各仮想通貨のファンダは価格にどのように反応したのか(Defi等15銘柄の分析)
1.本記事の概要
2020年の6月下旬以降、特にDeFi銘柄を中心として仮想通貨が高騰傾向にあります。
これらの価格高騰は、各通貨の運営陣が公式に発表する重要なニュース(例:新プロダクトのローンチ、Binanceへの上場、企業とのパートナーシップ)に特に強く反応しているように見えます。
運営陣の発表は、Twitterなどで誰でも簡単に見ることができ、また、公式発表後の価格の動きを検証することが可能です。このため、重要なイベントを定義した上で、それらのイベントに各仮想通貨の価格がどのように反応しているかを調べれば、今後、他通貨で同様のイベントがあった時の対応の参考となるかもしれません。
そこで、上位100の仮想通貨のうち、直近2か月で大きなイベントがあった15銘柄について、そのイベント後の1週間の価格変動を調査し、その傾向を分析します。
先に、本記事の結果のまとめです。
・今回対象となった銘柄は、イベント発表後に平均して1週間で約30%以上価格が上昇している
・イベント発表後、価格上昇には時間差があり、特に4日後に価格が大きく反応している。
・プロダクトのローンチ、取引所の上場、パートナーシップの発表は、Twitterの公式アカウントなどで簡単に捕捉できるため、(現在のバブル傾向が続いている限りは、)今回の結果は他の銘柄にも応用できる可能性がある。
以下は上記の結論をどのように導出したのか、分析に関する詳細です。
2.イベントの定義
以下の3つのイベントを、価格上昇に関連の深い重要イベントと定義する。
(1)プロダクトのローンチ等
ここでは、新プロダクトの発表、ロードマップの更新、新たなRewardプログラムのアナウンスを対象とする。
(2)有力取引所への上場
ここでは、特に価格上昇への影響が強いと考えられるBinance及びCoinbaseへの上場の発表を対象とする。
(3)企業提携
ここでは、企業との契約・パートナーシップに関する運営側(又は相手企業)の発表を対象とする。
3.対象銘柄
上位100の仮想通貨から、6月下旬以降に上記のイベントがあった銘柄を抽出する。抽出した仮想通貨は次の15銘柄
Chainlink、Stellar、Tron、Neo、Aave、Maker、Synthetic、Compound、Waves、Band、Augur、Ocean、Kava、Balancer、Bancor
4.分析方法
(1)仮想通貨に関する各種イベントを時系列で確認できるCoinMarketCalから、上記の対象銘柄で6月下旬以降のイベント発生の有無・日付を確認する。(なお、CoinMarketCalを使用するメリットは、主に彼らの情報ソースがTwitterであるため、公式アカウントをフォローしてさえいれば、そのイベントを誰でも確認・事後検証が可能と考えられる点である。)
(2)該当があった通貨について、イベント発生日から1週間の仮想通貨価格を1日ごとに確認。価格の起算点は、Coinmarketcapにおける初値(UCTタイム)とし、その後、1週間の各日の初値を記録する。
(3)イベント発生当日を基準として、毎日、どのくらい当該銘柄が上昇したかを計算する。
5.分析結果
対象銘柄の騰落率をまとめた図は以下のとおり。騰落率は全てイベント当日からの価格変動割合を記載している。なお、8月16日までの価格を調査しているため、イベント発生日が直近の場合は、一部空欄となっている。
上記の結果から、以下が分かる。
- 通貨によって騰落率のブレが大きいものの、平均すると、1週間で30%以上の上昇となる。(例えばBand,BALなどは1週間で2倍になっている)
- 平均すれば、特にイベント発生から4日後の上昇幅が大きい。その後は(あくまで平均でみれば)価格が安定している。
- したがって、少なくともこの2か月間、重要イベントはTwitter等で誰でも容易に確認可能であるにも関わらず、イベント発生後、余裕をもって対象銘柄を購入したとしても、大きなリターンが期待できたことがわかる。
6.留意点
結果の見方については、以下の点に留意する必要がある。
- あくまで過去2か月のデータを元にしているため、同様の事象が未来に起きることを確約するものではない。
- サンプル数が18と少なく、また、分散が大きいので、銘柄によっては上昇率が低いものもある。(例えばAugurなど)
- CoinMarketCalのデータから作成しているため、そもそもCoinMarketCalに情報の漏れがあった場合に、情報を捕捉できていない可能性がある
- 価格の起算点は初値(UCTタイム)であるため、例えば1日の初めに公表した場合と1日の終わりに公表した場合では、いずれも同じ価格が採用されるので、「イベント発表から1週間後」は各通貨で厳密に時間の長さが異なる(ただし、この欠点は、全体の傾向を見る上では大きな影響はないと考えられる)
7.所感
誤解を恐れずに言えば、バブル期は「アホな方が儲けやすい」特徴があると思っています。(単純なファンダで価格が上がりやすいので、運営等の発表に純粋に反応した方が結果として利が乗る)
今回の分析は、新プロダクトのローンチ、有力取引所への上場、パートナーシップの発表、という「確実に公表され」、「誰でも簡単に確認可能な」情報のみで銘柄購入を判断したとしても、高い利益率が期待できることを示しました。
また、注目すべき点として、あるニュースのあとに価格が反応しますが、当日がピークではなく、その4日後にさらに大きな波が来るということです。一般的な感覚では、できるだけ早くファンダに気づいた人が儲かり、その後数日で売り抜けるので、遅れて気づいた人は得をしないように思えますが、実際は高騰の第二波が来るために、情報に1~2日遅れた人でも大きく儲けられる結果となっています。
これの応用としては、例えば上位100~200位程度の銘柄の公式Twitterアカウントをフォローし、「Launch(プロダクトの開始)」「Listing(取引所の上場)」「Partnership(提携)」といった用語を見つけて、多くの「いいね」が付いている時には、その銘柄を買う、といった戦略があり得ます。
もちろん、今回の分析結果は6月~8月という仮想通貨の地合いが非常に強い時期のものですので、今後、同様のことが起こるか分かりません。また、分析対象銘柄は、必然的にこの時期に動きの大きかったDeFi・Oracle銘柄が中心となっているため、全ての銘柄に同じことが当てはまる保証はありません。
他方で、上記の方法は、誰でも簡単に試すことができるというメリットがあります。
以上、本記事が少しでも参考になれば幸いです。