苦痛のトレーサビリティで組織を改善する 6: 「主体–責任」から「苦痛トークン–分散的変更」へ
苦痛トークンのアイデアを示すために記したAIやルーティングアルゴリズムの使用は、とても観念的なもので、現実的にはデータの不足や再現の不可能性、タスクの不明確さ、報酬定義方法、学習の失敗など、様々な問題、特にAIの仕様変更を巡る問題が生じる。
これらを考慮すると、ルーティング変更規則は、機械学習を使わず、誰にでも意味の明らかな非常に単純なルールで機械的に行うという手もある。ただし、その場合は環境への適応能力が犠牲になるかもしれない。ポイントは、特定主体の責任・裁量が可能な限り無関係になるように、自動化・分散化・明示化することにある。
では、仮にそのようなシステムが機能したとして、「誰かにとって不幸な組織変更が起きた場合、誰が責任を取ればいいのか?」、という疑問が生じるかもしれない。
しかし、誰か特定の人間・主体に「責任」を取らせる、という方法自体、システムが複雑化した場合の制度維持方法として、もはや効果がなくなりつつある、と考えることもできるではないか。苦痛トークンは、「主体–責任」というペアを、「苦痛トークン–分散的変更」というペアに置き換えようとしているとも言える。
Credits:
原案:西川アサキ
草稿執筆:古谷利裕、もや
同時編集:VECTION
冒頭画像:Hexagonal Tile Ensemble with Sphinxca. 1160s–70s
本稿は、「ブロックチェーンとレボリューション──分散が「革命」でありうる条件とはなんですか?
r/place的主体とガバナンス──革命へと誘うブロックチェーンとインターフェイス から、苦痛トークンとPS3について記述された部分を取り出して、加筆、再編集したものです。