「FBI捜査官 ドジ・コイン」

「逃走用車両と1億ぺぺキャッシュを用意しろ。交渉の余地はない。30分ごとに人質をひとり撃つ。こちらには10人の仲間がいる。突入しようなどと思うな。」

無線の向こうから女性銀行員の咽び泣く声が聞こえた。

どうしたらいい・・・。銀行の警備主任のマルクは困っていた。

マルクが仕事中にコーヒーとドーナツを買いに行っている隙に、銀行のセキュリティに弱いところがあって、銀行強盗が発生してしまったのだ。監視カメラは破壊され、窓はカーテンでふさがれて内部の様子はわからない。

わかっていることは銀行員と数人の客が人質にされていることだけだ。

1億ぺぺキャッシュなんて大金、どうやって用意すればいいんだ・・・。

そこにひとりの男がやってきた。

「おはよう諸君、FBI捜査官のドジ・コインだ。私が来たからにはもう安心だぞ。ここの責任者は?」

「私です。警備主任のマルクです。」

「マルク、よろしくな。若いのう。心配するな、あとは全部私に任せるがいい。無線をこっちに寄越すんだ。」

マルクは言う通りにした。

「聞こえるか、こちらはドジだ。FBI捜査官のドジ。そちらにいるのはレア・ぺぺだな?すでに調べはついているぞ。」

どうやって?マルクは思った。中の様子はわからないのだ。それなのにすでに犯人の名前を特定している。さすがFBIだ。

「どうして俺の名前を・・・。」

「心配するな。ぺぺくん、君の望むものはすべて用意する。人質の命が最優先だ。」

「逃走用車両と1億ぺぺキャッシュだ。5分後に最初の人質を撃つ。」

「わかった。1分で用意する。マルク、裏口の警官たちをどけなさい。私が車両と1億ぺぺキャッシュを犯人に届ける。全部私に任せなさい。時間が無い。急ぐんだ。」

マルクは言う通りにした。

ドジは走ってどこかに消えたかと思うと車に乗って戻ってきて、そのまま裏口に向かった。

このまま無事に解決してほしい。マルクは心の底から願っていた。そのとき、ひとりの男がやってきた。

「おはよう諸君、FBI捜査官のイ・サリアムだ。私が来たからにはもう安心だぞ。ここの責任者は?」

マルクは困惑した。

「またFBI捜査官ですか?先ほどドジ・コインさんがきて犯人のところに向かいましたよ?」

「ドジ・コイン?そんなやつは知らんぞ」

そしてイ・サリアムは理解した。

「バカもん!そいつは犯人の仲間だ」

銀行の裏口からひとりの男がでかいカバンをいくつも持って出てきた。

「テスラで来たぜ、イーロン。」

ドジ・コインが車のドアを開けて待っていた。

「あいつらまんまと信じたよ。仲間がたくさんいるとか、人質を撃つとかな。1億ぺぺキャッシュも・・・、そんなゴミ要るわけねえのにな。迫真の演技だったぜイーロン。あいつらお前のことレア・ぺぺだと思ってるぜ」

「ドジちゃん❤相棒ちゃん❤️この金でどこ行く?❤」イーロンは大麻でハイになっていた。

「そうだな、まずは・・・どこかふたりきりになれる場所だな」

「ドジちゃんだいちゅきい❤️」

終わり

「FBI捜査官 ドジ・コイン」のご愛読ありがとうございました!兎弐先生の次回作にご期待ください・・・!

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