話題のTAXトークンについて
こんにちは。サラリーマンの紫藤かもめです。
みなさんお気付きだと察しますが、DeFiランドにまた新たな動物園が誕生しました。TAXトークンです。
この記事では、このTAXトークンに付随するコントラクトの本質的な構造について、自分なりの理解を示したいと思います。
結論
本質的にネズミ講の構造を持っています。先に参加した人が後から参加した人の参加費用をもらうことができるようになっており、最後の方に参加した人が必ず損します。ご注意を。
この記事での説明について
網羅的な解説をすると主張がぼやけてしまうので、本質的と思われる部分のみを説明し、色々と省略をします。たとえば、このTAXトークンはETH以外のトークンを使って参加することもできますが、恐らくETH以外のトークンの流動性が上がることはないので、その部分は省略し、ETHを使って参加するものと説明しています。
また、間違った部分があれば修正しますので教えていただければ幸いです。
TAXトークンがどうやって発行されるか
TAXトークンをデプロイした団体は、TAX Heavenと名乗っています。
まず、TAX Heaven は Lendingプロトコルです。彼らは、課税回避云々の主張をしていますが、そこはどうでもいいです。忘れてください。
Lending プロトコルですから、ETHを貸し出すことができます。そしてそれを担保にETHを借りられます。この際の手数料は0.5%(+ガス代)です。例えば、100ETHをLendingすると、99.5ETHを借りられます。返済期限、返済義務はありません。返さなくてOKです。
これだけだと意味不明ですが、Lendingした際にトークンをもらえます。このトークンがTAXトークンです。プレマインなどはなく、この方法でしかTAXトークンを発行する方法はありません。
TAXトークンの発行レート
貸したETHをUSDに換算し、その額に対して、1USD=1TAXのレートで現在発行されます。ただしこの発行レートは貸し出されたETHの総額が増えると下がっていきます。簡単に言うと、半減期のようなものがあり不連続に指数的に減っていきます。一番右が発行レートです。
https://medium.com/tax-heaven/introducing-tax-heaven-%EF%B8%8F-4d8a45e14ad2
また、この新規TAXトークン発行の際に、ETHを貸した人に実際に渡るのは85%で、残り5%は運営に、残り10%はUniswapの流動性提供者へ流動性マイニングで分配されます。そのため、例えば現在ETHの価格は565ドル程度ですので、100ETHを貸し出した際に得られるTAXトークンは48000TAXほどになります。
強調すべき点は、
- 運営がノーリスクでトークンを得られる
- 発行レートが指数的に渋くなる
あたりでしょうか。
つまり何ができるか?
例えば、100ETHを貸し出すとすると以下のようなことができます。
- 100ETH貸す
- TAXトークンゲットだぜ!
- 99.5ETH借りる(返す必要なし)
- 99.5ETH貸す
- TAXトークンゲットだぜ!
- 99.5ETH x 0.995 借りる(返す必要なし)
- 99.5ETH x 0.995 貸す
- TAXトークンゲットだぜ!
- 99.5ETH x 0.995 x 0.995 借りる(返す必要なし)
- 99.5ETH x 0.995 x 0.995 貸す
- TAXトークンゲットだぜ!
- 99.5ETH x 0.995 x 0.995 x 0.995 借りる(返す必要なし)
- 99.5ETH x 0.995 x 0.995 x 0.995 貸す
- TAXトークンゲットだぜ!
このように、0.5%分の手数料を払いながら延々とTAXトークンを発行できます。これだけだと意味不明ですね。
手数料の行方
ここからが本番です。0.5%の手数料を払って、ひたすらETHを減らしていってるように見えますが、この0.5%の手数料は、TAXをデポジットしてステーキングしている人に山分けされます。
なので、お猿さんがやることというのは、
- とにかくETHをぶん回して、TAXトークンをいち早くゲット
- それをデポジットしてステーキング
- 後から来るお猿さんが、またぶん回してくれるのを待つ
- 後からきたお猿さんが払った手数料をゲットしてウマー
はい、完全なネズミ講ですね。ということで、このため界隈では、新たなネズミ講がきたと話題になっています。
重ねて言いますと、TAXトークンを初期の方に発行してステーキングにロックしている人に大きな先行者利益がある構造です。発行レートがどんどん渋くなることもこの先行者利益を加速させる構造ですね。
なぜ回りくどいトークン発行方法をしているのか?
見かけのTLVをレバレッジをかけて大きくみせかけるためです。
例えば、100ETHを用いて50回貸し借りを繰り返した場合どのくらいETHを貸し出せるでしょうか?式で言えば以下のようになります。
100 + 100 x 0.995 + 100 x 0.995 x 0.995 + 100 x 0.995 x 0.995 x 0.995 + ...
これは簡単な等比数列の和ですね。
この式を使って計算すれば、100ETHを50回貸し借りしたら、総額で4433ETHほど貸し出せますね。そしてその分のTAXトークンを得ることができるわけです。現在のレートでは50回回すと213万TAXほどのトークンを得ることができます。この際に払った手数料は、(ガス代を除くと)4433ETHの0.5%で22ETHほどになります。
実際にサイトを見てみると、現在貸し出されている分と借りられている分は8ミリオンUSDほどでピタリと一致しているのがわかり、TLVはみかけの貸し出しの総額で表示されていますね。
例えば、このままどんどん「貸し出し」が進んで、TLVが100ミリオンともなれば話題になるかもしれませんが、本質は虚無です。
そもそも担保の清算を行う処理周りなどは本当に実装されているのでしょうか?という疑問もありますがその辺りについては調査しておりません。
ネズミ講について
言いたいことはだいたい書き終わりましたのであとはいくつか補足をしておきます。
ネズミ講は日本では法的には、無限連鎖講と呼ばれます。ちなみに、筆者はこの呼び名の方が本質を表していて好みです。講というのは、この場合、「集まり」くらいの意味だと思います。例えば、日本には古来から、頼母子講(たのもしこう)と呼ばれる相互扶助の集まりがあります。
ネズミ講について詳しく説明する必要はないと思いますが、念の為強調させていただきたいのは、ネズミ講を主催、勧誘する行為は日本では現在、違法行為です。
昭和五十三年法律第百一号「無限連鎖講の防止に関する法律」には以下のような罰則が規定されています。
- 第五条 無限連鎖講を開設し、又は運営した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 第六条 業として無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
- 第七条 無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、二十万円以下の罰金に処する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/無限連鎖講の防止に関する法律
なぜこれが違法行為であるかというとそれは明白で、最後の方に参加した人が必ず損をする構造になっているからです。そのような迷惑な行為が横行すると世は乱れますので、違法とされるのは当然と考えます。
TAXトークンが本質的にネズミ講的性質を持っているからといって、このスキームが違法とは言えないかと思いますが、ネズミ講というものは上記のようなものだということを補足しておきます。
ちなみに、日本でネズミ講を主催したもっとも有名な団体は、「天下一家の会」です。筆者が始めてネズミ講の存在を認識したのも、テレビ番組でこの天下一家の会のドキュメンタリー番組が放映されていた際でした。もはや細かい内容は覚えておりませんが、非常によくできた放送内容で衝撃を受けました。確か主催者の人が「儲かりすぎて恐ろしくなった」と言ったという話が出ており、現在でも通用するハイセンスな団体名も相まって非常に印象的でした。この事件以前は、ネズミ講は犯罪行為ではなく、ネズミ講が法的に規制されるきっかけとなった事件だと認識しています。この事件についてもし詳しい方がいらっしゃって、記事を書いていただけたら投げ銭をさせて頂きます。
最後に、自分の気付いた細かいあまり注目されなそうな点を少しだけ書いておきます。