ワインの「開いている」「閉じている」「飲み頃」とは?~前編~

ワインの「開いている」「閉じている」「飲み頃」とは?~前編~

みなさんこんにちは。みなさんは、ワインの表現で「開いている」、「閉じている」、「飲み頃」と言った言葉を聞いた事はありませんか?私自身も過去の記事の中で何度か使っていて、ワイン好きの間ではよく知られた表現なのですが、実は意外と正しく理解されていない概念でもあります(私もそうでした(笑))。そこで、今回はそんな3つの表現について詳しく見ていきたいと思います。

まず、「開いている」と言う表現ですが、これはワインの香りや味わいが一番良い状態を迎えている事を意味します。スポーツ選手に例えると、試合当日のウォーミングアップが終わり、いつでもトップフォームで競技に臨める状態だと言えます。私の頭の中のイメージだと、

こんな感じです(笑)。

逆に、「閉じている」と言う表現は、ワインの香りや味わいが良い状態を迎えていない事を意味します。これをスポーツ選手に例えると、ウォーミングアップが終わっておらず、今すぐに競技に参加したとしても、良いパフォーマンスを見せられない状態だと言えます。私の頭の中のイメージだと、

こんな感じです(笑)。

そして、「飲み頃」と言う表現は、そのワインが最も美味しく楽しめるピークの時期(ワインが出来た年から5年以内が飲み頃、出来た年から10年後に飲み頃を迎える、と言うように表現します)を意味します。これをスポーツ選手に例えると、その選手の中で最も競技能力がピークに達している時期(期間)だと言えます。

恐らくこれらが、一般的に知られている「開いている」、「閉じている」、「飲み頃」の定義だと思われます。実際に私も、これまではこういう認識を持っていました。ですから、もし飲もうとしているワインが「閉じている」状態であった場合は、美味しく飲む為に「開いた」状態にしようとするわけです。

では、「開いた」状態にする為にはどうしたらいいのでしょうか?スポーツ選手で言うウォーミングアップに該当する行為、それはワインを空気と触れさせる事なのです。

よく知られているのは、デカンタと言う容器にワインを移す事で空気とワインを触れさせるデカンタージュと呼ばれる方法です。あるワイン漫画では、かなり上の方からデカンタにワインを注ぎ込むと言う神業を披露していましたが、あれもより多くの空気と触れさせる為の行為です(家でやったら失敗して大惨事になるので要注意です(笑))。

まあ、空気とワインがしっかりと触れあえばいいので、デカンタージュ以外にもグラスに入ったワインをグルグル回すスワリングでも空気とワインは触れあいますし、グラスに一度注いだワインをそのまま別のグラスに移すだけでも、デカンタージュと同じような効果が得られるわけです。

このように、これまで私は「閉じている」ワインをデカンタージュなどによって意図的に「開いた」状態に出来ると思っていました。ところが、少し前にある有名なソムリエの方のお話を聞いた時に、衝撃的な発言を聞きました。それは・・・

「「閉じている」ワインはデカンタージュをしても「開く」事はありません」と言うものでした(笑)。

えー!?そうなんですか!?今まで「閉じている」ワインは「開いた」状態に意図的にする事が出来ると思っていた私には、まさに衝撃的な内容でした。では、一体どういう事なのでしょうか?

まず、ワインには先ほど「閉じている」と表現したように、香りがあまり立たないような状態はあるそうです。しかし、その時にスワリングやデカンタージュをして香りが立つようになった場合は、そのワインは「閉じている」のではなくて「還元状態」にあったと表現するそうです。つまり、スワリングやデカンタージュをしても香りが「開いた」状態にならないワインの事を、初めて「閉じている」と表現するのだそうです。

だんだん難しい話になってきましたが(笑)、では、まずは新しく出て来た表現、「還元状態」とは一体どんな状態なのでしょうか?

これは簡単に言うとワインが「酸素不足」の状態にある事を表す表現です。酸化の逆の状態と考えればわかりやすいかもしれません。ワインは、瓶詰されるとコルクによって栓をされて密閉状態になります。この時、コルクは空気を瓶内に通すのですが、その量はごく微量です。そして、ワインは瓶内で酸素を消費して酸化熟成をしていきますが、時間の経過と共に瓶内の酸素量は減っていき、徐々に酸素不足の状態、つまり「還元状態」になっていくのです。

また、コルクよりもスクリューキャップの方が空気を瓶内に通しづらいので、より「還元状態」になりやすいとも言われています(ただ、スクリューキャップの中にはコルク並みに空気を通すものもあるので一概には言えませんが)。

そして、この状態のワインを開栓すると、ワインが酸素不足の状態なのですぐには香りが立たない状況が生まれる訳です。これで、なんとなく「還元状態」についてはわかりましたが、では、「閉じている」ワインとは一体どんな状態なのでしょうか?そのソムリエの方は、

「(香りが立たない場合)若いワインのほとんどは「還元状態」であるが、ある程度熟成してくると「閉じた」状態になる」

とおっしゃっていました。つまり「閉じた」状態になるにはある程度の時間がかかると言う事なのです。このメカニズムを知る為には、ワインの香りの特性について知る必要があるのですが、その話はまた次回にしたいと思います。

いかがでしたか?たまにはアカデミックな内容もいいかなあと思って書いてみました(笑)。もちろん続編も書く予定ですが、続編もこんな感じの話が続きますので、ご興味のある方はぜひご覧になって下さい(笑)。

この続き : 350字 / 画像 0枚
100

会員登録 / ログインして続きを読む

関連記事

記事を書いた人

ワイン、日本酒、音楽、サッカー、アウトドア好きです。お酒にまつわる面白い話を書いています。また、ネットでワインショップ「LIFE WITH SAKE & WINE」をオープンしました。10%オフクーポン「open2021」(お1人様1回有効期限無し)ご用意したのでぜひご覧下さい!

SNSにシェア

このクリエイターの人気記事

芸能人格付けチェック、なぜ白ワインと赤ワインを間違えるのか?

1475

シャインマスカットで飲む

1185

シンポジウムの語源にワインあり?

926