週刊暗号資産決済ニュース【2022年10月第3週】

週刊暗号資産決済ニュース【2022年10月第3週】

先週は、1ドル=151円台となるなど円安ドル高が進みましたが、金曜日に為替介入が行われ、現在は約147円台で推移しています。米国におけるインフレの高止まり/利上げ減速後の国際経済に関する展望や円安ドル高に関する米日間のコンセンサスなど多角的な議論が交わされた一週間でもありました。✌️

・増税、財政緊縮によるインフレの再発防止

・景気後退による経済悪化の改善策としての金融緩和

・有事下における「財政緊縮⇆景気回復」の実現

について各国の政府、中央銀行は検討/対応が必要とされ、2023年においては「財政緊縮⇆景気回復」のバランスをどのように図るかが貨幣/経済領域の新しい社会実験となるのかもしれません。

国際社会においては、米国中間選挙において共和党が優勢であることや英国においてトラス英首相が大型減税策撤回後に辞任表明するなど、新しいフェーズの到来を予感させる出来事が相次いでいます。また、米国においてはインフレ鎮静後の景気後退期においてどのような経済成長のトリガーを創出するかが問われている一方、欧州では電気代の高騰など市民生活自体が困難な状態が続くと予想されます。

そして、中国においては胡錦濤前主席が中国共産党大会の閉幕式で強制的に退席させられ、台湾独立反対が中国共産党規約に盛り込まれるといった取り組みも確認されています。英国における大型減税策の撤回が、金融政策の正常化へのきっかけとなるのではとポジティブな見方もできますが、国際社会全体が景気後退とともにどのように変化していくのか注目です。

日本は、異次元緩和を維持する中で為替介入を行ってきましたが、

日銀総裁交代による金融政策転換

・利上げ減速後の円安ドル高の反転

・米国の金融緩和再開によるインフレへの対応

などについて議論の活性化が期待されます。

国家への信頼が揺らぐ中で、「貨幣/経済領域の新しい社会実験としての暗号資産」にも関心が集まる場合においては、ボトムアップなエコシステムの形成が様々な思想/主義と結びついてどのように社会実装を遂げるのか注目ですね。😊

では、先週の暗号資産決済ニュースを振り返っていきましょう!

✅Bitcoin/Lightning Network

・ビットコインのボラティリティが、S&P500/ナスダック/VIXインデックスよりも低くなり、より安定的な資産としての認識が広がっています。世界経済の混乱によって株式市場のボラティリティが高くなることは必然と言えますが、ビットコインが「価値保存」から「価値交換」へとその手段が移行するにしたがって、株式市場との相関性も低下していくのでしょうか?

・暗号資産決済事業者「Speed」は、WooCommerceで使えるLightning Networkプラグインをリリースしました。Eコマース市場でLightning Networkがより簡単に導入できることで、さらなる普及が期待されます。

・アルゼンチンでは80%以上のインフレ率によって、食事の際にも多くの紙幣が必要となっており、このような国や地域においては一刻も早い法定通貨の代替手段の普及が急務であるといえます。

アフリカにおいてはブートアップなどでビットコインに関する教育活動が行われています。各国におけるビットコインに関する教育活動が中長期的にどのような市場形成に繋がるのか注目です。

・日本では、coindesk「ビットコイン:通貨と国家を切り離す【コラム】」をきっかけに人工物であるビットコインの栄枯盛衰といった新しい観点からの考察などが確認されました。

・Lightning Networkは、コミュニティ起点でSNSでのプロモーションが盛んに行われ、企業も積極的に採用を進めています。このことは、暗号資産決済市場全体の発展を目指す上でも大きな参考になることでしょう。

(Ex)

米国/ミシガン州

スペイン/サンセバスチャン

ブルガリア

✅各市場における取り組み

・大手決済会社のMastercardがPaxosとパートナーシップを締結し、金融機関を通じた暗号資産関連サービスの提供などを行うことを発表。従来の仲介業者によるエコシステム形成は多くの人々をクリプトに呼び込むことが期待され、暗号資産決済のみならず、包括的な市場形成を促進させるでしょう。

Walmart CTOのSuresh Kumar氏は、暗号資産が、メタバースとソーシャルメディア全体で重要な決済手段になることを示唆しました。顧客が製品を発見する方法が多様化する中で、デジタル空間における暗号資産を活用した少額決済も成長が期待されます。

Chainalysisは、ラテンアメリカにおける暗号資産決済市場の発展についてのレポートを発表。2022 年は、送金需要と高インフレを要因に、暗号資産送金市場が1,500 億ドルに達したと推定しています。

✅Stablecoin

ブラジルにおいては、11月3日から24,000台のATM「Banco24Horas」でUSDTの提供が開始されることが明らかになりました。来年2月からは、ブラジルレアルをATMに預け入れることで、ウォレットで USDTを受け取ることができるようになるとのことで、「暗号資産決済×金融包摂」の観点からも大きなきっかけとなることでしょう。

USDCの時価総額は、約3か月で約105億9,000万ドル減少していることが明らかになりました。トルネードキャッシュ事件やBUSDの台頭などが減少要因とも考えられますが、CoinbaseがUSDC と法定通貨間の両替手数料を免除することを発表するなど巻き返しが期待されます。

BUSDの総供給量は220億ドルに達し、ステーブルコイン市場の総供給量1,400億ドルの内、15.48% を占めていることが明らかになりました。Binanceは発展途上国への進出も積極的に行うなど、持つ者と持たざる者が明確に分かれてしまうCrypto市場においてBUSDを活用した新たなエコシステムを創出しようとしているのかもしれません。

✅CBDC

・香港金融管理局は、国際決済銀行 (BIS) イノベーションハブと共同で、CBDCのプロトタイプ「Aurum」を発表。リテールCBDCに裏付けられた、インターバンクシステムで使用されるステーブルコインといった独自のRTGS(リアルタイムグロス決済)設計を採用しているのが特徴です。

・米国下院議員のジム・ヒメス氏は、CBDCのパイロットプロジェクトを推進する必要があると述べています。このことは「(CBDCへの取り組みについて世界に)取り残されることを望んでいない」というジム氏の考えに基づいているとしており、米国ではまだ政治的決定に向けた議員間での調整段階にあるとも考えられます。

まとめ

今回は、米国におけるインフレの高止まり/利上げ減速後の国際経済などを前提としてみましたが、個人的にはインフレが少しでも沈静化傾向であることが判明した場合に、各市場がどのような反応をみせるのかに一番注目しています。ただ、インフレの沈静化が数値としてはっきりと現れないままに景気後退だけが進んでいく傾向が長期化する場合は、貨幣/経済領域の新しい社会実験どころの話ではないですよね。先進国においては政治経済の面で大きな混乱が11月以降にも予想されるため「暗号資産決済×金融包摂 × 発展途上国」による次の経済成長の可能性について学びを深めたいところです。ブラジルでUSDTがATM経由で普及し、バイナンスが各国での展開を進めBUSDの利用が拡大する未来においては、従来の国家による貨幣/経済では行き届かなかった層への金融サービスの提供が大きなテーマとなることでしょう。

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