「ビットコインマキシマリスト」: 暗号通貨界隈のキーワードを考える
暗号通貨界隈において、「取引所は中央集権的であり、分散型取引所のほうが良い」とか、「あの暗号通貨は、中央集権的である」とか言われることがある。
「中央集権的」とは、権力が一人や一つの機関に集中した状態である。
優れた組織や人間に権力を集中させることは、物事を進めるうえで非常に有意義である。
しかし、権力を一つにまとめると、その力を握ったものは暴走し、暴君と化すことを歴史が証明している。
人民に権力を集中させた結果、大義名分の下に恐怖政治が正当化されたり、民主主義と名のつく事実上の独裁国家が存在するように、必ずしも良いことだけではない。
この「権力の集中」に対して、「権力の分散」をすることを正義とする価値観が自由主義である。
例えば日本国の統治制度では、国民が主権を持ち権力を国民に集中させつつも、暴走を防ぐため三権分立として国家権力を分散させている。
このように、「権力の集中」と「権力の分散」はお互いに異なる価値観であるが、どちらかが常に正しいというものではなくて、また0か1でもない。また、評価する視点によっても結果が変わるもので、視点の設定を明確にすることが重要である。
通貨の発行権に関しては、政府ないし公的機関が独占しているのが通常である。
ビットコインをデジタル通貨として捉えると、通貨の発行権をマイニングをする個人に分散させてしまったということである。
ビットコインをデジタルゴールドとして捉え、ゴールドよりも他者への移動が簡単になったものと捉えれば、別に通貨を発行しているわけではなく、ただ人々がそれを通貨と呼んで扱っているだけとも言えるが、少なくとも政府ないし公的機関の発行する通貨と比較すると、強く権力が分散しているといえる。
ビットコインマキシマリスト
さて、前置きが長くなったが、ビットコインが誕生した当初は、「国家が発行に関与をしない通貨/ゴールドである」というニュアンスで、分散型の素晴らしさが語られていたように思う。
ビットコインは唯一無二の暗号通貨の王であったが、MIT Licenseであったがためにフォークコインたるオルトコインが数多く登場し、分散が進んでしまったことで、ビットコインの力は相対的に弱まることとなった。
それ故、ビットコインの力を弱める存在であるオルトコイン全般は、ビットコインマキシマリスト*の嫌悪の対象となったと考えられる。
*ビットコインマキシマリスト:ビットコイン以外のオルトコインは無価値と考える人たち(参考)
さらにRipple社の発行するXRPや、特定の者への一定枚数の割当が予め決まっている(プレマインの)暗号通貨は、彼らの理想とする「分散」が後退したものとして、特に激しく嫌悪されているのではないかと推察する。
ビットコイン愛好家がビットコインに熱中する理由が、「国家権力や企業から個人の開発者やマイナーへ権力が分散したという理想的なものである」と想像すれば、Ripple社の発行するXRPは、その理想からかけ離れたモノとして、彼らの眼に映っているのだろう。(もちろん、反論として特定の企業がビットコイン・コアを支配しているとか、検閲をしているとか、様々な批判が存在する。)
「ぼくたちのお金、モナコイン」
初期のモナコイン愛好家(古代モナコイン人)がモナコインを愛しているのは、モナコインが自分たちの手で扱うことのできる通貨であるからと考えている。モナコインが誕生した2014年に、私がビットコイン愛好家とならなかったのは、現在まで続くビットコインマキシマリストの「ビットコインマキシマリストでなければ人に非ず」、「自らが経済の新たな支配者となる」という中央集権を志向する矛盾に対する反抗心があった。
すくなくとも、当時はビットコインコミュニティ外の人間がビットコインを手に入れることは困難で、またコンテンツも少なく、ビットコインを気軽に使える状態ではなかった。そのような状況下で、特定の人物や組織に依存せずに自分たちの手で扱えることを良しとする価値観を古代モナコイン人たちが持っていたことは、モナコインが公開された時から感じている。
その価値観の下、自分たちで使えるモナコインの取引所が作られ、自分たちで使えるインフラが整えられ、自分たちで遊べるコンテンツが作られ、積極的に使って(遊んで)きた。
この「自分たちで」という精神を私は尊いものだと感じるし、誰かが何かに挑戦した時の失敗などは笑って済まされる、「お互い様の精神」で、モナコインを誰もが楽しめたらいいなと思っている。
モナコインは、個人が手に入れた経済おもちゃだと思っている。
世界最大の同人誌即売会コミケのように、モナコインも皆が参加者であり、皆が主役であれと思うので、自分はお客様だぞという態度や、投資家様だぞという態度の参加者が増えると、とても寂しい。
皆で日本の新たなインターネット文化を作りたいのである。
なお、アンチビットコインマキシマリストとも呼べる思考が、モナコインマキシマリストになりがちであることを自覚し、留意したい。
関連リンク
「使われると価値が上がる」: 暗号通貨界隈のキーワードを考える
モナコイン財団(Monacoin Foundation):暗号通貨界隈のキーワードを考える
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