米上場中国企業版マネーショート、映画「チャイナ・ブーム」はなぜ投資家が見るべき映画か

米上場中国企業版マネーショート、映画「チャイナ・ブーム」はなぜ投資家が見るべき映画か

これはなにか

中国の中小企業がアメリカに上場するブームの前後を書いたドキュメンタリー「チャイナ・バブル 一攫千金の夢」についての投資家目線での感想記事です。アメリカのリーマンショックを追った映画「マネーショート」と類似して投資の映画として示唆に富み非常におもしろかったので感想記事を書いておきます。

映画「チャイナ・ブーム 一攫千金の夢」とはなにか

2006年~12年ごろにアメリカで起こった中国企業のアメリカ市場での上場ラッシュを追ったドキュメンタリーです。Netflixで見れます。

登場人物が投資判断のために具体的に行ったことはなにか(東方紙業の場合)

  • 年商1億ドルで高品質紙を出荷する中国の東方紙業について興味を持ち投資判断のために中国のメイン工場を視察。
  • しかし工場は劣悪な環境で公表の年商1億ドルは妥当ではないと判断(工場周辺の道路が劣悪、工場の中も機械の半分が故障か停止中、工場前にはゴミが溢れが工場内も水浸しなど)
  • 同社の株を空売りする

登場人物が投資判断のために具体的に行ったことはなにか(中国緑色農業の場合)

  • 米市場に上場した中国企業には粉飾している企業が多いのではとの仮説から肥料会社の中国緑色農業について興味を持つ。
  • 仮説を検証するため事業の実態を調べるべく工場入り口に監視カメラをセットし同社の従業員や車の出入りを344日間撮影。
  • 決算報告の内容が正しければ多くの従業員や作業の車が出入りするはずだがその姿がまったくないことを知る。
  • 仮説をより強固なものとするためお茶のセールスマンを同社に送り込みアンケートを回収したところ疑惑が確信に変わる(従業員は40人、運転手は一人しか在籍しないことを知る)
  • 同社の株を空売りする

具体的にどのような点が示唆に富んでいるか

決算報告書の報告内容を鵜呑みにせず、足を運び実態をツブサに検証した点。当時は中国企業のアメリカ市場での上場バブルで市場は熱気につつまれていたのですがその熱気に飲み込まれず疑問を持ち足を運び冷静に検証をした点が投資家のあるべき姿として非常に示唆に富んでいると感じました。

「監査をするのは米の有名監査法人だが資料を揃えるのは依頼元の企業、監査をするのは本店でなくフランチャイズ企業、企業が隠すか監査法人を丸め込めば表に出ない」の監査法人に関する説明については映画「マネーショート」での格付け機関を彷彿とさせます。「有名監査法人が監査しているから」「有名格付け期間がAAAの評価をつけているから」など第三者の評価を安易に信頼をしてはいけないことがわかります。

このチャイナブームで一番の被害者はなにか、視聴者としての学びはなにか

一般投資家です。米市場で上場した中国企業の株は一般の投資信託にも含まれており、中国企業の株式を直接購入していない一般の人にも被害が及びました。また、映画の後半で対象の中国企業の株式を購入した一般投資家が損失を告白するシーンがあるのですがこれがとても生々しく胸を打ちます。「退職金がなくリタイア後の生活資金を稼ぐために中国企業の株を1株9ドルで購入したが1株12セントになってしまい15万ドルの損失を抱えた」「米国で上場した中国企業の株式に資産の半分を投じたが株価急落で上場は廃止され価値が0円になった」などのエピソードが登場します。「上場企業といえど安易に信頼しないこと」「失って困る大金を論理的な確信がない特定の金融商品に集中して投資しないこと」「投資信託といえど安全ではないこと」など様々な点で視聴者に学びを提供してくれます。

自分の今後の投資判断で参考にするとしたらそれはどのような点か

最近だとクリプトではDefiバブルがありました。2倍3倍になるトークンも珍しくなく手を出さない投資家が馬鹿を見ると感じる相場になっていますがやはり一度冷静になるべきでしょう。個人的には調査に時間をかけ論理的な確信を持てない限りは大きな投資はするべきではないと考えます。例えそれで大きな機会損失を出ようとも、です。

そのほか

本編では上記エピソード以外にも「中国企業の米市場での上場ラッシュで多額の利益を出したファンド」「上場ラッシュ時の異様なバブルの風景」など投資家として非常に学びの多いエピソードやシーンがあり、視聴をおすすめします。

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