「石橋、薪を焚べる」私的に神回だった話
最近は、ついついシャンパン話に花が咲いてしまいまして(笑)まだまだ、シャンパンについて書きたい事があるのですが、今回はちょっと箸休め的に、別の事を書きたいと思います。
皆さんは、「石橋、薪を焚べる」と言う番組をご存知ですか?フジテレビで深夜に放送されている番組で、とんねるずの石橋さんが毎回色んなゲストを招いて、焚き火を囲みながら色んな話を聞くと言う、とても緩い雰囲気の番組です。個人的に、アウトドアも好きなので、焚き火を囲んでいる雰囲気も楽しみながら毎回観ていました。
さて、少し前ですが、何気なく番組を観ていたら、小泉武夫さんと言う方がゲストで出演されていました。恥ずかしながら、私は最初この方がどんな方なのか全く存じ上げておりませんでした。しかし、話が始まるととても興味深い内容だったので、思わず身を乗り出して観てしまいました(笑)
その内容とは、ズバリ「発酵」についてでした。そう、この方は発酵学の第一人者のとても有名な方だったのです(存じ上げず失礼しました!)。
いつもワインや日本酒の話をさせて頂いてますが、どちらもこの「発酵」が無ければ存在しない代物であり、この世界とは切っても切れない関係なのです。そんな、私的には神回であった「発酵」について、少し紹介したいと思います。
まずは、小泉先生のプロフィールを簡単に。福島県の造り酒屋の生まれで、ご本人は発生生物学を学びたかったそうですが、実家の造り酒屋を継ぐ為に東京農業大学の醸造学科に進まれたそうです。そして、ここで発酵に魅せられてしまい、酒屋を継がずに学問の道に進まれたそうです。
まず話は、発酵と免疫力の関係について始まります。日本は発酵王国と言われるぐらい豊かな発酵食品文化を持ち、その発酵食品には免疫力を高める効果があるそうです。実際、岩手県でコロナウイルスの感染者がいない要因の1つには、発酵食品が関係している可能性があると言うのです。岩手は、全国でも納豆の消費量が高く、それによって免疫力が高まりウイルスに感染しにくくなっているのでは、との事でした。
そして小泉先生いわく、納豆菌は最強の菌らしく、食中毒の菌と戦わせても納豆菌が必ず勝つらしいのです。更に、納豆菌は耐熱胞子を持っているので熱にも強い、まさに納豆菌最強説(笑)実際、酒蔵に行く時には納豆を食べてはいけないのですが、これは納豆菌が酒蔵に住み着く様々な微生物菌よりも先に繁殖してしまい、酒造りに影響を与えてしまうからなのです。酒蔵見学に行く際には、皆さんもご注意下さい。
また、発酵と腐敗についても説明されていました。これは、どちらも微生物によって引き起こされる現象なのですが、人間にとって有益な菌(善玉菌)によるものは発酵であり、人間にとって有益ではない菌(悪玉菌)によるものは腐敗と定義される訳です。よく納豆は元々腐ってるから大丈夫、なんて言う方がいますが、あれは決して腐ってる訳ではなく、人間に有益な発酵が起こり、最強の納豆菌によって他の腐敗菌などを寄せ付けないから大丈夫なのです。腐っていたら納豆でも食べられません(笑)
更に、話は麹菌へと移っていきます。麹菌は、日本酒を造るのに無くてはならない菌なのですが、実はこの麹菌は日本にしかいない菌なのです。その為、麹菌は日本の国菌として認定されているのです。日本にしかいないって凄い事だし、何か誇らしい気持ちにもなりますね。そして、この麹菌から造られる食品、例えば日本酒、醤油、味噌、みりん、酢などは、日本固有の食文化と言う事になります。
麹菌には、主に日本酒や味噌、醤油などを造り出す黄麹菌と、焼酎などを造り出す沖縄に住む黒麹菌があります。黒麹菌は大量のクエン酸を造り出すのですが、この酸性によって他の菌を寄せ付けない環境を造り出す為、沖縄などの暑い地方でも酒造りが可能になっているのです。いや〜、よく出来てますよね。
こうやって考えてみると、改めて我々の生活は微生物による発酵無くしては成り立たない事が分かりました。日本酒もそうですが、国菌によって造り出された日本固有の食文化を、改めてリスペクトして、後世に残し、世界へ伝えていかなければと思いました。いや〜、それにしても発酵の世界って奥深い、皆さんも発酵の世界に少しでもご興味を持って頂けたら幸いです。