「ソロスの講義録」レビュー① /再帰性という概念
ジョージ・ソロスの『ソロスの講義録』(講談社、2010年)を読みました。
とても考えさせられる内容で、おもしろかったので、ちょっとまとめておこうと思います。
ソロスと言えば、ウォーレン・バフェット、ジム・ロジャーズとともに「世界三大投資家」と並び称される人物です。
投資によって巨万の富を築いた人で、その財力は一国をも傾けるほどの力を持つそうです。
しかし、この本を読んで、投資家とは違う印象を抱きました。
ソロスは、哲学者ないし、社会学者と言った方がいいのではないでしょうか。
というのも、この本では、「社会はいかにあるべきか」について、繰り返し語られているからです。
さて、ソロスの思想において、独創的かつ重要な概念が「再帰性」です。
この概念によって、「なぜ予測は外れるのか」が、みごとに説明付けられます。
まずはここからまとめたいと思います。
「再帰性」を簡単に説明すると、「社会の状況を分析したり、解明したり、説明したりすることによって、状況そのものが影響を受けてしまう現象」を言います。
言い換えるなら、「知織化によるフィードバック」とでもなるでしょうか。
たとえば、「なぜ少子化になるのか」を分析するとしましょう。
分析の結果、出産や育児がいかに困難かが分かったり、経済的損失が明らかになったりするとします。
これを公表するとどうなるか。
「出産・育児は大変だから、避けたほうが良い」という考えが広まり、さらに少子化が進む、ということが起こり得るのです。
逆のパターンもあり得ます。
地震の被害を予測するとしましょう。