XRPの証券性のガチ検証 後編

XRPの証券性のガチ検証 後編

1.本記事の概要

前編に続き、本編では、SECのガイドラインに沿って、XRPの証券性を一つずつ検証していきます。

以下、非常に長くなるため、最初に本記事の結論をまとめます。

・全39項目のうち、XRP(正確には2017年5月以降にRipple社が取引所に販売したXRP)が証券性の項目を満たすと考えられるのは32.5項目(全項目の約83%

・このうち、Howey testの4要件に相当する重要項目だけに絞ると、29項目中27項目が該当(約93%)し、その割合は非常に高いと言える。

・ただし、これをもってXRP=証券と認定されることが決まったわけではない。むしろSECが証券認定する未来は来ない可能性が高い

2.各論

それでは、ガイドラインの項目に沿って一つずつ判定していきます。なお、あくまで私個人が独自に判断したものなので、私の知識不足による事実誤認等があるかもしれません。誤りの指摘をいただければ随時修正します。

前編で述べたように、SECのガイドラインの各項目は、Howey testの4要件を具体化したものです。したがって、その構成も基本的にはHowey testの4要件に沿っています。順番に、「金銭投資:1項目」「共通性:1項目」「他人の努力:11項目」「利益期待:16項目」で計29項目です。これに加えて「その他の考慮事項」として11項目が加えられています。合計40項目です。なお、SECには「何個当てはまったら証券」というように、該当数だけで証券性を判断する考えは見られませんので、あくまで総合判断、ということになろうかと思います。

以降、該当するものは〇(証券性高い)、該当しないものは×(証券性低い)、私が判断できなかったものは△(△は最終的には0.5ポイントとして計算します)で書いていきます。

(捕捉)

 ガイドラインでは重要なキーワードとしてAP(Active Participant)という言葉がよく出てきます。これは、プロモーター、スポンサー、その他の第三者と定義されていおり、仮想通貨に影響を与える彼らの行動が、証券性の判断に当たって非常に重要となります。本稿では、分かりやすさの観点から、APをRipple社と読み替えます。また、「デジタル資産」という単語も「XRP」と置き換えます。また、基本的には英語の原文を直訳していますが、文脈上、一部意訳・省略している項目もあるので、気になる方は原文の方を参照してください。

では、始めて行きましょう。

【金銭投資:1項目】

① 金銭の投資である 

  〇です。最も基本となるHowey testの第一要件です。XRPを購入するために、現金や仮想通貨で支払っているわけですから、明白に〇です。

【共通性:1項目】

② 投資先は共通の企業にある 

  〇です。Howey testの第二要件です。前編でも述べたとおり、これは判断が難しい項目でありますし、間違いなくリップラーは否定したいところでしょう。しかし、私としては、Ripple社設立時の最初の契約において、実質的にRipple社がほぼ全てのXRPを傘下に収めたこと、また、2020年になって未だに過半のXRPを保有していることからも、共通性を満たすものと考えています。Davidの発言等で、XRPがRipple社より先に稼働していた旨の発言があることは承知していますが、あくまで実態がどれだけRipple社の独占的状況にあるかで判断すべき事柄ではないかと思います。なお、私のRipple/XRPの関係に関する認識については、多くがこの記事に依っています。

【他人の努力:11項目】

 上記のとおり、「金銭投資」と「共通性」は、SECのガイドラインにおいてもHowey testの基準のレベルからほとんど深まっていません。両者の要件は、過去の判例においても、また、SECが今後主に検討していくであろう多くのICOにとっても、当然に当てはまる要件としてSEC内部で整理されているからです。

 以降は、SECのガイドラインが特に注力した残りのHowey testの2要件になります。最初は「他人の努力」です。11項目あります。

③ 投資家はRippleの努力により利益が得られるとの合理的期待がある 

  〇です。明らかに投資家はRippleの努力で自分たちの利益が増えるとの期待をしてXRPを購入していたでしょう。

④ Rippleの努力は紛れもなく重要であり、企業の成功・失敗に影響を与える経営上の努力と言える

  〇です。Rippleが銀行と調整したり、行政と調整したり、Rippleエコシステムを作ったり、全てRippleの努力がその成功に影響を与えます。

⑤ Ripple はネットワークの開発、改善、運用、促進に責任を負っており 、投資家がネットワークまたはXRPが意図した目的や機能を達成または維持するために必要なタスクを Ripple が実行または監督していることを期待している

  〇です。Ripple社はXRPレジャーの分散化を進めていますし、オープンソースのプロジェクトではありますが、実際上、XRPが意図した機能を達成するために必要なタスクは、投資家目線では、全てRipple社が実行していると期待しているでしょう。

⑥ 分散型ネットワークというよりは、Rippleによって実行され、期待されている本質的なタスクがある

  〇です。確かにRipple社はバリデータの分散化を進めていますが、2017年5月当時、基本的にはRipple社保有のバリデータがXRPレジャーの大半でした。

⑦ Rippleは、仮想通貨のための市場や価格を創造したり、サポートしたりする。 例えば (1) 仮想通貨の作成・発行をコントロールする。(2)仮想通貨の市場価格を支持するために、買い戻し、バーン、またはその他の活動を通じて、供給を制限したり、希少性を確保したりするなどの行動をとる

  △に近い〇です。Ripple社がXRPのロックアップを完了したのは2017年12月ですので、本編の検討対象の始期である同年5月時点では、まだ供給制限はしていませんでした。いずれにせよ、Rippleは、取引所へのXRP上場のために、取引所と内々調整をしていたり、市場・価格想像のための取組に奮闘していますし、ロックアップをして市場流通量を大きくコントロールする潜在力があるわけですから、〇といって差し支えないと思います。

⑧ Rippleは、ネットワークやXRPの継続的な発展の方向性を導く中心的な役割を担っているか。 特に、ガバナンス、コードの更新、またはXRPに関して発生する取引の検証に第三者がどのように参加するかを決定する上で、Rippleは主導的または中心的な役割を果たしている

  〇です。オープンソースとはいえ、その中心的役割を担うのは明らかにRippleです。

⑨ Ripple は、ネットワークやXRPの特性・権利に関する意思決定や判断を行う上で、継続した管理的役割を担っている

  上記⑧が〇である以上、こちらも〇です。

⑩ 購入者は、Rippleが、XRPの価値を向上させるための努力を行うことを合理的に期待することができる

  〇です。期待しているから、2017~2018年のバブルで大量買いがありましたね。また、Ripple社自体も、XRPの価値向上を示唆しています。(参考

さて、以降⑪~⑬の3つは、投資家の購入時というよりは、購入後の考慮事項です。購入後の状況変化があれば、証券性の検討に当たってSECが考慮するとしている項目になります。

⑪ 購入後も、Rippleの努力が、XRPへの投資的価値にとって重要であり続ける

 〇です。Rippleの努力が絶対的に重要です。他のエコシステムが立ち上がろうが、誰もがRippleの努力がXRPの投資的価値にとって重要であり続けると考えているでしょう。

⑫ 購入後も、XRPのネットワークの発展に向けて、Ripple が本質的な経営的努力を行うことを合理的に期待できる方法で運営されている

 〇です。⑪と同様です。

⑬ 購入後も、Rippleの努力が引き続き企業の成功に影響を与えている

 〇です。上記同様です。 

【利益期待:16項目】

以降は、Howey testの4つ目の要件である「利益期待」の項目です。こちらは16項目あります。

⑭ ホルダーは、企業の利益分配やXRPの価格上昇による利益を得られる

 〇です。ステーブルコインではないので、XRPの価格が上昇すれば、その上昇に伴う利益を得られます。

⑮ XRPは、二次市場(取引所)やプラットフォーム上で、取引可能であるか、または将来的にそうなることが予想されるものである

 〇です。取引所で取引可能だし、2017年時点、もっと多くの取引所で扱われることをリップラーは予想していました。

⑯ 購入者は、Ripple の努力がXRPの価値向上につながり、その結果、購入に対するリターンを得ることができると合理的に期待している

 〇です。言わずもがなです。

⑰ XRPは、その商品やサービスが想定するユーザー数やネットワーク機能を必要としている者の数と比べて、より広範に提供されている

 〇です。1000億枚という数字をどう見るかですが、2017年時点、ほとんど実需らしい実需はなく、本来国際送金で想定される量以上に広範に提供されていたのは間違いないと言えるでしょう。

⑱ XRPの購入価格と、XRPと引き換えに取得できる特定の商品やサービスの市場価格との間には、明らかな相関関係はほとんどない

 ×です。取引所のXRP交換を通じて国際送金をするのがビジネスモデルですのえ、購入価格と国際送金時の市場価格には相関関係があります。

⑲ XRPが通常取引される量(または購入者が通常購入する量)と、典型的な消費者(注:ここでは国際送金を行う企業か)がXRPの使用・消費のために購入するであろう商品やサービスの量との間には、明らかな相関関係はほとんどない

 〇です。投機と国際送金実需の量には相関関係はありませんね。

⑳ Rippleは、XRPのネットワークを確立するために必要とされる金額を超える資金を調達している

 〇です。やや主観的な判断事項ではありますが、XRPの送金ネットワークを確立するために何百億円も必要ないというのが一般的な感覚ではないかと思います。

㉑ Rippleは、公に購入されているものと同じ種類のXRPを保有しており、彼らの努力から利益を得ることができる

 〇です。言わずもがなですね。XRPの価格が上がればRipple社も潤います。

㉒ Rippleは、XRPのネットワークの機能性または価値を高めるために、収益または運営からの資金を継続的に支出する

 〇です。まさにこうしてRipple社は成長してきました。

㉓ XRPが、以下のいずれかを用いて、直接・間接的に販売されている

 ・Rippleの専門知識、またはXRPの価値を構築または成長させる能力

 ・XRPが投資であることを示す言葉、または勧誘された保有者が投資家であることを示す言葉で販売されていること

 ・XRPの売却による収益の使用目的が、XRPネットワークの開発である

 ・XRPネットワークの将来の(現在ではない)機能をRippleが提供するとの見通し(まだいくつかあるが以降は省略)

 〇です。これもほぼ一般的感覚からして当てはまっていることをご理解いただけるかと思います。

 以下の㉔~㉙は、投資家の購入時ではなく、その後に状況が変わることによって、証券性の除外を考慮され得るとされている項目になります。

㉔ XRPの購入者は、Rippleの継続的な開発努力がXRPの価値を決定する重要な要素となることを合理的に期待している

 〇です。まさにその通りです。

㉕ XRPの価値は、それが交換・換金される可能性のある商品やサービスの価値と直接かつ安定した相関関係がない

 〇です。XRPがいくらだろうが、XRPを用いた国際送金は可能です。

㉖ XRPの取引量は、それが交換・償還される可能性のある商品やサービスに対する需要のレベルに対応していない

 〇です。これも主観的要件なので、確定はできないのですが、Ripple社が射程としている国際送金額と取引量の需要レベルが、常に一定割合で対応しているということはないはずです。

㉗ XRPの保有者が、ネットワークやプラットフォーム上で、商品やサービスを取得するなど、XRPが意図した機能のために利用できない

 △寄りの〇です。厳密には、XRPの保有者が国際送金のためにXRPを用いることはできます。が、リップラーに聞きたいですが、「あなたは国際送金をするためにXRPを購入・売却していますか?」と問えば、99.9%のホルダーがノーと答えると思います。基本的には企業が使用することを想定していますので、Ripple社がインセンティブを与えていたのも個人ではなく企業です。XRPの投資家はXRPが意図した機能のために利用しない(できない)ということかと思います。

㉘ XRPの価値上昇から得られる経済的利益が、XRPが意図した機能で使用されることに関連していない

 〇です。価値上昇で得らえる利益と国際送金使用は関係ありません。

㉙ Rippleが、XRPに関する重要な非公開情報にアクセスすることができたり、またはXRPに関する重要な内部情報を保有している可能性がある

 ×です。といってももしかしたら内部情報が何かしらあるかもしれませんが、基本的にはXRPはオープンソースプロジェクトであり、情報は公開されているのではないかと認識しています。(ジェドとのいざこざとか、そういうのを入れて良ければ〇と言えそうですが)

【その他の関連する考慮事項:11項目】

上記で、Howey testの4要件は終了です。以降は、それ自体が証券性でないことを確定するわけではないですが、こういう要素が少なければ少ないほど、証券とはみなしにくい、というものです。主にはユーティリティの概念を採用しており、仮想通貨のユーティリティ性が高いほど、証券としてみなされないよ、ということを言いたいのだと思います。

㉚ 分散型台帳ネットワークとXRPは完成しておらず、運用されていない

 △に近い×です。Rippleの主力製品であったxCurrent、xVia、xRapidを発表したのは2017年8月ですので、本編の起点である2017年5月の時点で「完成していた」というのは若干疑わしいですが、まあ、Rippleネットという意味では存在していたということで、一応×にしたいと思います。

㉛ XRPの保有者は、ネットワーク上でその意図した機能を即座に使用することができない

 悩ましいですが△とします。先ほど同じような項目がありましたが、理論上は、XRPの投資家は、国際送金にXRPを使うことができます。しかし、使いませんよね。真ん中をとって△にさせてください。

㉜ XRPは、利用者のニーズを満たすように設計・実装されていない。例えば、XRPはネットワーク上のみで使用されているわけではなく、購入者がその用途に使用する金額でのみ保有・譲渡されてない

 基本はXRPは利用者(国際送金者)のニーズを満たすように設計されているので、×としたいところで悩ましいですが、投機目的があるのは否めないので、ここも△とさせてください。

㉝ XRPの価値が上昇する可能性がある。 XRPの設計上、その価値は一定のまま、あるいは時間の経過とともに劣化していくものではなく、合理的な購入者は、投資としてXRPを長期間保有する可能性がある

 〇です。2017年時点で、皆がXRPの価値が上昇する可能性があると思ってガチホしていました。

㉞ XRPを他の仮想通貨や法定通貨に変換せずに、そのXRPを使って商品やサービスの支払いを行うことができない(XRPが仮想通貨の場合)XRPは価値の貯蔵庫として機能し、それを保存したり、取り出したり、後で価値のあるものと交換したりすることができない

 ×です。国際送金はXRPを使ってするものなので、XRPをそのまま使ってサービスを実施する、と考えることができるでしょう。

㉟ (XRPが商品・サービスとして機能する場合)、現在、開発されたネットワークやプラットフォーム内で換金して、XRPを取得したり、その他の方法で使用することができない。XRPの購入価格と、それが換金または交換される可能性のある特定の商品またはサービスの市場価格との間には相関関係がない

 ×です。XRPレジャーでXRPを交換することはできますし、購入価格と、国際送金で使われるXRPの価格には相関関係があります

㊱ XRPの価値の上昇から得られる経済的利益は、その意図された機能(注:国際送金)のためにXRPを使用する権利を得ることに付随するものではな

 〇です。XRP価格上昇と、国際送金でXRPを用いるための権利に関係性はありません。

㊲ 潜在的なXRP購入者は、ネットワークを使用し、XRPをその意図した機能のために使用する(または使用したことがある)能力を持っていない

 ㉛と同じです。△とさせてください。国際送金で使えますが、その目的で使っている投資家はほぼ皆無でしょう。

㊳ XRPは、XRPの機能性を重視した方法で販売されておらず、XRPの市場価値が向上することを重視している

 〇です。XRPの市場価値が向上することが重視されてますね。Ripple社も長期的なXRP市場価値の向上を期待しています(再掲)。

㊴ XRPの譲渡制限は、XRPの用途と一致しておらず、投機的な市場を促進するものである

 これは、ノーカウント(計算から除外)としたいと思います。XRPについて特段の譲渡制限はないと認識しています。(今回は文面から明確に判断できませんでしたが、Ripple社のロックアップも譲渡制限に含めて良いのなら、この項目は〇になります。)

㊵ Rippleが二次市場(取引所)での取引を促進している場合、XRPの交換はプラットフォーム(注:国際送金目的)のユーザー間でのみ行われるわけではない

 〇です。XRPの取引は、国際送金目的の人たちだけの間でなされるものではありませんね。

お読みいただきお疲れ様でした(私も書き疲れました)。以上で、SECのガイドラインの全項目の検証が終わりました。

結果は、以下のとおりです。

1.金銭投資・・・・・・1/1(100%)

2.共通性・・・・・・・1/1(100%)

3.他人の努力・・・・・11/11(100%)

4.利益期待・・・・・・14/16(88%)

5.その他の考慮事項・・5.5/10(55%)

合計・・・・・・・・・・32.5/39(83%)

うち1~4(純Howey test分) ・・・27/29(93%)

上記のとおり、少なくとも私の独断と偏見で見る限りは、ほとんどの項目でXRPの証券性が認められる、という結果となりました。

以下、参考に上記を一覧にしたものです。

3.結論(XRPはSECから証券認定されるか?)

ここまで読んだ方は、私が、最終的にXRPが証券認定されると思っていらっしゃるかと思います。しかし、結論を申し上げると、個人的にはこれだけHowey testに該当していても、SECが証券認定する未来はないのでは、というのが現時点の私の考えです。

根拠としては、以下のとおりです。

① XRPの証券性判断はSECにおいて優先事項にならない。

 前編で述べたとおり、XRPはSECにとって優先事項ではなり得ません。私が仮にSECの職員で、上司にXRPの証券性を調べよっか、と問われたとしても、「先輩、これは『共通性』に疑義があってですね、投資家への影響も大きいですし、あと、訴訟も係争中ですし、これを先にやると、なぜXRPが先なんだ、という声も出てきますし、訴訟にも影響が出ます。ここは、慎重に対応してはいかがかと・・」とか適当なことを言って濁すでしょう。

 要はSECだけでXRPを単独判断するのは面倒なのです。「共通性」については、私は一般人なので、鼻くそをほじりながら「〇です」と言うだけで済みますが、これを実際に法と判例に基づいて判断しようとすれば非常に慎重な検討・多量のペーパーワークを要します。Ripple/XRPの関係が通常の企業/証券の関係と比較して特殊なケースであることは間違いなく、同様のケースはこれまでほとんど例がありません。

 そもそも今回のSECのガイドラインが「共通性」の要件にはほとんど踏み込んでいないところを見れば、この段階でSECがXRPの証券性を判断しようとすれば、さらにSEC自身が一歩踏み込んだ解釈をする必要があるからです。他にも怪しいICO案件がある中で、そうしたリソースを割くのはSECにとって得策ではないでしょう。まずは裁判の結果待ち、という考えになるのは仕方ないと思います。

② 仮想通貨の新たな分類を設ける連邦法案が国会提出中。

 今年の3月9日に、「Crypt-Currencty Act of 2020」が連邦議会に提出されています。これは、Digital AssetをCrypto-Commodity, Crypt-Currency, Crypt-Securityという三つの分類に新たに分類し、それぞれの管轄をCFTC, FinCen, SECとするものです。Crypto-Currencyの法案の定義を読めば、それがほぼステーブルコインに相当することが分かりますので、XRPはCommodityかSecurityのいずれかに分類されることになるでしょうが、いずれにせよ、この法案が通れば、仮想通貨(デジタル資産)にはもはや純粋なSecurityという概念はなくなり、せいぜい「Crypto-Security」になるわけです。

 本法案は、起草段階からCFTC, FinCen, SECの三者が共同で検討に加わっていますので、国会で多少の修正はなされるとしても、成立の公算は高いと個人的には考えています。Covid-19の影響で、どこまで審議が進むかは定かではありませんが、こうした法案が提出中であることはSECも当然に認識していますので、微妙な案件を先んじで証券認定することはないでしょう。そして、法案が成立した暁には、XRPが証券(単なるSecurity)認定されることは100%なくなるわけです。

③ カリフォルニアでも証券の定義を明確化する法案が提出中

 上記の連邦法案だけでなく、Ripple社の本社があるカリフォルニア州でも、関連する動きが進行中です。カリフォルニア州では、証券法上の証券の定義をさらに明確化するというよりラディカルな案を採用し、証券法のInvestment Contractにどこまで仮想通貨が含まれるか、というのを明確化しようとしています。(過去に私がTwitterで解説したこともあるので、詳細は以下に譲ります)

 私の見たところ、法案の原案の内容は、XRPは証券に認定されてもおかしくないのでは、というものでした。しかし、州法はそもそも条文が大きく修正される可能性もありますので、今後どうなるかは分かりません。いずれにせよ、こうした動きがSECの周辺で起きているため、彼らとしてみれば、様子見という判断をすることは想像できます。なお、米国は連邦国家ですので、連邦法が最低基準を定め、州法がそれを上書きすれば州法が適用される、という形ですので、カリフォルニア州に本社のあるRippleにとっては、州法の動向は非常に重要なものになると推察しています。

4.おわりに

 以上、SECが短期的な未来において、彼らの意志で単独にXRPを証券と判断することはないだろうという見解を示しました。ここまで読んでいただいて、最後にはしごを外すようで恐縮ですが、仮にSECガイドラインに基づいて検証した結果、いくら証券性があるということになっても、結局、証券認定される未来は来ないのではないか、というのが私の到着した結論です。

 どうでしょうか。ここまで長く読んでこの結論だと、40項目を調べた意味がほとんどないので、不愉快になられたかもしれません。しかし、見方を変えれば、リップラー・アンチリップラーの両者にとって、「腑に落ちないけど、お互い実は取れたので、まあ妥協しても良いか」、と思える着地点になっていませんでしょうか?つまり、リップラーからすれば、XRPが証券認定されるという最悪の展開は免れられ、「ほらやっぱり証券認定されなかったじゃないか」とドヤることができますし、アンチリップラーからすれば、法の正義の下で解釈すればXRPは証券なので、自らの主張の正しさと見識力は守られた、ということになります。ちなみに、私はこの意見を1年ほど前から主張していますが、今のところ誰からも賛同を得られていません笑。

非常に長くなりましたが、以上でSECのガイドラインに照らした40項目のガチ検証は終わりになります。本記事が、Riplpe/XRPの証券性を考えるに当たっての一助となれば幸いです。

 

(おまけ)

以下は、私がこの記事を作成するに当たって調査中に気づいた些細な感想です。有料(5円くらい)ですが、はっきりいって5円の付加価値がある内容でもないので、普通の方は読む必要はありません。今回、本記事を書き上げるに当たっては、日本で(というか世界で)誰もやったことがなかった無意味なことにチャレンジすべく、米国の証券法や裁判文書など普段読み慣れない行政文書を原文で読んだ上で、自分なりにそのポイントを咀嚼するために結構な時間を費やしました。ということで、本記事が参考になったという方におかれましては、私への投げ銭という趣旨で購読いただけると、努力した私の励みになります笑。

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