苦痛のトレーサビリティで組織を改善する 3: 他者への共感・関心を内包するPS3

苦痛のトレーサビリティで組織を改善する 3: 他者への共感・関心を内包するPS3

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前回書いたように、ここからの記事では、苦痛最小化、セキュリティ、スケーラビリティ、持続可能性。これらの条件を「PS3(Pain, Security, Scalability, Sustainability)」と呼び、ガバナンスの基本的な要請(最小限の理想)として仮定する。

PS3は否定的な目標だ。それはブラック起業など組織の悪い状態に対する抑制の条件であり、積極的に理想の状態を描くものではない。

また、PS3では、たとえば、メンバーの多様性など、無条件によいとされている属性を、それ自体では肯定的なものとして扱わない。PS3では、たとえば「多様性がないと、学習に失敗し環境に対する過適応状態になり、結果的に組織が現実への対応力を失い持続不能になる(Sustainabilityへの違反)、または、苦痛の増大(Painへの違反)が起きる」ならば、それは良くない、という言い方しかしない。

PS3は、「ルールに従っていれば、後は個々人の自由」という思想だけの状況とは、似ているようで違う。どう違うのか?

一つには、言い換えられたかたちでの、他人との共感・関心が、すべての項目に入っていることだ。

「感情的、あるいは感覚的な共感」としての「苦痛最小化」、「計り知れない意図を持った他者への関心」としての「セキュリティ」、「群衆としての他者」に埋もれても制度が破壊されないこととしての「スケーラビリティ」、「相反する目標や信念を持つ他者たちと共に生存」しつづけるための「持続可能性」、というように。

PS3は、ブロックチェーンという技術によって可能になる「(自律)分散組織」の制度的可能性について考える中で仮定された作業仮説だ。つまり、中央集権的な組織、理想・目的・投資によって上から束ねられた既存組織にはない、分散組織ならではの可能性を探る中で、「理想にも命令にもよらず、それでいて組織が自己更新し続けるやり方」を考える時の条件としてとりあえず仮定された。

苦痛を最小化するといっても、苦痛を追跡・評価する手段がなければ無意味だし、その信用が特定の権力への委託よって維持されているなら、結局のところ国家の上位はないという事態へ逆戻りする。全体主義と現実主義をくぐり抜けた人類に、国家が苦痛の追跡に関してだけは不正をしない、と説得するのはとても難しい。

しかし現在では、ブロックチェーンによって、「(苦痛への)トレーサビリティ」と(中央集権的な組織や権威に頼らない)「分散化した信用」とを、技術的に結びつけるやり方を具体的に想像できるようになった。それが「苦痛トークン」である。

→この記事の続き

Credits:

原案:西川アサキ
草稿執筆:古谷利裕、もや
同時編集:VECTION

冒頭画像:Pietà with Donorsca. 1515 French

本稿は、「ブロックチェーンとレボリューション──分散が「革命」でありうる条件とはなんですか?

r/place的主体とガバナンス──革命へと誘うブロックチェーンとインターフェイス から、苦痛トークンとPS3について記述された部分を取り出して、加筆、再編集したものです。

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