仮想通貨は資本主義を変革するか (クリプト本レビュー⑤)
仮想通貨に関する入門書を、これまでいくつか紹介してきました。
入門書と言っても、切り口はさまざまです。
ブロックチェーン技術について詳しく述べているものもあれば、サトシ・ナカモトに始まるその成立と発展の歴史について書いているもの、あるいはその活用に向けた可能性や社会的影響について考察しているものもあります。
さて、今回紹介する本も、そんな入門書なのですが、切り口はズバリ「資本主義」です。
資本主義という観点から、仮想通貨をどう見るかという本です。
タイトルは、「現代経済学の直観的方法」。
なんだか難しそう・・・というイメージを受けますが、これがものすごく分かりやすくて、面白かったのです。
私は紙媒体で読みましたが、分厚さを忘れさせる面白さ。
久しぶりに知的興奮を味わいました!
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タイトルや表紙には、仮想通貨を想起させるような言葉も絵もないので、一見、ただのお堅い経済系の書籍に見えます。
実際、最初にマクロ経済を概観し、第3章でインフレのメカニズム、第4章が貿易・・・というように、経済学のトピックスについて順序だてて解説していく内容となっています。
章題を見ただけで、読む気が失せるという方もいるかもしれません。
しかし、そこで敬遠してはもったいない。
ぜんぜん難解ではないのです。
筆者は文章がうまい。しかも、たとえ話が非常に巧みで、難しい概念をいとも平易に解き明かしてくれます。
「そうだったのか!」と納得しながら読み進めていくのは、実に快感です。
ぜひ手に取ってみてください。
仮想通貨への言及があるのは、「第8章 仮想通貨とブロックチェーン」です。
ブロックチェーンの仕組みを知るうえで、こんなたとえ話をします。要約します。
・・・・毎月、台帳を作成し、この改竄を防ぐため、タグをつけることにする。このタグには、台帳に出てくる数字をすべて合算し、それをさらに別の計算方法で算出した数値を書いておく。台帳の数字を改竄しようとする者がいたとしても、タグの数値と照らし合わせれば、改竄されたかどうか簡単に確認することができる。・・・
おわかりですね。これは、ハッシュ値に関する説明です。
・・・そしてさらに、4月の台帳のタグの数値(つまりハッシュ値)を、5月の台帳のタグを作成する際に合算する数字に含ませておく。こうすることで、改竄はさらに難しくなる。なぜなら、4月の台帳を改竄しようとすれば、4月のタグの数値だけではなくて、5月のタグの数値も改竄しなければならなくなるからだ。・・・
そう、これはブロックチェーンの説明です。
おそらく、仮想通貨について知りたくて、いろいろ調べてもなんだかよくわからない・・・という状態の人も、この本さえ読めば、一気に理解が進むのではないでしょうか。
さて、以上のような解説に続いて、筆者は、仮想通貨がこの世界でどのような位置づけを占めることになるのか、自身の考えを述べています。
それは決して楽観的なものではなく、かといって全否定するでもなく、非常に冷静です。
この仮想通貨の章に至るまでに、インフレ、基軸通貨、金本位制などについても頭に入っているのですが、それらを踏まえた筆者の意見は、非常に説得力があります。
筆者への敬意を込めて、その部分には触れません。
ぜひご一読ください。
最後に。
実は、この本の白眉は、最終章なのです。
「第9章 資本主義の将来はどこに向かうのか」。
筆者はここで「縮退」という概念を用いながら、資本主義社会の発展と衰退について独自の見解を述べていきます。
未来を見通すことは非常に困難ではありますが、「未来の可能性の一つ」を知るだけで、生き残る術を考えるヒントになるのではないかと思います。
この本は初心者にも読んでほしいし、既に詳しい人にも読んでみてほしい。
最後までお付き合いくださって、ありがとうございました!
◼️過去記事◼️
レビューシリーズ全部読んでます!私もこういうを記事書いてみたいです。この本は買って読みます!