何故シャンパンはあんなに高いのか?
前回は、シャンパンとスパークリングワインの違いについて書きましたが、今回はもう少しシャンパンについて踏み込んで書いてみたいと思います。
皆さんはシャンパンと言うとどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?きっと、高級で華やかな飲み物のイメージがあるかと思います。実際、シャンパンは他のスパークリングワインよりも値段が高い印象があります。では、何故シャンパンは高いのでしょうか?いくつか可能性を上げてみたいと思います。
まず考えられるのは、シャンパン製造にはとても手間がかかると言う事です。前回お話した様に、シャンパンを名乗るには瓶内二次発酵と言う製造方法を使用しなければなりません。この方法は、製造工程が細かくてとても手間がかかります。故に製造コストが高くなると言う事です。(シャンパンの造り方については、また機会を見て詳しく説明したいと思います)
しかし、世界にはこのシャンパンと同じ造り方で造られているスパークリングワインが沢山あり、全てが高い訳ではありません。よって、これは値段が高い決定的な要因とは言えないかもしれません。
次に考えられるのが、原料ブドウが高いと言う事です。まず、シャンパーニュ地方はブドウ栽培の北限と言われる地域であり、厳しい環境となります。その中で品質の良いブドウを作る為には、より細かなブドウの栽培管理が必要となります。また、収穫は基本手摘みで丁寧に行われる為、他の産地のブドウよりコストが高くなる可能性はあります。
更に、シャンパーニュ地方には村ごとに格付けがあります。上からグラン・クリュ、プルミエ・クリュとなり、その格付けによってブドウの値段が変わります。グラン・クリュ村のブドウを使っている物はより高くなる傾向が考えられます。
次に考えられるのは、シャンパン特有の事情です。通常、ワインは収穫した年のブドウを使って仕込み、その年の年号を記載して出荷されます。しかし、シャンパンではノン・ヴィンテージと呼ばれる物が存在します。
これは、複数年のワインをブレンドして造られるシャンパンです。何故このような事をするのかと言うと、先程も少し触れましたがシャンパーニュ地方はブドウ栽培の北限の為、ブドウが上手く熟さない事もあり、品質がなかなか安定しません。そこで、複数年のワインを混ぜる事で味わいを均一にして質を安定させる造り方をしています。その為、この複数年分のワインを保管しておかなければなりません。それには、場所や管理費などが余分にかかってくるのです。
また、出来上がったシャンパンはすぐに出荷する事が出来ません。これは、最低熟成期間と言うものが法律で決まっているからです。今紹介したノン・ヴィンテージシャンパンで、最低15ヶ月間の熟成が必要となります。つまり、15ヶ月間はこのワインはお金にならないと言う事です。そして、この15ヶ月間シャンパンを保存管理する費用も更にかかるわけです。(ちなみに、ヴィンテージシャンパンと言う単一年のブドウのみで造られた物も存在します。これは、基本的に良いブドウが取れた年にしか仕込まれません。しかも、最低熟成期間は36ヶ月、つまり3年間はお金になりませんし、その間保存管理費だけがかかっていく訳です。従って、ノン・ヴィンテージシャンパンよりも高くなります)
さて、これまで色々な可能性を上げてきましたが、実は今回、私が一番言いたかった事は、他にあります。それは、シャンパンにはめっちゃ宣伝広告費がかかってると言う事です(笑)
そこ〜?と突っ込まれそうですが、皆さん良く考えてみて下さい。みんなスパークリングワインを見かけると、すぐにシャンパンだ!と言う光景を良く目にしませんか?中には、普段お酒を飲まない人でさえも、シャンパンと言う名称だけは知っているのです。これって凄くないですか?
思えば、アパレルブランドなど、有名なブランドとシャンパンメーカーがコラボした広告を見かけたり、野球やサッカー、 F-1などのスポーツの世界でも、優勝したらシャンパンをかけあって喜ぶシャンパンファイトの光景を見かけた事があるかもしれません。
つまり、これぐらい私達の中にはシャンパンに対しての認知度が刷り込まれていると言う事です。そしてこれは、何も日本に限った事ではありません。恐らく、相当な広告宣伝費を使わないとここまでの認知度は得られない訳です。そして、その広告宣伝費を回収する為には価格に上乗せするしかないのです。
いかがでしたか?もちろん、他にも様々な要因があるとは思いますが、この宣伝広告費はかなりの比重を占めていると思います。しかし、この徹底した宣伝広告効果により、元々品質の高かった商品にプラスしてブランドイメージを付加する事に成功し、今やシャンパンは世界に君臨するスパークリングワインの地位を手に入れた訳です。
普段の食卓はお手頃なスパークリングワインで楽しみつつ、ここぞと言う時には奮発してシャンパンの味わいと共にその豪華な雰囲気を楽しむのも良いかもしれません。