空き樽は音が高いハナシ
先日近所の飲みともだち(73歳)とごはん食べまして。聞けば現存する清掃会社の元社長さんだったそうなんです。それはまあいいんですが、現役社長から相談された話がなかなか面白くて私も聞きましたので会社名や詳細をぼやかしながら共有したいと思います。(元社長さんからは下書きを検閲した上で許可頂いています)マネジメントの思考実験にどうぞ。
前提
この会社は清掃会社で、清掃を行う人たちは1チーム5人、4チーム合計20人から構成されています。各チームから1人の班長が社長により選出され、班長は自身の班で使用する備品に関する修繕依頼やシフトに関する最終承認を社長と交渉します。(たぶん実務しながら)
社長が主任制度を導入
半年ほど前社長は主任制度を導入したらしいのです。主任は班長から選出され、主任は班長を兼任します。主任はこれまた社長が選出します。
主任制度の意図(予想)
パッと聞いた感じ重複にも見える主任を設定したのはなぜか考えました。
予想①:班長の数が多く社長の調整負担が大きい。意見をもう少し集約する役目として主任を置いた説
予想②:主任を法律上役員にしてしまい、過剰労働を負わせようとしている(ゲス)
ちなみに答えは判りません。73歳のじーさん予想は①でした。②ならゲスの極み。
何が起こったか
主任は少しずつ偉ぶるようになり「その程度の事を班長・主任間の議題にはならない」「班長と班員で揉んでから議題にしろ」「社長はご多忙なのよ」などなど、少しずつ社長側になっていってしまい偉ぶってしまったのです。班員からすればつい先日まで一緒に会社をよくしようと話し合っていた仲間。裏切られたような、はしごをはずされたような、そんな気持ちだと思います。私ならすぐ退職するか班長に一切の報告をせず業務にあたります
さらに班長は主任からいじめられるので班員をいじめます。班員からしたらもう泣きっ面にハチです。
ちなみに社長は社員の人たちの悩みが減ったように感じるはずなので、制度成功と感じるはずです。
社員たちはやめるかというと、だいたい親の介護をしながら働く初老の女性が多いのでなかなか辞めません。
誰もが幸せにならない会社になりつつあるようです。
君ならどうする?の答え
じーさんは答えを社長に言わなかったそうです。そしてじーさん「君がこの社長の友達で、相談されたらどうする?」と聞かれました。
私は食事の席で即答ができませんでしたので、後日ゆっくり考えて答えを出したのです
解決案:投票の導入と班長の廃止
- まず班長の存在が薄いので廃止します。各班の問題は全て主任にホウレンソウ。
- 主任は3人にして班員から投票による選出式にします。公約に基づいて選ばれ、公約を守ることができなかった時は次回の投票に影響します。
- 主任になるメリットは清掃業務の完全免除と給与の上乗せ。
- 主任の拒否を社長ができないように株主総会でルール化します。(社長が反故にした場合社員が訴えられるための保険)
これにより社長はエッジの効いた主任からエッジの効いた交渉が出てきてかなり苦しい立場になります。実現不可能な場合はバーター案を出さざるを得ません。主任が納得すればそれを持ち帰り班員に成果物として報告します。優秀な主任は常に高給をもらいつつ業務は免除されます。班員はやり手の主任を選出することで職場環境が良くなっていきます。社長は業務効率が上がった社員のパフォーマンスによって主任の上乗せ分の給料を支払います。
おまけ
会社全体の売上は特に増えないし、この制度のメリットを宣伝もできない気がします。なにより判りづらいので入社を検討している女性からしたら「主任とか面倒くさそうなので応募はやめておこう」となるでしょう。
そして社長からすれば特に真摯に取り組まなくても社員はやめていないので、やはり真面目に取り組むインセンティブが薄い気がします。そして今はコロナの影響で失業者が多く優秀な人材が低賃金で雇いやすい環境です。やるべきかどうかでいえば、長期的な視点ではやるべきですが、何もしなくてもいいのかも知れません。
名案が浮かんだところで結局どっちでも良かったのかも知れません。
これを読んでいるあなたならどうしますか?この清掃会社さんは絶賛社内軋轢発生中で会社内にマリアナ海溝があるそうです。