Monaparty で芋は買えるか
芋でなくても良いですが。シフォンケーキとかコーヒー豆とか。
もう少しプラットフォーム寄りに言い換えると、
「オフチェーンの取引で必要となる、エスクローのプラットフォームとして Monaparty は使えるか?」
というお題になります。
Ⓜ️
先に結論だけ言うと、メッセージを追加、または軽微な拡張を行うことで、現実的な手間で構築可能な気がします。
モナッピーのマケプレのようなフルスペックのものは、MVP を検討するには規模が大きすぎます。まずは、Purse や Avacus のような「Amazon ほしいものリストの購入代行」を考えてみます。
これは要するに、Binary Bet の亜種として実現できます。
…とはいっても賭博をするわけではありません。エスクローの手段として使います。
取引の流れ
仮に XMP アセットを使って Amazon で買い物をしたい Alice 、購入代行をして XMP (を経由して、より流動性の高いアセットや $MONA なり) を得たい Bob、仲介業者の Carol が居たとします。
正常系の流れ
Alice は、取引対象となる欲しい物リストの URL と、成立時の支払手数料を Carol に告げます。
Carol は Bet を開きます。Alice から聞いた URL、Bet の対象として「売れた」「売れなかった」の2つ、そして Carol が受け取る手数料が設定されます。ちなみに Monaparty の Bet には有効期限があります。DEX に出す注文と同様です。
ここで、この Bet は特殊で、二人以上が同じ Bet 対象に "賭け" ることができません。「売れた」に一人まで、「売れなかった」に一人まで。
Alice は、「売れなかった」に、購入代金を "賭け" ます。
しばらくして、Bob が、Amazon で購入代行を実施するために「売れた」に "賭け" ます。(ここで Bob が "賭け"るのは不自然に思えるかもしれませんが、嫌がらせ目的の参加を排除するデポジットだと思えば合理的でしょう。)
その後、Bob 購入を済ませ、Carol へその旨を通知します。
Alice も、Amazon からの発送が確認された時点で Carol に通知します。
売買成立したのを見て Carol は、「売れた」という結果をブロードキャストします。bet は成立し、「売れなかった」に "賭け" た Alice の XMP と Bob 自身のデポジット分から手数料が引かれたものが、Bob に戻ります。 Carol の手元には、徴収された手数料が届きます。めでたしめでたし。
異常系の流れ
さて Alice または Bob は裏切るという前提に立ってみましょう。
Bob が現れなかったら、または、現れた Bob が購入代行の事実を証明できなければ、単に放置すれば良いでしょう。この交渉は時間切れとなり、Alice が購入代金として "賭け" た XMP は、Alice の元に戻ります。
Bob があからさまに悪質だった場合、Carol は「売れなかった」をブロードキャストしても良いでしょう。 Bob がデポジットした分も含め、Alice の手元に戻ります。(Carol が徴収する手数料よりも Bob のデポジット額が高くなるようにしておけば、Alice に損は出ません)
Bob が購入代行を行ったのに Alice が裏切った明白な証拠がある場合、Carol は強制的に「売れた」という結果をブロードキャストします。Alice の XMP は、Bob に移ります。
Carol が Alice または Bob と結託した場合は不正が発生しますが、それは既存の Purse なり Avacas なりでも原理上は起こり得ることで、マッチメーカとしての Carol の信頼性を別途評価したうえで契約してくださいね、でも社会的には許容でしょう。
実用面
作れそう? or not ?
特殊な Binary bet を作ることになりますが、制約をいくつか増やすだけなので大した改修ではないでしょう。そもそも Counterparty の (つまり Monaparty の) Binary Bet には、Bet の細かい種類を指定する項目があるので "marketplace" とかいう種類を増やせば済みそうです。
Amazon だけ?
話を簡単にするために Amazon 購入代行を例に取りましたが、他のマーケットプレイスでも同じようなことができます。決済や発送周りで面倒なことが増えますが、それはエスクロー側の問題では有りません。
使う人、いるかねぇ…?
実用面を考えたとき最大の課題は、XMP の購入という面倒をしてまで、マーケットプレイスを使いたいと思う人がどれくらい居るか、でしょう。
ここは判断が難しい所ですが。
しかし世間ではゴミクズ扱いの XMP ですが、いま mpchain.info で調べたところ、1800 を超えるアドレスに存在していて、80万USD くらいの時価総額(評価額)であることも事実です。時価総額ほど眉唾の概念も他に無いとも思いますが、$MONA との dispenser を忘れて XMP の中で回すだけでもソコソコの経済圏に成り得る可能性はあります。あのモナッピーでもウォレットに入っていたのは 15万USD 弱でしたし。
ええ、判断が難しい所。
法的なところ
カストディアン規制
暗号資産のエスクローでは、カストディアン規制がかならず壁になります。
しかし、JBCA が昨年発表した『「暗号資産の管理」に係る意見書』を読む限り、顧客が秘密鍵を保持していなかったり、保管資産を顧客が想定していないところへ勝手に送れたりするもの以外は、カストディとは見做さないという "意見" のようです。
Monaparty は全てにおいて秘密鍵を保持しませんし、全ての送金は事前の契約に基づいて行われます。カストディとは認められないでしょう。
もちろん団体の "意見" なので、法的効力はありませんが。しかし、金融庁が全否定するような意見書を出すとは思えず、事実上、通達に近い効力と見て良いでしょう。いまのところ。
仮想通貨認定のリスク
ただし、XMP が兌換性とまでは行かなくても通貨性を持つことになるので、そこはちょっと厄介なことが起こるかもしれません。企業が顧客に配って流通しているポイントみたいなものだと主張することはできそうですが。
例によって中の人は慎重ですが、無職業者BOTは「やっちゃえ!」とか言ってます…。さてはて。