2022年春の円安が、ある破滅の予言を思い出させた
(インフレ雑考①)

2022年春の円安が、ある破滅の予言を思い出させた (インフレ雑考①)

急激な円安が進行中です。

先週末、2022年4月28日の東京外国為替市場で、円相場が一時1ドル=130円台を付けました。

これは2002年4月以来、20年ぶりの円安水準だということです。

 

ここまで急激な円安が進んだのはなぜか。

それは、同日発表された日銀の方針が、大きな理由だと指摘されています。

「指しオペ」というのがどういうものか、私もよく分からないのですが、要するに金利を低く抑えるのが狙いのようです。

これによって、日米の金利差の拡大が意識され、円売りにつながった、ということです。

 

興味深いのは、円安が進む中で、ますます円安が加速するような方策を、敢えて日銀が選択したということです。

これほど「悪いインフレ」「悪い円安」が話題になりながら、日銀はそれを抑えるどころか、それに拍車をかけるような道を選んだのです。

・・・一体なぜ?

 

・・・まあ、その背景や狙いについては、専門的な記事がいろいろ書かれているので、ここでは触れません。

時間があれば調べてみてくださいな。

私が今回記事にしたいのは、円安のニュースを耳にして、「ある予言」を思い出したことです。

 

その予言とは、こういうものです。

”次に日本でインフレが起きた場合、政府はそれをコントロールできないだろう。”

今回はこれについての話です。

ちょっと堅い話なのですが、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

・・・この予言を、私が耳にしたのは、4年前の2018年。

予言なんて大げさな言い方をしていますが、テレビで、ある番組を見ていた時のことでした。

その番組に出演していたのは、あの(!)野口悠紀雄先生です。

戦後日本の経済史をたどりながら、野口先生は、その予言を口にされたのです。

(一字一句おなじではありません。だいたいそういう意味のことを言ったはずです。曖昧ですみません)

  

なぜ、日本政府はインフレをコントロールできないのでしょうか?

その根拠について、野口先生は、戦後日本のインフレ終息を例に挙げます。

ーー対米戦争の後、まだアメリカの占領下にあった日本は、激しいインフレに見舞われました。

インフレをなんとか抑制しようとする意見がある一方で、それへの反対論もありました。インフレ抑制策は、景気を冷え込ませるからです。

しかし結局、日本はインフレ抑制策に舵を切りました。

そのきっかけとなったのが、アメリカの後押しでした。

いわゆる「ドッジ・ライン」です。

ドッジ・ラインの詳細については、ウィキペディアをご覧いただくとして、ここで重要なのは、こういうことです。

すなわち、「日本政府は、アメリカの威光がなければ、インフレ抑制策を実行できなかった」・・・と。

 

 

一般的に、インフレ抑制策は、世間からは嫌われます。物価は安定するかもしれませんが、企業の倒産や株価の下落という副作用を伴うからです。

つまり、世論を意識していては、 インフレ抑制策は実行できません。

しかし戦後の日本は、「アメリカの威光」を錦の御旗にすることで、世論を押し切って、インフレ抑制に取り組むことができました。

逆に言えば、戦後のドッジ・ラインのような外圧なしで、日本政府がインフレ抑制策を実行できる可能性は、極めて低い、ということです。

恐るべき指摘です。

 

2018年の当時も、私は資産運用やインフレについて興味を持っていたので、野口先生のこの分析は、非常に強い印象を残しました。

そして今、日銀の決定によって円安が加速したことで、ふと思い出したのでした。

 

 

ーー果たして日本政府は、インフレに対して、有効な手を打てるのでしょうか?

それとも、物価高を座視し、ハイパーインフレという破滅に向かっていくのでしょうか?

あるいは、それでもデフレを脱却できない、という可能性もあります。

一体どうなっていくのか?

注視していきたいと思います。

 

 

さて今回、野口先生の見解をあらためて確認したいと思って検索したら、ご自身の説を note で公開中でした。

長い記事ですが、とても読みやすいですし、内容は有料級です。

 

脱線しますが、野口先生は仮想通貨にも早くから関心を持たれていて、何冊か本を書いています。

以前、私はその一冊を紹介したことがありました。

クリプト本レビュー① 野口悠紀雄『仮想通貨革命』

 

野口先生の見解には賛否があって、私も100%信用していいと言い切るつもりはありません。

ただ、内容は非常に明晰で、いい刺激を受けられます。

考える材料や新しい視点が欲しい方には、おススメです。

 

今回はこのぐらいで。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

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