泡盛であって泡盛じゃないけど今は泡盛!? ~花酒とは?~

泡盛であって泡盛じゃないけど今は泡盛!? ~花酒とは?~

皆さんは、「泡盛であって泡盛じゃないけど今は泡盛」と言うお酒をご存知ですか?(笑)

 

「何言ってるの?そもそも文章の意味がよくわからないんだけど!」と言うお叱りの声が聞こえてきそうですが、本当にこう言う不思議なお酒があるんです(笑)。その名は「花酒(はなざけ)」と言います。今回は、そんな謎に包まれた花酒についてあれこれ書いてみたいと思います。

 

そもそも花酒とは、泡盛の蒸留過程で最初に出てくるアルコール度数の高い初留部分を指す言葉です。花酒の由来に関しては諸説あります。その昔、泡盛の度数を計る時に高いところからコップにお酒を注いで、中に盛られた泡の量で度数を決めていたのですが、その時にアルコール度数の高い花酒は、細かい泡がいっぱい立ち、まるで花が咲いているように見えたからとする説。または、蒸留の最初、つまり物の先端を意味する「端先(ハナサキ)」から来ているとする説もあります。

 

いずれにせよ、原材料も造り方も泡盛と同じなので、そういう意味では花酒は泡盛と変わりないのですが、唯一違う点があります。それはアルコール度数です。花酒は前述したように、初留のアルコール度数の高い部分を集めるので、アルコール度数はなんと60度以上と非常に高いのが特徴です。ライターの火を近づけると発火します(笑)。

 

蒸留の時、一番最初に出てくる初留には、非常に濃度の高いアルコールと、低沸点の香気成分が多く含まれていて、香りも高くて濃厚なコクを持つ、とても貴重なものとなります。その為、琉球王朝時代には王様への献上品として使われていました。つまり、花酒は位の高い人しか飲む事が出来ない高級な泡盛だったのです。

 

そんな花酒は、沖縄各地で造られていましたが、その後第二次世界大戦を経て沖縄が本土に復帰を果たした1972年に消滅の危機をむかえます。

 

日本の酒税法によって、泡盛は「焼酎乙類」と言うカテゴリーに分類されてしまい、泡盛と言う名称そのものを名乗れなくなってしまいます(以前私が書いたこちらの記事をご覧頂くとわかりやすいかと思います)。そして更に、この「焼酎乙類」の規定の中には、アルコール度数45度以下と言う決まりがありました。つまり、アルコール度数60度以上の花酒は、泡盛はおろか焼酎乙類のカテゴリーにすら分類されなくなってしまったのです。

 

これにより、これまで花酒を造っていた蔵元は酒税法に合わせてアルコール度数45度以下の泡盛(1983年までは「焼酎乙類」と言う名前)を造るようになったのですが、この時、特別にある地域だけには、このアルコール度数60度の花酒の製造が認められました。それは、与那国島でした。

 

与那国島は日本の最西端の島で、本土より近い台湾の酒文化の影響を受けており、昔からアルコール度数60度のお酒を造っていました。ではなぜ、与那国島だけに花酒の製造が認められたのか、それはこの花酒が与那国島の人々の日々の生活の中で重要な役割を担っていたからでした。

 

みなさんは「風葬」と言うものをご存知ですか?これは、亡くなった方を火葬でも土葬でもなく、棺に入れてそのままお墓で安置する方法で、長い年月をかけて肉体が風化して遺骨になる為、こう呼ばれています。与那国島では、この風葬の風習が強く残っていました。

 

そして風葬の際に、お墓にはこの花酒の一升瓶を2本一緒に入れるのです。そして、7年後に再びお墓を開けて、その遺骨を一緒に入れていた花酒を1本使って洗い清め、最後にもう一度花酒をかけて遺骨を燃やして遺灰にして、再びお墓に戻します。これを「洗骨」と呼びます(昨年、奥田瑛二さん主演で映画化された「洗骨」と言う作品に、詳しくこの辺りの描写があります)。

 

そして、その洗骨の後、残ったもう一本の花酒は、故人を偲びながら集まったみんなで飲むのです。ちょうど7年熟成した花酒は、程よく角が取れたまろやかな味わいになっているそうです。また、お酒が飲めない方は、花酒を故人が大切に育てた薬として考え、身体の悪い部分を治してもらうようにその部分に花酒を擦り込むのだそうです。

 

このような理由から花酒は、今でも与那国島でのみ造られ続けているのですが、アルコール度数45度を超える為、酒税法上は泡盛ではなくて原料用アルコールに分類されます。つまり、泡盛であって泡盛じゃないお酒と言う事です。

 

と、ここまでが今までの決まり事でした。しかし、今年の3月31日に酒税法関連規則の改正によって、なんと花酒も例外表示として泡盛の名称を名乗ることが出来るようになったのです!つまり、同規則が施行された4月1日以降に製造された花酒は、泡盛であって泡盛じゃなかったけど、泡盛を名乗れるお酒になった訳です(非常にややこしい(笑))。

 

そして、酒税法の範囲では、アルコール度数90度未満のものまで販売が可能なので、ルール上はアルコール度数が90度近い泡盛も造れる訳です!実際に「請福酒造」は、アルコール度数77度の泡盛を販売しました。ちょうどコロナ渦でアルコール消毒液が不足した時期だった為、あくまでも飲用として製造していますが、万が一の時には消毒用アルコールにも代用出来るようになっています。

 

いかがでしたか?今回は内容が盛り沢山だったので、話を上手くまとめるのに苦労しました(わかりにくい文章だったらごめんなさい!)。花酒は、与那国島にある3つの酒造場で造られていて、ネットショップなどでも購入が可能です。興味がある方は、ぜひ一度王様になった気分で試してみてはいかがですか(笑)?

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