三権分立の脆弱性を修正する (Part V, 1/2):政府、世界、国民とチャネルの向き
1. 3レイヤーサイクル構造
権力分立としての3レイヤーサークル構造は、制御チャネルの向きを示す矢印がサイクル全体として一方向であることによって成り立つ。自然災害時の3レイヤーサイクルの例で示したように、矢印の方向が一カ所でも変わると権力の不均衡が起こり、一方的な弱者が発生するので、権力分立の構造としては不適格になる。一方、もしすべての矢印が逆方向になる(サイクルが逆回転となる)ならば、3レイヤーサイクルの全体的な構造は維持されるので、(国民が政府に制御される、などの意味の是非は別として)権力分立は成立すると考えても良いだろう。
これだけだと観念的すぎてイメージが湧きにくいので、以下、正方向と逆方向それぞれの状態の具体例を、図と箇条書きによって示す。
2.サイクルの方向 Normal (正方向の場合)
正方向のサイクル
- 統計的意思決定
- 選挙、世論調査、需要・市況による圧力
- 資源制約
- (環境)気候変動、資源枯渇、公害排出、自然災害による苦痛
- (国際)情勢変化、経済状況の悪化による生活レベル低下
- 境界条件向上
- (国際)外交、軍事介入、経済制裁、植民
- (環境)治水、開発
サイクルが正方向の場合については少しだけ前述したが、違う例でみてみよう。
まず、「国民」から「政府」への働きかけは選挙や世論調査などを通じて示される。それをここでは「統計的意思決定」と呼ぶ。
次に、「政府」から「世界」への介入は、国際社会にかんしては外交や軍事介入を通じて、環境にかんしては治水工事や資源開発を通じて行われる。それら行為の目的は「境界条件(=問題を解く時の前提の)向上」にあると言えるだろう。
「世界」から「国民」への圧力は、国際社会から来るものとしては情勢変化による生活レベルの低下、環境から来るものとしては気候変動による生存への脅威・苦痛などがある。それは大雑把にいえば、世界が国民につきつける「資源制約」である。
Credits:
原案:西川アサキ
草稿執筆:古谷利裕
同時編集:VECTION
作図:掬矢吉水