自由を届ける

雑談シリーズです。Audrey Tang さんへのインタビューを書籍化した「自由への手紙」を読みました。なぜか最近良く本屋さんで見かける Audrey さんですね。Rebuild の ep271 はとてもよかったのでぜひ。

https://rebuild.fm/271/

この本では様々なことから「自由」になるための、Audrey さんの考え方を語られています。「自由」は私にとっては重要なキーワードなので読んでみたというわけです。結局これも夜読み始めて、良すぎて、そしてさくっと読めてしまう量なので一気に読んでしまいました。Audrey さんの考え方に触れるのは今回がほぼ初めてだったのですが、Audrey さんの考え方には、たぶん基本的には大筋だいたい合意できるタイプの方だなと思いました。ちなみに Netflix の No Rules を読んだときも、コンセプトはだいたい合意できると感じました。でも Netflix はそれを企業として実践し続けていることがすごいなと思いました。  

先程も述べたように、この本では、「格差から自由になる」、「デフォルトから自由になる」というように、さまざまなテーマで自由ことを目指しています。読めばわかるのですが、自由、の他に、Open、透明性、というキーワードがいくどとなくでてきますし、言外にそれを示唆する文がちりばめられています。自由を実現するには、Open さと透明性が必要であるということです。

台湾でマスクを全国民が購入することでがきるようにするために、決済手段を決める意思決定をしたときの考え方がのっています。導入が簡単なモバイル決済ではなくて、より多くの人が利用することができる国民健康保険証を利用することを選んだといいます。それはこのような理由からです。

> セーフティーネットとは、すべての人のためのものなのですから

これは Open です。Open でなければ、セーフティーネットには絶対になりえないのです。ちなみに台湾では、半年滞在すると国民健康保険証をもつことができるようです。すごいな...。でも Open という考え方を敷いていれば、当然のことなのです。

Audrey さんはこのようにいいます。

> 私は常に、「透明性」が重要になると考え、そう発言しています。

これは主に国家の透明性についてのべているようです。国民は国家のすべてを知ることができ、国家が国民のことを知るには国民の許可が必要。これは"民主主義"と呼ばれる仕組みを機能させるためには絶対に必要なことです。ので、いまは民主主義が世界のどこでも機能していません。これは民主主義がだめということではありません。よく民主主義はだめだ、的な意見も聞きますが、だめなのは民主主義ではなくて、もっと根本の部分がだめだからなのかもしれないですね。というかそこの改善を試した上でないと民主主義についてはなにも判断できないので議論することすら無駄です。

これら Open さと透明性の上に成り立つのが、Internet と Web です。つまりこれらは社会の基盤です。一番下のレイヤーに位置するメディアであるといってもいいかもしれませんね。まあそれがOpenで透明性でありつづけることを一応目指しているということが一つ救いかも知れないです。もちろん、Open で透明性には負の側面もあります。

> みんなが自由に意見を言い、誰もがそれを見聞きできることは、あらたなイノベーションの種にも慣れば、激しい論争の火種にもなります。

そうです。そしてこれを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?Internet や Web を誰かが"正しい"ものになるように、規制/管理/制限するのでしょうか?ちがいます。

> ソーシャルメディア上の偏向した投稿に触れる回数を制限すること。これしかないと思いますし、渡し自身もそうしています。

(ここでの「ソーシャルメディア」はたぶん一例でしょう)ようは正反対のアプローチです。自分で管理する。 Twitter の Jack さんも同じことを目指しています。bluesky はその一環です。なぜか。大事なのが、Open と透明性であるとわかっているからでしょう。これらは大前提で、崩すことはできないのです。なので、これを制限して解決するアプローチは選択肢ではなく、これらを前提にしてどうするか、という思考になるのです。

> 強制のない世界 - これが中心となる考えです。

大事なことはなにか、それは常に意識し続ける必要があります。

ではいつものように Bitcoin のはなしをしましょう。ここまで読んでいただけた方は、いま Bitcoin という言葉を聞いてとても納得してくださっていると思います。

Bitcoin とは、いまはなしてきたコンセプトを、史上初めてお金にもたらしたものです。Open で透明性が高く、Decentralizedで...まあここでは説明はしませんが、このあたりをみると良いと思います!

ちょっと話がずれますか、透明性と匿名性について触れておきます。これらは矛盾しません。Bitcoin は透明性が高く、でも匿名性が低いです。匿名性が低いことはお金としては致命的にだめで、Bitcoin の3大課題の一つです。ちなみに他の2つはスケーラビリティとUI/UX です。つまり Bitcoin は透明性が高く、なおかつ匿名性も高くなることを目指しています。シンプルにいうと、誰がいくらもっているかがわからないのが、匿名性です。仮にこれが実現したとしましょう。この状態で透明性が実現できるでしょうか?もしかしたら、この時点で透明性はないではないか、とおもうかもしれません。では分解しましょう。Bitcoin における透明性とはなんでしょうか。シンプルに言うと、誰かがかってにBitcoin を増やすことができないことが保障されていることです。デジタルマネーではこれを実現することが鍵です。だってデジタルなものはコピーできる=増やせることが価値で特徴だったはずですから。でもお金でそれは困るのです。銀行は権力でこれを実現します。ここに Open さや透明性はありません。Bitcoin は Open で透明性があります。ルールに従えば誰でも bitcoin を発行できます(Open)。どの bitcoin もいつどのように発行されたかが、人類誰でも確認することができます(透明性)。つまり、匿名性が高い=いくら残高があるか、は隠されていてもいいのです。それは本質ではないのです。不正=勝手に bitcoin を発行することができないことが、誰でも確認できる、これが Bitcoin における透明性です。(たとえば zk は透明性を担保しつつ匿名性を高める技術です。)

はなしを戻すと。。。Bitcoin は自由なお金なのです。本書でのべられているあらゆることのように、お金も自由になるべきなのでしょうか?当然そうでしょう。なぜならば、お金は、私たちが道具として使っている、2大メディアのうちの一つで、人類にとって現時点では欠かせないものだからです。人類は社会生活を営むので、メディアが必要です。情報のメディアが言葉で、物質のメディアがお金です。これが、一番下のレイヤーにある道具です。これが自由でない限り、本書でのべられているような、これらの上に成り立つさまざまなしくみが自由になることは絶対にできないのです。本書でも結婚や家族というしくみから自由になることについて述べられていますが、同性でも結婚できるという当然のことを法律にちゃんとするということが、言論統制国家で実現できるでしょうか。だから人類は言葉の自由(言論の自由)を獲得してきたのです。言葉はそれくら大事なものなのです。先程みたように、お金も現時点では大事なメディアなのです。当然言葉と同じように、自由であることが必要不可欠です。must です。マスクの例を振り返ります。台湾でみんながマスク買えたのは、たまたま(といっては失礼だが)台湾政府が、国民会保険証というみんなが使えるシステムを選んでくれたからです。かりにモバイル決済を選んでいたとしたら、不透明な企業の意思決定によりアカウントを剥奪されたユーザーはマスクを買えないということがありえるわけです。たまたまに頼っていていいのでしょうか?国家は常に"正しい"選択をしてくれるのでしょうか。歴史を振り返れば答えは明白です。現代の電子マネーはアプリケーション化して、サービスになってしまっています。このようなものに自由はありません。お金も、Internet や Web のようにプロトロルでなくてはならないのです。オンラインでの言葉はアプリケーション化してサービスになりました。それがいまどうなっているか。そしてどうなろうとしているか。Twitter は失敗しました。だから jack さんは bluesky を立ち上げたのです。お金も全く同じ道をたどっています。ということは同じ結果になります。bluesky はまだまだだけど、お金には Bitcoin がすでにあるのです。なぜ、Bitcoin に価値がない、電気代の無駄だ、Bitcoin より Blockchain が大事だ、そのほかいろいろな表面的で全く本質的でなく理解しようともしない批判ができるのでしょうか?言葉が犠牲になって、答えを教えてくれているというのに...。 Bitcoin のしくみや実装はもしかしたら問題があるかもしれません。でも、コンセプト、目指している方向は間違っていないでしょう。ここらへんにしておきますか。

もうひとつ感じたのは台湾すごいな、おもしろいなということです。Audrey さんの本を他にあと二冊さっきかってきました。ついでに最近買った本を紹介しておくと

東浩紀 - 弱いつながり
東浩紀 - 動物化するポストモダン
東浩紀 - 哲学の誤配
岩村充 - 国家企業通貨 (以前の2冊もおすすめ!)
岩村充 - ポストコロナの資本主義(売れなかったらしい笑)
宇野常寛 - 遅いインターネット
森博嗣 - 喜嶋先生の静かな世界(森さんいいですよね!!!!浮遊研究室シリーズとか!)

私が読んでいる本が万が一知りたい場合はこちらでどうぞ!
https://tsundoku.site/stack/6JIlZdpwZPOCYvIIxrMS2MgbYb42/
疲れたのでこのへんで!フィードバックおまちしています!

Bitcoin に使いみちがないって?
私はこの記事を投稿するために、bitcoin で数円分の支払いをしています。
いま手数料が高いと聞いたけど、数十円が払えるのか?と気になる方は Lightning Network で調べましょう!
Lightning がどれくらいスケールするかは、とてもおもしろい議論だと最近思うので、そのうちそれについても書きたいですね。ベースレイヤーの手数料があがりすぎると、Lightning もわりと大変になっていく可能性もあるのではないか、ということです。

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Bitcoin. 頭に浮かんだことを大体そのまま書くので雑です。なるべく読みやすいようにはがんばります。フィードバックお待ちしています。

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