仮想通貨の税率は50%ってホント? 税率を株・FXと比較した結果
「仮想通貨の税率は株やFXの申告分離課税と比べると高い」と言われます。
原因は仮想通貨の利益が雑所得として総合課税されることにあります。
総合課税では雑所得と給与所得等の他所得を合算し税率を計算しますが、税率は最大で45%(住民税合わせて55%)となります。
一方で株やFXは申告分離課税となり税率は15%(住民税合わせて20%)です。
最大税率だけ比べると仮想通貨は株、FXに比べ圧倒的に不利に思えます。
しかし総合課税の所得税は累進課税(所得が増えるほど税率上昇)なので仮想通貨の利益が少ない場合はそこまで株と変わらないのではないかと思いました。
そこで実際の税率を仮想通貨(雑所得総合課税)と株・FX(申告分離課税)で計算しグラフ化、比較してみます。
前提
・所得税+復興特別所得税+住民税(所得割)の合計税率
・令和二年(2020年)の税率及び控除額で計算
・基礎控除と給与所得控除は含む
・雑所得の経費(通信費等)は0とする
・社会保険料控除は計算外(0とする)
・配偶者控除、医療費控除等場合によるものも計算外(0とする)
・住民税の均等割は計算外(0とする、標準は5,000円)
・仮想通貨、株・FXの利益額は5万円刻みで計算
収入が仮想通貨 株・FXのみの場合
縦軸が税率、横軸が取引利益額(基礎控除前の金額)です。
約475万円までは仮想通貨(雑所得総合課税)の方が税率が安くなっています。
利益額40万付近まで税率0%なのは基礎控除の影響です。
利益額が増えるほど累進課税により仮想通貨の税率は大幅に高くなります。
収入が給与所得350万円+仮想通貨 株・FXの場合
縦軸が税率、横軸が給与所得+取引利益額(基礎控除、給与所得控除前の金額)です。
給与所得額を暫定的に350万円としています。
給与所得+仮想通貨利益が約495万円を超えるまでは株・FXとほぼ同じ税率です。
495万円は給与所得額350万円を引くと約145万円の仮想通貨利益額です。
こちらも利益額が増えるほど仮想通貨の税率は大幅に高くなります。
まとめ
給与所得が無い場合
約475万円までは仮想通貨の方が税率が安い
給与所得額を350万円とした場合
総所得約495万円、取引利益約145万円までは仮想通貨と株・FXの税率はほぼ同等
考察
475万円、145万円という額が多いか少ないかは個人的な金銭感覚によるかと思います。
具体的な金額はともかく結果から見える戦略などを考えます。
(デリバティブではなく現物取引前提で)
・単年で大きく利益確定するとやはり税率は高い
もちろん大幅に値下がりすることが予想できるのであれば高い税率でも利益確定する方が利益が大きくなる可能性もあります。
逆に予想が外れて値上がりした場合や価格が変動しなければ高い税率の分、損する可能性もあります。
値動きを予測するのがそもそも難しいですが、税率も含めた最適な利益確定のタイミングを判断することは更に難しいと思います。
・多年に渡って少額ずつ利益確定を行う
税率が高くなりすぎない範囲で多年に渡って利益確定することで税率を抑えます。
これは価格の変動幅が少なく長期で上昇が見込める通貨、又は価格が安定している通貨が向いているかと思います。
(ただし長期で上昇が見込めるのならば早急に現金が必要な場合を除き、そもそも利益確定自体する必要がないですが…)
逆に変動幅が大きく短期の上昇相場で利益確定をしなければならない通貨は
高い税率になってでも利益確定する方が利益が大きくなると予想されます。
・最終的には仮想通貨が申告分離課税になることを期待し長期保有する
10年後なのか20年後なのかは分かりませんが、仮想通貨が申告分離課税になれば解決です。
長期で上昇が見込める通貨が向いているかと思います。
稚拙な考察ですが以上です。
なにかの参考になれば幸いです。
※間違いなどあればご指摘お願いします。
参考資料
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁
所得税のしくみ|国税庁
個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁
No.1199 基礎控除|国税庁
No.1410 給与所得控除|国税庁
住民税
住民税基礎控除
住民税給与所得控除
おまけ
グラフ化に使ったEXCELファイルを添付します。
もともと自分用に計算するためのものなので
他の方がすぐ理解して使える作りではありませんがおまけなので。