バイオフィリア第0侯  Vol.5 
〜夏のミツバチ

バイオフィリア第0侯 Vol.5  〜夏のミツバチ

「夏のミツバチ」 

分蜂が盛んだった春を過ぎ梅雨の時期、ホタルの飛ぶころです。 まだ分蜂はありますが次第に収束してい きます。 山では白い栃の花が咲く頃です。 ミツバチの好きな花で「山の味」がする美味しい 蜂蜜が採れます。 

雨が続くと 蜜が採れないのでミツバチの機嫌もあまりよく ありません。梅雨が開けて7月 中旬から9月 中 旬は蜜を貯める最盛期です。 どんどん巣箱は重たくな っていきます。 蜜の重さと巣箱の温度で巣が柔らか くな り崩れてし まうこともあります。 大家の私は重箱式の巣箱を追加することで、空間を広くし て室温を 下げる手助けをします。 巣箱の一番下の台は夏の間、底を天敵が入れないサイズ の金網にしてあって、換 気ができるようになっています。 真夏は簾なども活用して直射日光を避ける工夫をしてあげます。 夏季に繰り広げられる、巣門あたりでのミツバチの様子を見てみましょう。 この頃、花粉をつけて帰って来る働き蜂が頻繁に往来します。 両足に花粉をつけて帰って来る姿はとても 可愛いものです。 ミツバチの足には「花粉かご」という部分があってミツバチ達はそこに上手に花粉を付 けて帰って来ます。 花粉のつけ方も様々で、上手くつけれてないミツバチなどは新米の遠出組みなのかな? とか思ってみます。 中にはどうすればそんなに沢山つけられるの?と言うくらい綺麗にまんまるに付けて 帰って来る上級者もいます。 寄ってきた花によって黄色やオレ ンジ、 白、など色とりどりの花粉を付けて 帰って来ます。 夏になると勢いの良い群は随分と賑やかになります。 何やら話し込んでいる蜂たちがいた り、 巣門をまるで空母のように遠出組が飛び立っていきます。 また、外勤から帰って来たミツバチが着地 に失敗してひっくり 返る姿も。みんなとてもとても愛嬌があります。 ハチミツを盗みに来るアリを一生懸 命追い払う門番の姿や、 巣箱の中の温度を下げようと、巣箱にお尻を向けて一列に並び、 羽を動かし風を送る姿などは健気で可愛らしい。 そうかと思うと何もしないで昼間っから巣箱に張り付いてぼーっとして るミツバチもいるようです。 遠出組みのミツバチ達は、採って来た花蜜を蜜胃と呼ばれる臓器にためて持 ち帰ります。 持ち帰るまで蜜を食べてし まわないよう蜜胃には弁がついているそうです。 巣に持ち帰ると 貯蓄担当に口移しで花蜜を渡します。 この時点で花蜜はまだ水っぽく糖度は10 〜20パーセン トくらい しかありません。内勤蜂は受け取った花蜜を口を使って膜状に引き延ばして水分を蒸発させます。 この時 唾液中に含まれる酵素が混入し、その作用で花蜜の中のショ糖がブドウ糖と果糖に分解されます。 この時 点で糖度は40パーセン トほどです。 内勤蜂はこれを更に小さくし て六角形の巣穴に入れ羽であおいで更 に水分を蒸発させ2〜3日 かけて糖度約80パーセン ト程の熟成された蜂蜜にしていきます。 (これを知 ると、感謝して頂こうと言う気持ちになります。 )完熟蜂蜜でいっぱ いになった巣穴は、ハチロウで密封 するように蓋をしていきます。 巣箱の覗き窓から見える巣の上部がこのハチロウで全面蓋がされているか が、 採蜜できるかどうかの一つの判断材料になります。 採蜜については「秋の章」にするとしましょう。 ----- お盆の少し前になると、この地域では田んぼのカメム シ防除のための農薬散布が行われます。 ミツバ チと暮らすには、役所への 届出が必要です。 それにより、 いつどこで農薬散布が行われるかの連絡が来ま す。 農薬の被害から逃れるには移動するのが良いかもしれませんが、 この頃の巣箱は暑さで崩れやすく 、 そし て一番蜜を貯めている時期でもあり大変重くて移動は困難です。 

農薬散布の当日、夜明け前ミツバチ達が外へ出るより先に巣門を閉めます。 真夏の一番暑い時に、ミツバ チ達を巣箱の中に閉じ込めなければなりません。農薬散布が終わるまでの数時間、ミツバチ達を思うと切 なくな ります。 実のところ、こんなことをしてミツバチ達を守れているのかどうかは謎なのです。 直接浴びることは少しは避けられるかもしれません。しかし、汚染された水を飲みに行くのは防ぎようも ありません。本来農薬によるミツバチの死因は汚染された水を飲むからと言われています。 (ミツバチだけでな く小さな生き物全てがこの危険にさらされています。 )ですから、ただ、あの暑い時期 に巣箱に閉じ込められて余計なストレスをミツバチ達に与えているだけなのかもしれない。 それでも、やはりそうするしかないと毎年思います。 

「夏の郡上」 

郡上に暮らす人々にとって夏は特別な季節です。 郡上には約400年前から続く盆踊りがあります、 代表されるのは郡上八幡の「郡上踊り」と、私の生ま れ育った白鳥町の「白鳥おどり」です。7月 中旬から9月 まで週末はどこかしらでやっています。 歌い手さんと お囃子の乗った屋台を囲んでお盆3〜 4日間は徹夜踊りがあり、 日が落ちる頃から夜明けま で踊り続けます。 雨が降ろうが雷がなろうが踊ります! 

郡上踊りはスローテンポな曲が多く、城下町らしい 品のある踊りが特徴的です。 白鳥おどりはより土着的 でアッ プテンポです。 それぞれの個性が楽しめるので、お盆の徹夜踊りは、郡上踊りと白鳥おどりをハシ ゴする人も多くいます。 踊りが始まった由来は諸説あるようですが、 結局のところ昔の合コンの様なもの だったのだろうと思います。 お盆が終わった16 日には白鳥神社で行われる拝殿踊りが楽しみです。 神社 の周りに灯りはなく提灯と切子灯籠の灯りがぼんやり照らされた拝殿の中で、踊り子の下駄のリズム にあ わせ、踊り手の中に混じった歌い手が交互に即興で歌い、 拝殿中央に吊るされた切子灯籠を囲んで輪を作 り踊ります。 踊れなくても構わない、 誰が参加してもいい、 誰も気にしない、 拝殿に上がったら踊るしか ない。 だって止まっていると蚊に刺されるのですから。 郡上で生まれ育った私たちは幼い頃からこのお囃子を聴いて育ちます。 だからでし ょうか、 何年か踊りに 行かない年が続いても、踊りの輪に入れば自然と体が動きます。 私の祖父は90 を過ぎてからも浴衣姿に 手ぬぐいを鉢巻にして踊りの輪の真ん中で踊っていました。それで自分も踊りに行き、祖父のその姿を見 つけて、おじい ちゃんは今年も元気だな確認するのでし た。 

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山奥の地元でニホンミツバチと暮らす人たちです。

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