蕎麦屋の日本酒とレゲエなおじさん
昔、好きな作家がエッセイで「蕎麦屋で飲む日本酒はとてもおいしい、特に日本酒をだしで割るといい。」と書いていました。
それ以来蕎麦屋で日本酒を飲む、というのが私のひそかな憧れでした。しかし生活エリアの店で、蕎麦屋でひとり日本酒を飲んでるところをみられたらやばいよなあ、という気持ちがあり実現できずにいました。ちなみに一人で飲む、というのが風情があってよいのです。エッセイの挿絵には一人でお酒を飲む男性の絵がかいてありました。
数年前、東京へ出張したときに、予定されていた飲み会が中止となり1日だけ夜がフリーになったことがありました。蕎麦屋にいくなら今しかない!と「蕎麦屋で日本酒」を実行することに決めました。
渋谷にある、ごく普通のお蕎麦屋さんで、親子丼と舞茸の天ぷら、日本酒を頼みました。(本当はだしで割るためにお蕎麦と迷ったのですが、お蕎麦屋さんの親子丼の誘惑に負けてしまいました。。)
あたたかい親子丼と天ぷらをほおばりながら日本酒をゆっくり飲んでいると、仕事の緊張もとれて、ゆったり落ち着いた気持ちになりました。酔っ払いすぎないようにお水も飲みながらお酒を味わっていました。
お酒が残り1/3くらいになったところでおかみさんがやってきて、頼んでもいないのに日本酒をついでくれました。びっくりしておかみさんを見上げると、私の斜め向かいのテーブルを示し、「あちらのお客様からです」と笑って去っていきました。そのテーブルにはペイズリー柄のバンダナを巻いて、髪が肩くらいまであるおじさんと、スキンヘッドのおじさんが座っていました。
テレビや漫画で、女性が見知らぬ男性からカクテルをプレゼントされるシーンなどがありますが、まさか蕎麦屋で日本酒をプレゼントされるとは思いもよらず、反応に困ってしましました。とりあえず会釈をし、いただいた日本酒をひとくちいただきました。
すると、飲みっぷりがいいね、と言われ気づいたらテーブルを合わせて3人で飲むことになっていました。私は仕事終わりでスーツのままだったので、周囲からは謎の集団に見えたに違いありません。笑
なぜバーやカフェではなく蕎麦屋でしかも一人で日本酒を飲んでいるのか、相当気になったらしく何度も理由を聞かれました。酔っぱらっていたので、余計なことを言わないようになんとなくです、などと適当な返事をしていましたような気がします。
その後はするめやイカの天ぷらを食べながらおじさんたちの話を聞きました。ひとしきり盛り上がったあと、職場の2次会に参加しなくてはいけないと適当な理由をつけて帰路につきました。
それだけの話ですが、この話を友人にすると受けがいいのでここに書き留めておきます。渋谷の面白い思い出です。笑