制度に基づいた軍国主義/カースト制による超統制社会によって貨幣を排除 。しかし、前404年にペロポネソス戦争に勝利後、富が国外から流入し、格差社会となったことで超統制社会は弱体化。

・トマスモア:ユートピア島(16世紀)

・ジョンベラーズ :労働を価値の尺度とし、生産共同体「学院」における貨幣/私有財産制の否定によって、17世紀後半の英国社会/経済に対する問題提起を実施。

ジョン・ベラーズの教育思想について

https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000003531/3-926.pdf

・カールマルクス/フリードリヒエンゲルス:貨幣による資本主義的な搾取構造への批判と誰もが人間性を発展することのできる社会主義的自由の提唱。

・ソビエト:戦時共産主義時代に貨幣廃止に失敗するも妥協案として貨幣の適用範囲の限定化によって、段階的な貨幣の排除を目指した国家的な取り組みを実施。

・マイケルサンデス「それをお金で買いますかー市場主義の限界」

・ロバートスキデルスキー「どれだけあれば気がすむのか」

共通の経済的価値(貨幣)によってすべてが値付けされ、それにともなう過剰な競争に歯止めをかける仕組みが存在しないといった構造的欠陥は、古代ギリシャ時代から懸念されており、適用範囲の限定化などによる貨幣廃止論を伝統的な社会主義は追求したそうです。

近代国家において「貨幣廃止=相対的に経済成長を追求しない」でどのように統制を実現できるのかは、軍国主義/カースト制による超統制社会は倫理観の問題から難しく、金銭的インセンティブをともなわない贈与的な部分的領域にとどまると考えられます。

極論として電脳SF世界的なデジタルな超統制社会をイメージしがちですが、貨幣(共通の経済的価値)のない世界を志向する領域にもスポットをあてていければと考えた次第です。

基軸通貨的な万人にとっての共通の経済的価値ではなく、伝統的社会的な「バラバラの経済的価値の部分的な共通化 = さまざまな通貨が多層的に人々の生活で活用される世界」的な。

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