自然農法の一番の難しさとは。

自然農法の一番の難しさとは。

田んぼの季節になりました。これまで約8年に渡りお米作りをやっていたのですが、一昨年引越しのため今までやっていた田んぼを離れて、新たな場所で再開することになりました。(といっても同じ町内です。)田んぼをするには、農機具があると便利です。小さな田んぼなら手作業も可能かもしれませんが、1反ほどのスケールになると現代の暮らしをしながらの両立は難しいものです。戦前、戦後間もない頃は親戚中で助け合いながら行なっていたと、よく父が話します。そういった助け合いは、お米作りだけでなく冠婚葬祭や建前もそのようでした。そういえば、わたしが小学生だった1970年後半に家の建前のとき、親戚中のおじさんとおばさんが集まってたのを覚えています。高度成長期を経て日本人の意識はお金を稼ぐことに集中しました。(そうさせられた。)そして何もかもがシステム化されるようになり、農業もそのように変わったと思います。というか生活スタイルの変化で一番変わったのが農業だったのかもしれません。一日8時間(またはそれ以上)会社に拘束されることで、「考える」時間と体力と気力を失ってしまったことにさえ気づかず、「当たり前」に慣れてしまったのかもしれません。・・ただ、先輩方はこういう流れの中で生きなくてはならなかったのかもしれません。

しかし、今を生きているのであれば、今の意識から1ミリ、ほんの1ミリ自分の意識をずらして同じものを見ると違って見えることもあります。今、慣行されてきたものは今を生きる私たちにとって、今を生きる私たちの意識として正しいのだろうか。

農機具のくだりから話が脱線しました。水田作りには田植え前から稲刈りを終えるまで、何種類かの農機具を使います。耕す機械、代掻きの機械、田植えの機械、稲刈りの機械、・・その機械たちはそれぞれが高額で、メンテナンスもかかり、置き場所も必要になります。いうならば、一年に数回しか使わない車を数台持っているようなものではないかと思います。何町歩も田んぼがあって代々使っている器具があれば別でしょうが、その器具に寿命が来た時点で農協に委託するという流れが多いのが現状ではないでしょうか。

私たちも同様で大きな作業のほとんどは、農協にお世話になります。お米つくりの最初から農協の農業支援部門の「農援隊」と二人三脚で行ってきました。通常は農援隊に農地を貸して丸投げするという形が主だと思いますが、私たちはどういった思いでお米作りをしたいかを共有し、それならこういう形はどうか?という農業のプロである農援隊の方の提案も取り入れながら進めてきました。新しい場所も農援隊の方が何カ所か探してくれた所をお借りしました。

さて、この場所を探すのもなかなか色々で、本当なら家から歩いていける場所が都合が良いのです。稲刈りまでの約4ヶ月は毎朝晩田んぼの水を見に行かねばならないからです。家の近くにも休耕中の田んぼはいくつかあり、初めはその辺りを探していましたが、一番厄介な抵抗勢力に阻止されることとなります。両親です。近所で自然農をやられている方がご近所周りであまりよく思われていない。というのが理由です。多分その理由は、雑草であったり、農法によっては匂いの問題もあるかもしれません。・・ただ、この件について、わたしは両親の気持ちを理解しようと思います。田舎で生きるというのはそういう一面が常にあり、そのように、つながりを大切に暮らして来たからこそ今があり、わたしもそのコミュニティーで受け入れられていると感じます。

しかし、この全体主義的で、グローバリズム的な傾向が、蜂や昆虫の減少、種の問題、システム化してしまった農業、環境問題、貧困・・・全てにつながっていることも強ち間違いではないように思えます。

日本の田舎の片隅で暮らす私たちが、多様性を受け入れる社会への一歩に貢献できるとすれば、それは、地元の方々に笑顔で挨拶をして、感謝をし、可愛がられ、応援してもらう。それが一番の近道だなあと今は思います。農薬を使わない田んぼがひとつあっても変わらないものも、2つになり、3つになり…気がついたら変わっていた。そうなったらいいなあと思います。

新しい田んぼは、山の上にあって、田んぼの近くには大きな朴の木があります。すこし先にミツバチの好きなトチノキがあります。トチノキは今花の咲く時期です。大きな白い花が綺麗です。

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MOTION GALLERYにてクラウドファンディングがスタートしました。

「いきものたちとつくる、田んぼ」

どうぞよろしくお願いいたします。

モーションギャラリー

https://motion-gallery.net/projects/shishi_jp

----- 開催期間 -----

〜7/8(THU)まで

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山奥の地元でニホンミツバチと暮らす人たちです。

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