ブラジルにおける「Pix」の成長と暗号資産決済の今後|決済需要による価値交換について

ブラジルにおける「Pix」の成長と暗号資産決済の今後|決済需要による価値交換について

Hi friends 👋,

・「Pix」によるブラジル決済市場の変化

・ウクライナにおいて暗号資産決済が採用されている理由

・金融包摂と暗号資産決済

・教育としてのビットコインとその普及活動

・決済需要の増加と価値交換手段としてのビットコイン

今回は上記のテーマを参考に、金融包摂の促進がどのようなを社会にもたらし、暗号資産決済の普及に繋がっていくのかについて考察していきます!

これまで決済サービスを利用できなかった人々が暗号資産を決済手段として利用し始め、その規模が今後数年で拡大するといった観点で考えるとよりわかりやすいかなと思います✌

https://slash.fi/

「Pix」によるブラジル決済市場の変化

現在の決済市場においてはブラジル中央銀行 (BCB)がブラジルの金融機関および決済サービスと連携して提供している「Pix」が運用開始からわずか 1 年あまりで成人のブラジル人の大多数 (70%) が使用するようになった成功事例があります。

「Pix」は、電話番号をはじめとしてITIN (個人納税者識別番号) または FTIN (連邦納税者識別番号) に相当するもの、電子メール、またはQRコードにPix キーを通知するだけで決済が可能であり、個人/個人起業家は非課税であることなど金融包摂の思想に基づいた決済サービスです。

ブラジル国内のクレジットカードおよびデビットカードの取引量を「Pix」は、上回っていることからこれまで「アンバンクト(unbanked)」とされてきた人々による「Pix」の利用が新たな経済発展に繋がるとも予測されます。

デジタル ウォレットでもPixを使用できることからブラジル国内では約 1 億 1000 万人がPixキーを登録。銀行にアクセスできる人の数は合計で約 8000 万人であることから3000万人がPixを通じて金融サービスを利用できるようになったとされています。

ブラジル中央銀行のロベルト・カンポス・ネト総裁は

・「ユーザーはさまざまな銀行から多くのアプリを持っているのではなく、モバイル上の 1 つの「インテグレーター」で金融生活のすべての側面を制御できる」
・「このシステムにより、クレジットカードを持つ必要がなくなります。クレジットカードは近いうちに存在しなくなると思います」

としており、さまざまな金融機関と金融データを共有することを承認するオープンファイナンスシステムの構築を示唆しています。

National Telecommunications Agency (ANATEL)のデータによると、2022年3月時点でブラジルには2億5,800万台を超えるスマートフォンが存在し、1 人あたり平均 1 台以上のスマートフォンが存在していることも「Pix」の急成長を支えています。

eコマース市場においては「新しい決済手段の登場により、銀行口座を持たない人々がデジタルの世界に引き込まれ始めました」とEBANXの製品担当副社長であるErika Daguani 氏は語っており、「Pix」を起点としたさまざまな関連ビジネスの創出が期待されます。

2022年3月には、

・Pix トランザクション総数:16億以上

Pixキー登録総数:4億3800万以上

を記録し、「Pix」によるブラジル国内における金融包摂の促進は、大きな成功を収めています。

こうして「Pix」の成長とその理由をみていくとすでにブラジルでは中央銀行が主体となって、金融包摂が3000万人の規模で進んでおり、暗号資産決済はより小規模ではあるものの新たな決済オプションの1つとして普及していくとも予想されます。

今後、数年でブラジルにおいてオープンファイナンスの取り組みが進んだ場合に、どのように暗号資産と統合されたエコシステムが構築されるのかなど注目ですね。

Brazil’s central bank chief predicts end of credit cards

https://www.reuters.com/world/americas/brazils-central-bank-chief-says-credit-card-will-cease-exist-soon-2022-08-12/

Pix revolution: how instant payment put Brazil at the forefront of global financial innovation

https://labsnews.com/en/articles/economy/get-to-know-pix-brazils-instant-payment-method/

ここからは暗号資産決済の活用事例を紹介し、どのような領域で採用が進んでいるのかについて解説していきます✌️

ウクライナにおいて暗号資産決済が採用されている理由

https://whitepay.com/en/

ウクライナのテクノロジー小売業者Techno ЇzhakStylusがビットコイン決済を開始したことを発表。

ビットコインで店舗/オンラインでの購入を可能にするWhitepayがシステムを提供しており、レシートのQR コードに為替レート、取引時間、手数料などが記載されます。

ウクライナではロシアとの戦争が長期化するに従って日常生活の決済で暗号資産を利用する需要が高まっており、その背景には2022年3月16日に法案「On Virtual Currency」が見直され、暗号資産での寄付が世界中から寄せられたことなども影響していると考えられます。

https://cointelegraph.com/news/ukraine-has-shown-the-value-cryptocurrency-offers-to-real-people

伝統的な金融システムが軍事攻撃によって脅威にされられている中で、ブロックチェーン技術は人々の生活を支える決済インフラとして活用されており、戦争といった危機的な状況においてグローバルで直接的な国際送金方法として暗号資産の採用が進んでいるという側面は今後の市場形成においても重要な論点と考えられます。

従来の金融インフラでは決済が行えない状況において小売市場における暗号資産決済が普及することで人々の生活が少しでも快適になるのであれば、その有用性はより大きなものになっていくでしょう。

決済需要によって各暗号資産に価値保存ではなく価値交換の役割が付与されることでどのようにエコシステムが変容するのかについても気になるところですね。

TWO OF UKRAINE’S LARGEST TECH RETAILERS NOW ACCEPT BITCOIN

https://bitcoinmagazine.com/business/two-large-ukrainian-tech-retailers-now-accept-bitcoin

Ukraine has shown the value cryptocurrency offers to real people

https://cointelegraph.com/news/ukraine-has-shown-the-value-cryptocurrency-offers-to-real-people

金融包摂と暗号資産決済

中央銀行が主体となり、金融サービスが幅広い人に提供されることとなったブラジルにおける「Pix」の事例は、金融包摂の観点で非常に大きな意味を持つと考えられます。

下記のように既存金融のサポートのもと暗号資産決済インフラの提供を行う取り組みが確認されており、今後数年で「価値交換としての暗号資産」が日常生活に定着した場合を想定したビジネスモデルの構築が進んでいます。

・Visa × Ripio

ブラジルで28種類の暗号資産で決済可能なデビットカードの展開

https://www.coindesk.com/business/2022/08/23/latin-american-digital-payments-firm-ripio-launches-prepaid-crypto-card-in-brazil/

・Mastercard × Binance

国民IDカードを保有するアルゼンチン人が世界中の9,000万以上のMastercard 加盟店で暗号資産決済可能なプリペイドカードBinance Cardを発行。

https://cointelegraph.com/news/binance-and-mastercard-will-launch-prepaid-crypto-cards-in-argentina

こうした事例はまだ小規模ではありますが、すでに大手クレジットカード会社が暗号資産決済インフラの構築をサポートしていることは「価値交換としての暗号資産」といった観点でも注目すべきポイントかも知れません✌️

また、Bitcoin Lightning Networkの普及も進んでおり、今後も幅広い領域で各アプリケーションとの統合が期待されます。

https://twitter.com/coinbase/status/1557442742560497664

各コミュニティ起点でLightning Networkでの決済に関するTweetも頻繁に確認されており、金融包摂を担う次世代のインフラとして活用が行われ始めています。

・日本

https://twitter.com/ogw_yuya/status/1552502232096342016

・エルサルバドル

https://twitter.com/thecryptoc0up1e/status/1553101539534725120

・ジブラルタル

https://twitter.com/JoeNakamoto/status/1551567757849804800

通貨や物価など経済的に豊かな国家においては暗号資産決済は決済手段の1つのオプション的な役割を担うと想定されますが、戦時下や発展途上国など生活を営むのに暗号資産が決済手段として必須である場合においてその有用性が発揮されると考えられます。

アフリカではフィーチャーフォンの電気通信とLightning Networkを統合させたMachankuraといったソリューションも活用されており、銀行口座を持つことのできない人々に対する決済手段としての普及が「価値交換としての暗号資産」に繋がるのかも知れません。

https://bitcoinmagazine.com/culture/putting-bitcoin-on-african-feature-phones

教育としてのビットコインとその普及活動

最後にご紹介したいのが各国におけるビットコインに関する教育的な取り組みです✌️

・エルサルバドル/Mi Primer Bitcoin

エルサルバドルのNGO「Mi Primer Bitcoin」は、エルサルバドルの人々に無料でビットコイン教育を提供しています。

2021年9月24日から始まったプログラムは、ビットコインの価格上昇とともに参加人数が増加し、お金の歴史やお金が解決する問題といった金融リテラシーとビットコインに関する内容を教えています。

https://twitter.com/SvetskiWrites/status/1545132853461241860

このような草の根的な活動が、各コミュニティごとで展開されていることは将来的な市場の発展においても非常に重要な意味を持つことになるでしょう。

日常生活でLightning Network決済が行われている様子などを見ると「価値交換としてのビットコイン」が定着するのは時間の問題なのかなとも思いました✌️

https://twitter.com/MyfirstBitcoin_/status/1561701262881595392

・ブラジル/Praia Bitcoin Brasil

ブラジルにおいては人気の観光地であるジェリコアコアラにおいてビットコインで地域経済を構築する「Praia Bitcoin Brasil」の活動も行われています。

https://donate.praiabitcoin.org/

ジェリコアコアラにはATMが1台もなく、従来の金融システムから除外された村として知られており、「Praia Bitcoin Brasil」は、独自のノードでBTCPayServerを使用して、クラウドファンディングキャンペーンを行なっています。

また、創業者であるFernando Motoleseからの0.02 BTCの寄付を使用して、120人以上の人々 (地元の労働者、職人、漁師、ストリート アーティスト) がLightning および OnChain ウォレットを作成するのを支援しました。

最近では携帯電話を持っていない人にIan Coleman Bip 39 (バージョン 0.5.4)によって生成されたポルトガル語の強力なニーモニック フレーズをオフラインコンピューターで実行できる400 個以上のペーパーウォレット (各1,000satoshi) を公立学校の生徒に配布する取り組みを実施。

https://twitter.com/BitcoinBeachBR/status/1558424079425830919

ビットコインをテーマにしたお金にまつわる言論は、近年の国家による法定通貨の大量発行とそれに伴うインフレーションによってより強い説得力を持つようになりましたが、教育に採用されることで、お金に対する価値観の変化がより一層進むことでしょう。

まとめ

・「Pix」によるブラジル決済市場の変化

・ウクライナにおいて暗号資産決済が採用されている理由

・金融包摂と暗号資産決済

・教育としてのビットコインとその普及活動

・決済需要の増加と価値交換手段としてのビットコイン

について解説してみました!

「Pix」の急成長は金融包摂の大きなキーになると考えられますし、決済手段としての暗号資産に関しても大きな需要があると考えられます。

私たちも各国の企業やコミュニティと連携して、取り組みを進めており、より多くの人に利便性の高い暗号資産決済をお届けできればと思います💪

導入に関する質問などあればお気軽にお問い合わせください〜!

https://slash.fi/

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